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“放課後活動”が日本のものづくりに新風を巻き起こす?──放課後ものづくりサークル「品モノラボ」(3)

2015年11月09日



“放課後活動”が日本のものづくりに新風を巻き起こす?──放課後ものづくりサークル「品モノラボ」(3) | あしたのコミュニティーラボ
ものづくり好きが集う「品川ものづくりラボ(以下、品モノラボ)」。隔月開催の“meetup”の様子と、コミュニティー発足の経緯に迫った前2回に続き、最終回では、「実験の場」として活用されるべく、品モノラボが掲げた新たなテーマと、日本のものづくりにおける放課後コミュニティーの価値について考える。

売り上げ個数100個達成! 放課後活動で“趣味とビジネスの間”を学ぶ ──放課後ものづくりサークル「品モノラボ」(1)

常連化6割のコミュニティーの秘訣は“ゆるさ”と“アツさ”!?  ──放課後ものづくりサークル「品モノラボ」(2)

趣味とビジネスの間を「100個生産」で試す

縛りがなく“ゆるい”コミュニティーとはいえ、毎年「なんとなくのテーマ」(田中さん)は設けている。

2014年は“広い世界を知る”をテーマに、有志を募り中国やアメリカを訪ねた。最初に手を挙げたのは3人だったが、いざ出発の段になると「出張ついでに寄ることにした」などと、結果的に参加者は10人ほどに膨らんだ。アメリカの展示会で出会った日本人たちと店を貸し切って飲み会を催したり、現地の日本人コミュニティーともつながることができた。

2015年の1つの大きなテーマは冒頭で紹介した“100品ラボ”。古賀さんによれば「深圳の先端工場や海外のメイカーズムーブメントに触れた昨年はインプットの時期でしたが、今年からはアウトプット。コピーバンドを卒業して、いよいよオリジナル曲でインディーズ・デビューを目指そう」というわけだ。

品モノラボスタッフによる手書きの「品モノマガジン」。今年のテーマ「100品ラボ」特集も発行されている(提供:品モノラボ)
品モノラボスタッフによる手書きの「品モノマガジン」。今年のテーマ「100品ラボ」特集も発行されている(提供:品モノラボ)

1個の試作品で満足するのではなく、100個つくって売ってみる。1,000個となると初期投資が高く在庫を抱えるリスクも大きいが、100個程度ならたとえ失敗しても金銭的ダメージは小さく、個人がぎりぎり超えられるハードルなのだそうだ。

「心霊写真」発案者の稲垣敦子さん(写真左)。Maker Faire Tokyo2015にも出店し、人気を博していた
「心霊写真」発案者の稲垣敦子さん(写真左)。Maker Faire Tokyo2015にも出店し、人気を博していた

バンドにたとえるなら、いきなり1,000人キャパのホールを満席にするのは難しいから、まずは観客の顔が見える100人規模のライブハウスを満員にしよう、ということになる。

田中さんも自作の「8pino」(マイコンボード「Arduino」の超小型互換機)をリリースし、これまでに1,000 個近い販売実績を積み重ねている。

「みんなが欲しがらなければ、1個だけ自分用に手づくりして終わっていたかもしれない」という、その身近な“みんな”の反応によって市場性の有無を判断できるところが品モノラボのようなコミュニティーの利点にほかならない。

古賀さんは「提案する時の心理的ハードルも低い。ダメだったら“あっゴメン!”と引っ込めればいいので、気軽に小さくチャレンジできます」と語る。

田中さんと友人によるユニットVITROが開発した「8pino」。Maker Faire Tokyo2014では発売開始から20分と経たずに完売してしまったとのこと
田中さんと友人によるユニットVITROが開発した「8pino」。Maker Faire Tokyo2014では発売開始から20分と経たずに完売してしまったとのこと

放課後活動で実績をつくり、自信と仲間を引き連れて本業へ戻る

品モノラボでの活動は本業にどう活きているのだろうか。

「有形無形にたくさんあることは間違いありません」と田中さんも古賀さんも口を揃える。

古賀さんは「企業の“メーカー”と個人の“メイカー”の境界線を曖昧にして、ここで学んだことをどちらにも持っていき、ものづくりの文化を盛り上げるのが品モノラボのコンセプト。仮に本業では競合している会社の社員同士だったとしても、ここでは一緒に共創できます。そこから得られる気づきや学びの大きさは計り知れません」と話す。

いちばん活きているのは「新規事業を立ち上げるためのしくみづくりや、仲間集め」と田中さんは言う。

いちばん活きているのは「新規事業を立ち上げるためのしくみづくりや、仲間集め」と田中さんは言う。

「品モノラボで出会った人たちとのものづくりネットワークは本業でも大いに役立ちます。実際に開発が進みだしたら、たとえば知り合いになった工場の方に相談したりとかもできますし」(田中さん)

小さく立ち上げて可能性を試すリーンスタートアップ的な手法を体験できることも大きい。「100品ラボ」のような試みは本業では難しいが、少量多品種の付加価値の高いものづくりが求められる昨今、企業も避けては通れない。

「品モノラボで試してみんなの支持を得られたら、本業でも“こんな仕事の進め方もある”と提案できます。いわば課外活動のコミュニティーで実績をつくり、自信と仲間を引き連れて本業に戻っていくわけです」と古賀さん。

作品の説明に参加者も興味深々といった様子だ(第14回品モノラボ)
作品の説明に参加者も興味深々といった様子だ(第14回品モノラボ)

2人が共通に抱いている“ものづくりの未来”の理想像は「メーカーとユーザーがきっぱり分断されず、ゆるやかに融合した世界」。みんながつくり手であり、同時に使い手であれば、互いの立場も気持もよくわかり、期待が行き違ったり、あてが外れたりすることも減るだろう。

多くのメーカーは判で押したように“顧客第一主義”を掲げるなか「ともするとお客様を神様にしすぎて結果的に高い神棚に上げてしまい、もっと近くで一緒に作りたいのに、かえってコミュニケーションの距離を遠ざけてしまった部分もあるかもしれない」(田中さん)というきらいがある。分断された2つの世界を地続きにするには「みんなが何かしらつくることに関わる文化を、小さくてもいいから少しずつ興していくこと」(古賀さん)で垣根が取り払われるに違いない。品モノラボはその第一歩を踏み出す“メイカー・コミュニティー”の1つだ。

参加メンバーの飯田尚宏(猫とロボット社)さんは、隔月の品モノラボだけでは飽き足らず、週1回品川駅構内のカフェに集う「山手線ガジェットメーカーズ」というコミュニティーを自ら立ち上げた。

猫とロボット社代表の飯田尚宏さん(写真中央)
猫とロボット社代表の飯田尚宏さん(写真中央 提供:山手線ガジェットメーカーズ)

「バンドメンバー募集! ってすごく素敵ですよね。でも2カ月に1回じゃ熱も冷めちゃうから、集まって話す機会をもっと増やしたいと思って。たまに盛り上がりすぎてお店の人に怒られることもあります(笑)」

飯田さんも「参加者にプレッシャーをかけない気楽なイベント」を目指しているという。品モノラボが実践している“ゆるくてアツいコミュニティー”のスタイルは波紋のように広がって、メイカーたちを巻き込みつつある。

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