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IT企業発! ECによる理想的な復興支援のかたち ──ヤフー株式会社復興支援室/日本財団「わがまち基金」(前編)

2015年11月10日



IT企業発! ECによる理想的な復興支援のかたち ──ヤフー株式会社復興支援室/日本財団「わがまち基金」(前編) | あしたのコミュニティーラボ
東日本大震災から4年半。震災直後、ボランティア活動や寄付による被災地支援に取り組んだ企業は多い。しかし継続的な復興支援となると、通常のビジネススキームに乗せることが難しい。地域が抱える社会課題の解決を企業が支援するにはどんな方法があるのか。「Web」と「融資」、それぞれを核に復興支援を続けている2つの事例を前後編で追い、ヒントを探る。

届け、地元事業者たちへ! 「財団×信金」連携による持続可能な復興支援 ──ヤフー株式会社復興支援室/日本財団「わがまち基金」(後編)

被災地発! 人気産品が集結したECサイト

復興デパートメント」はヤフー株式会社が運営するネットショップだ。東北の農産物や海産物、加工食品、工芸品、スイーツなどを販売する店舗が集結したポータルECサイトで、復興へと走りはじめた被災地を支援する目的で、東日本大震災が起こった2011年の12月にオープンした。

復興デパートメントのWebサイト復興デパートメントのWebサイト

現在約40店舗が出店し「おやじのおまかせセット」「大漁旗ブレスレット」(以上、石巻元気商店)、「真いかぶっかけ丼」(うめえべっちゃ三陸)など、ロングセラーとなっているヒット商品も多い。

その運営を担当するのが、ヤフー株式会社復興支援室室長の長谷川琢也さん。誕生日が3月11日で「震災のときは身体が勝手に動いた」。個人的に石巻や南相馬の地で、泥かきや炊き出しのボランティアに参加した。

ネットオークションの販促責任者を務めていたことから、企業人としても「ヤフーだからこそできることをしよう!」と、チャリティーオークションを企画して支援金を集めた。

「もっと本格的に会社を巻き込んだ支援ができないかと思っていた2011年の夏ごろ、そろそろ仕事を復活させる準備をしたい、と被災地の生産者の方たちが話していたんです。それをヒントに復興デパートメントのプロジェクトを立ち上げました」

ヤフー株式会社復興支援室 室長 長谷川琢也さんヤフー株式会社復興支援室 室長 長谷川琢也さん

復興に向けて奮闘している生産者のCMを無償で制作し、情報発信とともに商品を売った。プロデューサーやデザイナーがプロボノ(プロのスキルを活かしたボランティア)として協力してくれた。ボランティアで入っていた若者たちに、当時はほぼサイト運営を任せていた。

「課題解決エンジン」で東北の復興を

しかし震災後1年を経ると、世間の関心の風化もあって復興デパートメントの売上は伸び悩むようになった。折しもヤフーは経営陣が刷新され若返った。宮坂学新社長は長谷川さんの元直属上司。宮坂社長はベンチャースピリットを取り戻そうと第2の創業を標榜し、新たに「課題解決エンジン」を企業ビジョンに掲げた。

「震災復興という大きな課題に取り組む復興支援室が新設されました。“地域が必要とし、なおかつヤフーがビジネスとして取り組めることは何か、考えろ”、そう経営陣から言われ、2〜3週間かけて地元企業、支援団体、自治体、復興庁などへ片っ端からヒアリングして回りました」と長谷川さんは振り返る。

そして地域がもっとも求めていてヤフーの得意とすることは「情報発信と販路支援」との結論に達した。ならば復興デパートメントのテコ入れしかない。

ネットショップは世界中がライバルであり、継続的な運営は実店舗に勝るとも劣らず難しい。石巻に復興支援室のオフィスを設け5人のスタッフが赴任し、それまでアマチュアに任せていた運営を、プロの目線から徹底的に指導改善した。

復興デパートメントのしくみ。
委託された商材を復興デパートメント支部が売場で販売する[パターン1]と、
個々にストアとして出品可能な[パターン2]がある(提供:ヤフー株式会社)
復興デパートメントのしくみ。
委託された商材を復興デパートメント支部が売場で販売する[パターン1]と、
個々にストアとして出品可能な[パターン2]がある(提供:ヤフー株式会社)

そもそもの生産者開拓、商品開発から見直して、その商品は都会の生活者の目から本当においしそう、珍しそうに見えるのか、背景に魅かれるストーリーがあるのか、ネットならではの訴求の仕方、メールマガジンの充実……等々。

日本最大級のポータルサイトYahoo! JAPAN本体との連動と運営ノウハウ注入の結果、ヤフーの事業としてはまだ黒字化していないものの、復興デパートメントは年間数億円の経済効果を東北の被災地にもたらすようになった。

長谷川さん

「社長からは “1円でもいい、黒字にするまで帰ってくるな” と言われています」と長谷川さんは笑う。「ただし、それにこだわりすぎて復興という課題の本質を見失わないようにしつつ、東北の人たちとビジネスをつくっていきたい」。

ビジネスの“余白”を見つけて全リソースを注ぎ込む

復興デパートメントに携わって大きく変わったことが、長谷川さんにはある。

「以前は“ポイント○倍キャンペーン”や“○%オフ”などを企画する部署でしたが、今は真逆で、漁師さんたちと話すのは“1円たりとも安売りしない”。命がけで仕事をしても、1つ数十円の世界。値引きがいかに生産者の首を締めるかはじめて痛感しました。指先1つで何でも手に入るネットの世界にどっぷり浸かると、意のままにならない自然と向き合う仕事や、その人たちが収獲した命を頂戴して生きているというあたりまえのことに目がいかない、気づかないふりをしてしまう。いままでの自分みたいな人をこれ以上増やしちゃいけない、と思いました」

現在、長谷川さんは若い漁師たちとともに一般社団法人「フィッシャーマンジャパン」を立ち上げ、活動に従事している。過去10年で漁師が半減した漁業の危機に立ち向かうためだ。

漁師も水産加工業も魚屋もともに「フィッシャーマン」として、未来の水産業の形を日本、そして世界に向けて発信していく(写真提供:一般社団法人フィッシャーマンジャパン 撮影:Funny!!平井慶祐)
漁師も水産加工業も魚屋もともに「フィッシャーマン」として、未来の水産業の形を日本、そして世界に向けて発信していく(写真提供:一般社団法人フィッシャーマンジャパン 撮影:Funny!!平井慶祐)

海外市場も視野に入れた6次産業化に挑んで「カッコいい、稼げる、革新的」な“新3K”漁業のすばらしさを次世代に受け渡したい。どんな世界にも飛び込んで課題の本質を見極め、解決の手段を探って提案し実行する。「課題解決エンジン」をビジョンに掲げるヤフーの面目躍如たる取り組みといえるだろう。

「われわれのような“よそ者”で、かつ他業種ができることは、ここにビジネスの“余白”がありますよ、ともとからその事業に取り組む方々に見せていくことだと思うんです」(長谷川さん)

思いを自分の仕事に結びつけ、課題解決エンジンをふかし続ける長谷川さん。後編では、公益財団法人日本財団と地元信用金庫による、事業者支援のための「金融のしくみづくり」を探っていく。

(後編)届け、地元事業者たちへ! 「財団×信金」連携による持続可能な復興支援 ──ヤフー株式会社復興支援室/日本財団「わがまち基金」へ続く

関連リンク
ヤフー「課題解決エンジン」レポート
復興デパートメント
フィッシャーマンジャパン


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