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テクノロジーで“人と人の枠”を超える新たなスポーツ ──ワークショップコレクション11 レポート(後編)

2015年10月19日



テクノロジーで“人と人の枠”を超える新たなスポーツ ──ワークショップコレクション11 レポート(後編) | あしたのコミュニティーラボ
「まるで魔法だ!超人スポーツ みんな仲間だ!ゆるスポーツ」。「ワークショップコレクション」メイン会場の渋谷TODビル6階に行くと、そんなポスターが出迎えた。ここは未来の遊び&スポーツの数々を体験できる「みらいのこうえん」ブース。このブースに参加した超人スポーツ協会が実現したい未来とはどんなものなのか。事務局メンバー2人に話を聞いた。

誰もが参加できる “遊び場”づくりのヒント「デジタルFab」 ──ワークショップコレクション11 レポート(前編)

人の能力を超える、人と人とのバリアを超える

超人スポーツ協会は、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KDM)教授の中村伊知哉氏と稲見昌彦氏、そして東京大学教授・暦本純一氏の3名を共同代表に、2015年に設立されたばかりの特定非営利活動法人だ。

超人スポーツ協会事務局の安藤良一さんは「超人スポーツ」について次のように解説する。
自身も豊富な競技経験を持つ超人スポーツ協会事務局 広報担当の安藤良一さん
自身も豊富な競技経験を持つ超人スポーツ協会事務局 広報担当の安藤良一さん

「超人スポーツの“超”には2つの意味があると考えています。1つは、“人の能力を超える”こと。たとえるならサーカスのような、たいていの人であればできないスポーツです。そしてもう1つが、“人と人とのバリアを超える”こと。年齢、性別、障害の有無などにかかわらず、誰でも参加できるスポーツです」

新しいスポーツのルールをデザインする。それをかなえるために、ウェアラブルデバイスやVR技術など、テクノロジーの利活用も不可欠。協会には「人間と機械が融合した“人機一体”の新たなスポーツを生み出す」ことを目的に、アスリートのほか、クリエイター、エンジニア、デザイナーなど、さまざまなレイヤーがこのプラットフォームに参画している。

バブルサッカーとテクノロジーの融合、そこから生まれる新たなスポーツ

今回「ワークショップコレクション」内の「みらいのこうえん」ブースで展開されていたのは、株式会社meleapによる「HADO」(バーチャルゲーム)、KDMを含む大学3機関による「Stouch Ball(スタッチボール)」、超人スポーツ協会×日本ブラインドサッカー協会による「超ブラインドサッカー」、そして、世界ゆるスポーツ協会×超人スポーツ協会による「ピカリバブル」だ。
ボールのクッション性で体格差が低減され、年齢の違う子どもでも一緒に遊ぶことができるピカリバブル
ボールのクッション性で体格差が低減され、年齢の違う子どもでも一緒に遊ぶことができるピカリバブル

「ピカリバブル」のベースになっているのは、国内のアミューズメント施設などでも遊べるようになった、欧州発祥の「バブルサッカー」。空気を充填したバブルボールを体に装着して行う、フットサルのようなゲームである。激しくぶつかり合っても透明のバブルがクッションとなるため、大きな怪我をするようなことはない。

バブルサッカーの日本国内での普及活動、ルール監修、大会実施などは「日本バブルサッカー協会」が取りまとめている。今回のピカリバブルは、超人スポーツ協会が、日本バブルサッカー協会に参画している「世界ゆるスポーツ協会」とともに、バブルサッカーをベースにした新たなスポーツを生み出そうと、ルールデザインから技術開発を行ってきた。

そんなバブルサッカーを発展させるかたちでこの日までに完成した「ピカリバブル」のルールは、おおよそ次の通りである。
オフィスビルの1フロアを大きく利用した会場では3方に分かれ、競技を楽しんでいた
オフィスビルの1フロアを大きく利用した会場では3方に分かれ、競技を楽しんでいた

①試合時間は3分。2~4名のプレイヤーが参加する。競技スペースの床には、赤・青・緑3種類の円(直径1mほど)が描かれている。
②プレイヤーはそれぞれ、直径1.5mほどのバブルを装着。背面ベルトに体を通し、ハンドルを握る。
③試合開始とともに音楽が流れ、曲中はプレイヤー同士、激しく衝突し合う。衝突するごとにバブルのなかのLEDが赤・青・緑に変化する。
④曲が止まれば、ぶつかり合いは終了。そのときに点灯しているLEDの色、もしくは、運営側が遠隔操作で点灯した指定色と同じ色の円に入り、スペースを確保する。
⑤制限時間まで陣地を確保したプレイヤーに得点が入る。数試合を繰り返し、得点が多いほうが勝者となる。

内蔵マイクで音を解析、衝突音のパターンでLEDが変化する

「こんなにも多くの子どもたちに興味を持ってもらえるとは考えていませんでした」と、子どもたちの反応に驚くのは、超人スポーツ協会事務局の小野田圭祐さんだ。プロジェクトでは技術開発を担当した。
ピカリバブルは下から頭を通すように装着する。ビニールボールを支えているのが 超人スポーツ協会事務局 小野田圭祐さん
ピカリバブルは下から頭を通すように装着する。ビニールボールを支えているのが
超人スポーツ協会事務局 小野田圭祐さん

「バブルにはマイクが内蔵され、拾った音を解析します。衝突音のパターンを認識したときにLEDの色が変化するようArduino(マイコンボード)で制御。XBeeという無線通信も使っていて、離れた位置にあるパソコンからもLEDの色を制御することができます」

子どもたちが継続して遊んでくれるようになるには、適切なルールをデザインすることも必要だった。120cm以上の身長制限を設けたとはいえ、体格差が開きがちな子どものスポーツならば、体の小さな子どもがどうしても不利になってしまう。なかには手加減無しに、本気でぶつかり合う子どももいることだろう。
ピカリバブルでは「バブルを押すタイミングや勢い」であっという間に形勢逆転が可能
ピカリバブルでは「バブルを押すタイミングや勢い」であっという間に形勢逆転が可能

そのため「体格差があっても楽しめるルールとは何かを意識し、世界ゆるスポーツ協会さんにもご意見をいただきながら、ルールをデザインしてきました」と小野田さん。その結果、「ぶつかることを手段とする」ことで体格差があっても誰もが楽しめる、陣取り合戦を核としたルールがデザインされた。このように、子どもの参加という新たなレイヤーが加わることで、超人スポーツはまた新たな発展を見ることになるだろう。

繊細な技術と面白いアイデアを掛け合わせたい

もともと小野田さんは、大学で機械工学を専攻していたが、「テクノロジーを使って人々の生活に直接的に関われるものづくりがしたい」と、スポーツとテクノロジーを掛け合わせる活動をしていた超人スポーツプロジェクトに興味を抱き、KDMに進学。プロジェクトの参加メンバーとなった。

既存のスポーツに、新たなルールが加わり、それをかなえるテクノロジーを開発する。エンジニアの関わり方が、また新しい領域にまで広がっていることがうかがえる。

「2020年の東京オリンピックに向け、日本らしい繊細な技術と、日本らしいおもしろいアイデアを掛け合わせることで、世界をあっと驚かせられるような超人スポーツをつくっていきたい」

超人スポーツ協会では今年4月、アイデアソンとハッカソンを3日間かけ開催。開発された成果・競技に対し、今後、開発支援やエキシビションなどを行い、競技として確立するようブラッシュアップしていくという。このほか、専門学校とのコンペティションも開催しており、ハッカソンやコンペティションの成果は、今年10月22日~25日に日本科学未来館で開催される「DCEXPO」で発表される予定だ。
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2日間のイベントで約150のワークショップでさまざまな体験をした子どもたちは、どんなことを感じ、どんな未来をイメージしたのだろうか。イベントを運営するCANVASのスタッフたち。そして、乙女電芸部や超人スポーツ協会など、出展に参加したプレイヤーたち。子どもたちが開拓する未来のクリエイティブ活動を、彼らはみんな、応援している。

誰もが参加できる “遊び場”づくりのヒント「デジタルFab」 ──ワークショップコレクション11 レポート(前編)


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