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“若い”森林組合と“動きが良すぎる”行政が生み出す突破力──オプショナルツアーに見る地域課題のいま【連載第3回】

2015年09月10日



“若い”森林組合と“動きが良すぎる”行政が生み出す突破力──オプショナルツアーに見る地域課題のいま【連載第3回】 | あしたのコミュニティーラボ
7月初旬に行われた「アクティブワーキング@日南」のオプショナルツアーでは、現地に暮らすさまざまなひとたちと出会った。とくに目立ったのは、新しく事業を営んだり、新しく物事を起こしたりと、果敢な挑戦意欲をもった若いイノベーターたちの存在。「地域に生きるからこそ、自らのチャレンジで地域を盛り上げる」――そんな姿勢からは、地域で生きていくことのリアルが浮かんでくる。

【連載第1回】﨑田恭平市長インタビュー
【連載第2回】一次産業を盛り上げる若手農家たちの挑戦

最終回となる今回は、南那珂(みなみなか)森林組合日南事業所の事例を紹介する。建材の輸出や木質バイオマス事業など、林業としての新展開とともに、地元のひとたちの地産材への愛着も高まってきた。その背景には、地域資源の価値を再発掘して根づかせる行政の地道かつ果敢な姿勢がある。

住まいやまちなみを「飫肥杉(おびすぎ)だらけ」にするプロジェクト

林業に携わる若年層の割合は少ない。南那珂森林組合日南事業所でも20代の従業員は十数%だ。とはいえ、ここには際立った特徴がある。製材工場長は30歳、品質管理責任者が23歳と、きわめて若い。「やる気があればどんどん若い人たちを登用して、上の世代の人たちも彼らの新しい考え方を尊重して動く組織風土がある」(第1事業部・河野伸行さん)というのだ。河野さん自身、名古屋でハウスメーカーに勤務していたが、Uターンして林業に携わっている。

南那珂森林組合日南事業所 第1事業部・河野伸行さん
南那珂森林組合日南事業所 第1事業部・河野伸行さん

旧飫肥藩の時代から日南市は良質な造船材になる「飫肥杉」の産地として栄えた。だが、昭和後半から木造船の需要は急落し、木材単価の低迷など全国的な林業の衰退と相まって山林が放置され、今や伐採が必要な時期を迎えている。南那珂森林組合では大径材(たいけいざい:丸太で直径が30cm以上のもの)による土木製品や住建材などに活路を見出している一方で、日南市には若い世代の目を魅く林業のプロジェクトがある。その道筋の1つが日南市を挙げて飫肥杉を盛り上げようとするプロジェクト、「飫肥杉デザイン会」だ。

日南市と地元の木工・建具・製材・林業のみならず、木材関係者以外のメンバー、株式会社内田洋行、ナグモデザイン事務所が「一家に1台、杉の家具」をキャッチフレーズに、製品開発から新たな使い方の提案、ひいては住まいやまちなみを「飫肥杉だらけ」にするまちづくりに取り組んでいる。製品はネットショップや地元の“飫肥杉ダラケ”なギャラリー「オビダラリー」で販売。2010年度グッドデザイン・日本商工会議所会頭賞を受賞し、売上げはじわじわと伸びている。

まちぐるみで飫肥杉を盛り上げる旗振り役は市役所

オビダラリーでは飫肥杉の木工教室などワークショップも開催している。

「外へ向けてのPRも大切ですが、地元の人たちに飫肥杉を使ってもらうことからまずはじめたい」と河野さんが言うように、飫肥杉の雑貨をギフトに利用するなど、地元の若い人たちも地産材の良さに目を向けるようになってきた。

河野さんは「3つのうれしい動きが出ている」と話す。
1つに、地元の人たちが飫肥杉を誇りに思って使いはじめていること。
2つに、建築材料として台湾や中国への輸出が上向きはじめたこと。
3つに、木質バイオマスを熱電源として導入する施設が増えていること。

とりわけ第1の動きに関しては「日南市役所が先頭に立ってガンガンやってくれます。提案したことにもすぐ乗ってくれるし。行政が先導するのは強い。森林組合としては幸せ」という。飫肥杉デザイン会も市役所が旗振り役となったからこそ、林業に関係ない一般市民をも巻き込むことができた。

市役所では、若き新市長(→連載第1回市長インタビュー参照)の元でその動きは加速されてきた。

新婚夫婦に飫肥杉のフォトフレームをプレゼントするアイデアを市の職員が提案したところ、市長は即座に「いいね! すぐやろう」と返した。その事業は“しあわせSUGI!(杉)結婚祝福事業”と命名され、取り組みは今も続いている。

新婚夫婦にプレゼントされる、飫肥杉のフォトフレーム(提供:日南市)
新婚夫婦にプレゼントされる、飫肥杉のフォトフレーム(提供:日南市)

さらに、生まれた時から飫肥杉のおもちゃに触れてもらおうと、出生届の時点で“うごくぞう”をプレゼントする“ウッドスタート宣言”も行った。「木育」の試みだ。

新生児が生まれた家族にプレゼントされる「うごくぞう」
新生児が生まれた家族にプレゼントされる「うごくぞう」

「日本の前例は日南が創る」

「日本一、企業と組みやすい自治体」を標榜する日南市。その柔軟性とスピードは、まちぐるみで飫肥杉を盛り上げる活動にもいかんなく発揮されていた。

「すぐやろう」という市長の言葉に象徴されるように、そのスピード感には目を見張るものがある。たとえば日南市油津につくられたコ・ワーキングスペース「油津赤レンガ館」。行政のスピードが遅い理由の1つとして、よく縦割り行政があげられるが、日南市では商工政策課やマーケティング推進室が組織を横につないだ。いくつもの手続きの壁を乗り越え、構想から半年ほどで施行にまでこぎつけることができた。

アクティブワーキングの取材中、市民から「市が新しいことをはじめるというから、こちらもそれについていかないといけないんですよ」と笑う声が聞かれた。何かやりたくても、自治体の動きが悪いことで流れが停滞してしまうことが多いなか、日南は違っている。いいと思えば「すぐやろう」という市長の一言で、役所が、人々が動き出す。首長だけが張りきっているのではない。

「日本の前例は日南が創る」という市長から、そして日南市から、企業も目が離せない。

日本一、企業と組みやすい自治体をつくりたい。﨑田恭平市長が語る日南市 ──オプショナルツアーに見る地域課題のいま【連載第1回】
この一次産業、どう盛り上げる?現場でがんばる若手たち──オプショナルツアーに見る地域課題のいま【連載第2回】


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