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届け、地元事業者たちへ! 「財団×信金」連携による持続可能な復興支援 ──ヤフー株式会社復興支援室/日本財団「わがまち基金」(後編)

2015年11月11日



届け、地元事業者たちへ! 「財団×信金」連携による持続可能な復興支援 ──ヤフー株式会社復興支援室/日本財団「わがまち基金」(後編) | あしたのコミュニティーラボ
東日本大震災から2年経過した2013年。設備復旧のめどは立ったものの、新規商品開発や販路再開拓などに運転資金を必要としている地元の事業者たちは後を絶たなかった。彼らを継続して支援するために、どのようにお金を巡らせるべきなのか。公益財団法人日本財団と東北5信用金庫による金融支援プロジェクト「わがまち基金」を事例に考える。

IT企業発! ECによる理想的な復興支援のかたち ──ヤフー株式会社復興支援室/日本財団「わがまち基金」(前編)

公益財団と信用金庫が連携したファイナンス

東日本大震災から2年9カ月を経た2013年12月、公益財団法人日本財団と東北5信用金庫が金融支援プロジェクト「わがまち基金」をスタートさせた。

「わがまち基金」の立ち上げに携わった日本財団コミュニケーション部メディアコミュニケーションチームリーダー、和田真さんは「被災地域では助成金や補助金はあっても、その後のサポートがあまりない状況に不安を感じていました。支援する人も少しずつ減ってきて、残っている企業やがんばっている方々を持続的にサポートできるしくみをつくりたかった」と立ち上げの背景を語る。

中小零細企業の資金を支えるのは、地域密着型の金融機関である信用金庫。日本財団は、宮古信用金庫、石巻信用金庫、気仙沼信用金庫、ひまわり信用金庫、あぶくま信用金庫の被災地5信金と手を結んだ。

「わがまち基金」では、日本財団が各信用金庫と連携する各地の基金に対し5億円(総額25億円)を助成。それを原資に各信用金庫は無担保で地元の中小零細企業やソーシャルビジネスに融資し、無利子ないし低利子となる利子補給と経営支援を行う。

わがまち基金の支援スキーム。東北地域での5信金合計の融資件数は1,324件(2015年6月末現在)。融資金額は327億6188万2,962円、利子補給額は18億623万6,563円、預金担保額は6102万円となっている。実施期間は2016年10月までわがまち基金の支援スキーム。東北地域での5信金合計の融資件数は1,324件(2015年6月末現在)。融資金額は327億6188万2,962円、利子補給額は18億623万6,563円、預金担保額は6102万円となっている。実施期間は2016年10月まで

和田真さんは「予想を超える資金需要があり、お金の循環を促進できた」と、これまでの手応えを感じている。

「国の復興補助金の自己負担分を調達できずに申請を諦めていた人が利用して事業再開するケースも当初は多かったです。2軒あった宮古市の漁具卸業は津波の被災で1軒が廃業し、もう1軒も事業を断念しそうでしたが、わがまち基金の融資を受けて廃業を免れたとの話を聞きました」

助成金の期限後も活動が持続可能なしくみを

財団と金融機関が連携して地域活性化を図る試みは、全国的にも珍しい。その設立背景には「助成財団として抱えている課題もあった」と和田さんは打ち明ける。

日本財団 コミュニケーション部 メディアコミュニケーションチームリーダーの和田真さん日本財団 コミュニケーション部 メディアコミュニケーションチームリーダー 和田真さん

「助成金を出している団体は大小合わせて日本に3,000団体以上あるといわれています。しかし“支援対象の団体の活動が活発なのが、助成金を出している間だけに留まりがち”というのが共通の課題。支援を受けている事業者もいつまでも助成金に頼ってはいられませんから、助成金がなくなった後も、その方々が継続して活動できるしくみをつくりたかったんです」

手はじめに東京の西武信用金庫と連携し、ソーシャルビジネスに融資するプロジェクトとして「わがまち基金」を立ち上げた。東北では被災地支援の一環で岩手、宮城、福島の3県合計5つの信用金庫と組み、本格的に始動した。

他の地域から被災地に入り、ソーシャルビジネスやコミュニティビジネスに取り組む場合、被災者ではないから復興補助金などの優遇制度はなかなか受けられない。そうした人たちにもこの金融支援スキームは役立っている。

地域の課題を地域で解決するための資金循環

では、日本財団との連携を図る信用金庫の側では「わがまち基金」はどのように捉えられているのか。パートナーである被災地5信金のうちの1つ、石巻信用金庫に伺った。

石巻信用金庫の八木 喜明さんは「わがまち基金」について次のように振り返る。

「なぜ信金が入るのか、最初は戸惑いもありました。しかし日本財団は、地域の課題を地域で解決するための資金循環を促す、持続可能な復興支援策の1つとして融資を捉えていた。ならば地域金融機関であるわれわれの出番。基金を活用できればお客さまの立ち直りも地域の復興も早まると考えました」

石巻信用金庫 営業推進部課長 八木喜明さん石巻信用金庫 営業推進部課長 八木喜明さん

石巻信用金庫の場合、一般社団法人「ふるさと復興基金」を立ち上げ、そこへ日本財団の「わがまち基金」から助成を受けるスキームが構築されている。

「ふるさと復興基金」を活用した被災地支援制度のスキーム。支援融資先の業種で多いのは建設業40%、小売・卸売業が22%。生活に密着したライフラインの復旧に生かされた(提供:石巻信用金庫)「ふるさと復興基金」を活用した被災地支援制度のスキーム。支援融資先の業種で多いのは建設業40%、小売・卸売業が22%。生活に密着したライフラインの復旧に生かされた(提供:石巻信用金庫)

基金は、実質無利子の利子補給(いったん支払った利子を翌月に戻し、元金のみ事業者が負担)をつけた無担保融資と、新規事業への助成金(最高限度額180万円)で支援する。金融商品「しんきん被災地事業者支援融資」の限度額は2000万円、「しんきん創業・新規事業支援融資」の限度額は500万円。

2015年6月末の実績で、融資件数は446件。融資金額は56億9816万円にのぼる。「当初の想定30〜40億円を上回る56億円強の融資金額は経済効果と捉えたい」と、八木さんは評価する。

無担保・無利子の金融支援が背中を押した

無担保・無利子の「わがまち基金」は、故郷にUターンして事業を起こそうとする人の背中も押した。いちご倶楽部株式会社代表取締役の田内伸子さんもその1人だ。

静岡や大阪で化粧品販売の仕事をしながら子育てをしてきた田内さんは、いずれは宮城県大崎市鹿島台にある実家に帰り、農地を活用して地域に貢献したいと考えていた。2009年から1年半、長野県軽井沢で高設養液栽培によるイチゴ栽培の研修を受け、猛暑の影響などで大量廃棄の対象となる規格外のイチゴを活用した石鹸の開発と、春収穫の新品種「桃薫(とうくん)」の栽培に取り組んだ。

田内さんの桃薫イチゴブランド「Dear15 TOKUN」は高級贈答品として百貨店やホテル、通販で好評を博す(提供:いちご倶楽部株式会社)田内さんの桃薫イチゴブランド「Dear15 TOKUN」は高級贈答品として百貨店やホテル、通販で好評を博す(提供:いちご倶楽部株式会社)

「“桃薫”はその名のとおり、白桃のような香りと味の、大粒でバラ色のイチゴ。はじめて見ると誰もが驚き、ひとくち頬張れば幸せな気分になるんです」(田内さん)

初収穫の年の春に東日本大震災が起きた。田内さんは「大阪で培ったおばちゃんパワーで桃薫イチゴを栽培し、みんなを笑顔にしたい」と2012年5月、故郷に戻る。農林水産省から認定農業者の指定を受けて「6次産業化総合事業」にも認定され、自己資金でハウスを建設。2013年春には「桃薫」の初収穫に成功し、イチゴを口にした地域の人々が感動する様子を見て「この素敵なイチゴをブランディングし、地域の宝物にして仕事を生み出そう」と田内さんはファイトを燃やした。

販路開拓などの経営支援も地域金融機関の使命

ブランディングには、ロゴやパッケージのデザインなどを専門家に依頼するための資金が要る。だがハウスの建設などに自己資金は使い果たしてしまった。そこで紹介されたのが「わがまち基金」の金融商品だった。デザイン費や種苗の仕入れ代などの運転資金に田内さんは融資を活用した。

「創業したばかりで運転資金の調達に苦労していた時期に、無利子融資を提供いただいた日本財団さん、石巻信金さんにはとても感謝しています。石巻信金さんからは販路開拓のご支援もいただきました」と話す田内さん。

いちご倶楽部株式会社代表取締役 田内伸子さんいちご倶楽部株式会社代表取締役 田内伸子さん

2014年11月に仙台で開催されたビジネスマッチ東北のブースに出店したところ、規格外イチゴでつくった石鹸に化粧品原料メーカーが関心を示し、桃薫エキスの提供で商談がまとまった。いちご栽培を通して地域の若手農業者の育成や雇用の創出も目指している。

融資の現場を担当した石巻信金の津田誠さんは「規格外のイチゴを化粧品などの加工品として提供するというお話も印象に残りました」と、そのビジネスモデルに地域の持続可能な未来を想像していた。

石巻信用金庫 新分野推進室課長 津田 誠さん石巻信用金庫 新分野推進室課長 津田 誠さん

地域密着型の金融機関である信用金庫にとって、販路開拓や事業開発面での経営支援も大切な仕事の1つ。石巻信金の高橋賢志理事長が鳴子の温泉水を濾過した飲料水を田内さんに紹介し、顧客同士を結びつけた。高品質の水をイチゴ栽培に使い化粧品に配合すれば、互いのブランドに高い相乗効果が生まれる。

「津田さんたちがトラックで水を運んでくださって。恐れ多くてびっくり仰天しました(笑)」と田内さんが笑えば「いえいえ、われわれも勉強になりますから、そういうこともどんどんやるんです」と力強く津田さんも応じていた。

地域の自力復興を後押しする持続的な支援策

震災から4年以上が経過しても、いまだ20万人を超す人々が仮設住宅での暮らしを強いられている。インフラが整備され、生業が再開しても、住まいが仮暮らしでは復興とは呼べない。行政の施策として災害復興住宅の建設が進んでいるが、住み慣れた地域に自己資金で家を再建したいというニーズもある。

今後「わがまち基金」の展望をどのように考えているのか。日本財団 ソーシャルイノベーション本部 海洋チーム 山下大輔さんに話を伺った。

日本財団 ソーシャルイノベーション本部 海洋チームの山下大輔さん日本財団 ソーシャルイノベーション本部 海洋チーム 山下大輔さん

「地元の建設業者さんと信用金庫、そして日本財団が連携し、住宅再建支援プログラムを提供したいです。準備が整った宮古からはじめ、うまくいけば他の地域にも広げるつもりです」

──前後編にわたり、「Web」そして「融資」を手段とした、企業による復興支援の新たな取り組みを追ってきた。

まだ手つかずの余白を探し出せたら、行政・企業・NPO、都市・地方といった既存の境界線をいったんすべて取り払い、そこへ人・物・金・情報あらゆるリソースを集中して注ぎ込む。あらゆるステークホルダーを巻き込み、持続可能な課題解決のスキームをつくることは、「復興支援」や「企業戦略」の枠組みに留まらない、より良い社会を実現するための近道といえそうだ。

IT企業発! ECによる理想的な復興支援のかたち ──ヤフー株式会社復興支援室/日本財団「わがまち基金」(前編)

関連リンク
「わがまち基金」プロジェクト
いちご倶楽部株式会社


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