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この一次産業、どう盛り上げる?現場でがんばる若手たち──オプショナルツアーに見る地域課題のいま【連載第2回】

2015年09月04日



この一次産業、どう盛り上げる?現場でがんばる若手たち──オプショナルツアーに見る地域課題のいま【連載第2回】 | あしたのコミュニティーラボ
7月初旬に行われた「アクティブワーキング@日南」のオプショナルツアーでは、現地に暮らすさまざまなひとたちと出会った。とくに目立ったのは、新しく事業を営んだり、新しく物事を起こしたりと、果敢な挑戦意欲をもった若いイノベーターたちの存在。「地域に生きるからこそ、自らが地域を盛り上げる」――本連載では、そんな思いにあふれた若者たちから、地域で生きるリアルを学んでいく。

【連載第1回】﨑田恭平市長インタビューはこちら

連載2回目に取り上げるのは「アクティブワーキング@日南」のオプショナルツアーで訪ねた「南いちご農園」と「原木しいたけ茸蔵(たけぞう)」の若き生産者たち。丹精込めた産品の付加価値を高める六次産業化に挑みつつ、日南市の一次産業の未来を見据えた連携プロジェクトにも積極的に取り組んでいる。

「楽しく農業をする」ことで、後継者を育成する

大分県出身の南浩二さんは、宮崎大学農学部在学中に日南市北郷地区の環境に魅かれ、観光イチゴ農園を開いた。イチゴを選んだのは新規就農しやすいのと、地域に既存のイチゴ農家がなかったから。「めずらしいからテレビが来てくれると思った」と南さん。しかも、収穫量が安定しない就農初期でも収益をあげられるよう、観光農園とした。それに「イチゴは女性にウケるので。ちょっとうちの畑おいでよ、なんて誘ったりできる。嫁さんがそうなんですけど」と笑う。

南いちご農園代表 南浩二さん
南いちご農園代表 南浩二さん

収穫したイチゴとシャンパンでジャズライブを楽しむ「夜の観光農園」も開催。イチゴのビニールハウスのなかにステージを組み、異空間をつくりあげた。評判もいい。テレビの取材も入り、大きなPRとなった。

化学肥料を使わない土耕栽培に力を入れている。「高設栽培のほうがきれいな実が育つかも知れませんが、土耕栽培のほうが“コク”があるんです」。その実を使い、ミックスジャムやコンポートなど、イチゴ加工品の製造販売も行っている。

夜の観光農園の様子。地元のジャズバンドをゲストに呼び、涼しい夜に演奏会を行っている(提供:南いちご農園)
夜の観光農園の様子。地元のジャズバンドをゲストに呼び、涼しい夜に演奏会を行っている
(提供:南いちご農園)

南さんら若手農家たちはチームを組み(平均年齢33歳)、農業で新たな産業を興すべく「ボランティアではなくお金の回る」グリーンツーリズムの定着を目指している。手はじめに大学生対象の7泊8日ファームステイを実施した。農業体験、森林セラピー、郷土料理づくりなどに学生たちは精を出し、自らニワトリをさばく体験では「涙を流しながら、でもちゃんと食べていた」という。

日南市の農業従事者の平均年齢は67歳。「10年後を見越して後継者を育てたい」。そのためにも「楽しく農業をする」のが南さんの信条だ。そうでなければ就農者は生まれない。楽しい雰囲気に魅かれてか、南いちご農園では2人の若い研修生が働いている。「ファームステイやグリーンツーリズムを企業向けにアピールして収益を生むビジネスモデルをつくり、若い人たちが生き生きと農業のできる環境を整えたい」と南さんは意欲を燃やしている。

原木シイタケの美味しさをもっと知ってほしい

原木しいたけ茸蔵代表 黒木慎吾さん
原木しいたけ茸蔵代表 黒木慎吾さん

南さんらが結成した若手農家チームの1人、黒木慎吾さんは自他ともに認める「シイタケに恋した男」。高校を卒業して青果小売業に15年勤めていた黒木さんは、店頭で原木栽培と菌床栽培のシイタケの食べ比べ販売をした際、割高で形もいびつな原木シイタケのほうがあまりにもよく売れるので、自分も食べてみたところ、そのおいしさに驚いた。すっかり原木シイタケの虜になり、地元日南に帰って自ら生産者に。

原木栽培には手間と時間が掛かる。菌床栽培は90日程度で収穫が可能なのに対し、原木栽培は原木を仕込んでから1年〜1年半でやっと収穫できる。手間や収穫の効率を考えると菌床栽培。しかし、「味、風味、食感がまるで違う。魚で言う天然と養殖の違いみたいなもの」と黒木さんは言う。

原木から生えているシイタケ。手間と時間がかかるが、うまい(提供:原木しいたけ茸蔵)
原木から生えているシイタケ。手間と時間がかかるが、うまい(提供:原木しいたけ茸蔵)

特に、出汁をとる干しシイタケをつくるには原木栽培がふさわしい。しかし、販路がない。若い女性は干しシイタケを食べないのだ。黒木さんは夫婦で知恵を絞り、30〜40代の女性にもっと干しシイタケを食べてもらおうとピクルスをつくった。チーズと合わせてワインのつまみにしたり、漬け液とオリーブオイルを混ぜてドレッシングにするなど、活用の幅が広がりそうだ。東京に店をかまえるイタリアンのシェフにも好評で、メニューに採用された。「手間ひまかけてつくる原木シイタケの美味しさをもっと知ってもらいたい」と黒木さんは売り込みに余念がない。

若い人が楽しく生き生きと農業のできる環境を

南さんも黒木さんも、農協など既存の流通網に頼らず、自ら販売ルートを開拓している。「楽しくて熱い」一次産業の若い息吹が、日南市の強みだ。

「大分出身の僕が日南で就農したのは、さまざまな援助が整っていたから。ジャムをつくる工房も、イベントに出店する際のアイスクリームをつくる機械も、支援金を受けて手に入れることができました」と南さん。

連載第1回で登場した市長も、彼ら若手の動きに期待しているという。南さんが「夜の観光農園」を開催したときも、市長がふらっと現れて、ジャズを聞いていった。「なんだかほんとに距離が近いですよ」。

若手である彼らが、悩みを抱えながらも元気に農業をやっていけるのには、援助というハード面のみではなく、日南の人々の心というソフト面も整っているからなのかもしれない。

今回取り上げた若者2名は新規就農で自分なりの道を見つけた。ならば、組織のなかで若者はどう活躍できるか。第3回でとりあげるのは、若者層が少ないと言われる林業。20代の従業員が十数%という森林組合だ。しかし、製材工場長は30歳、品質管理責任者が23歳と、ここでも若者はいきいきと働いている。なぜ彼らはチャレンジを続けるのか。そこには、連載第1回で市長が登場したように、行政からのアプローチがあった。その裏側に迫る。

【連載第1回】日本一、企業と組みやすい自治体をつくりたい。﨑田恭平市長が語る日南市 ──オプショナルツアーに見る地域課題のいま
【連載第3回】林業の新しい動きと、それを先導する“動きのいい”行政──オプショナルツアーに見る地域課題のいま


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