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野球+ICTで、ファンの裾野が広がりはじめた!?──パ・リーグの挑戦

2015年11月30日



野球+ICTで、ファンの裾野が広がりはじめた!?──パ・リーグの挑戦 | あしたのコミュニティーラボ
2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致決定から、国内で「スポーツ」に対する機運が高まっている。そんななか、人とスポーツの接点をつくる事例に着目したい。ICTの導入でプロ野球の新しい観戦スタイルを提供するパシフィック・リーグ・マーケティングの取り組みだ。ここから見えてくるものとは?

人気サービスを企画するのは、パ6球団の共同事業会社?

“スポーツ”に関する話題は、多くの日本国民の関心事だ。近年では“なでしこジャパン”やラグビー日本代表の活躍が記憶に新しい。しかしメディアで大きく取り上げられる話題の大半は国際大会のこと。その熱狂を一過性のものに終わらせてはならず、各競技がコンテンツとしての力を持ち続けることは、競技人口の増加、そして永続的な発展につながっていく。コンテンツとしての魅力向上の観点から、日本のプロスポーツの取り組みに着目したい。まずは“プロ野球”、パシフィック・リーグ(以下、パ・リーグ)の場合だ。

日本プロ野球組織のパ・リーグに所属する6球団の公式ホームページを見ると、デザインや機能が見事に統一されていることに気づく。

会員向け試合映像配信サービス「パ・リーグTV」も人気だ。パソコン、スマホ、タブレットを使い、主にパ・リーグの主催全試合を“ライブ映像”もしくは“アーカイブ映像”として視聴でき、会員数も年々増加の一途をたどる(2015年9月現在の会員数は約6.4万人)。

パ・リーグTV ホームページよりパ・リーグTV ホームページより

こうしたサービスの企画・運用・管理、国内外へのプロモーション活動、共同イベントの企画・実施、リーグスポンサー探しなどを、パ・リーグ6球団の共同事業会社として取りまとめているのが、パシフィックリーグマーケティング株式会社(以下、PLM)だ。

2004年のプロ野球再編問題以降、パ・リーグ各球団では“地域密着”のチーム運営が強化された。それが成功したことで、パ・リーグの球場は、かつては閑古鳥が鳴く時期もあったが、約4万人の球場が埋まるくらいまでに人気を獲得した。そんな改革が進んでいたさなかの2007年5月、PLMは設立された。

北海道、仙台、千葉、埼玉、大阪、福岡とチームごとに商圏が異なるパ・リーグでは、球団主導のエリアマーケティングまでは比較的展開しやすいといわれる。一方でより大きな利潤を生む球団経営には、各球団とも課題があった。そこでアメリカをモデルに、Webサイトや動画配信サービスなどを統合し、不要なコストを抑えた効率的なスポーツビジネスを目指そうと、パ・リーグ6球団で合意形成がされた。

試合映像から1球単位で“対戦シーン”を検索できる

パシフィックリーグマーケティング株式会社 執行役員 根岸友喜さんパシフィックリーグマーケティング株式会社 執行役員 根岸友喜さん

PLMの執行役員で、マーケティング室室長である根岸友喜さんは、自分たちのミッションを「プロ野球の新しいファンを増やすこと」と説明する。「パ・リーグTV」を筆頭に、PLMが提供するサービスは着実にプロ野球ファンの裾野を拡げている。一方で根岸さんの課題意識として残っていたのが「ICT技術の導入」だった。

「ICTを取り入れることで、野球の観戦スタイルが多様化すれば、コアなファンを満足させるだけでなく、さらにファンの裾野を拡げることにもつながる」(根岸さん)。そんな観点から、富士通と富士通研究所の協力のもと、「パ・リーグTV」の新サービスとして、「対戦検索」が生まれた。

パ・リーグTVの対戦検索画像イメージ。さまざまな角度から見たいシーンをすぐに探し出すことができる、プロ野球ファンにはたまらない機能だパ・リーグTVの対戦検索画像イメージ。さまざまな角度から見たいシーンをすぐに探し出すことができる、プロ野球ファンにはたまらない機能だ

たとえば、久しぶりの野球観戦。気になる投手を見つけ、今シーズンの投球内容を動画で見てみたくなった。そんなときはスマホを取り出し、「パ・リーグTV」のアプリから対戦シーンを検索できる。検索では「○○投手の奪三振シーンをすべて見たい」「○○選手と××選手の過去の対戦シーン」と、「1球単位」「シーンごと」のオーダーに応えてくれる。

構図のレイアウトから、対戦シーンを頭出し

プロ野球の平均試合時間はだいたい3時間。それだけ長い試合映像から、望みの対戦シーンを“頭出し”できるのはなぜなのか。富士通株式会社イノベーティブソリューション事業本部情報統合システム事業部の社員として、根岸さんとともにこのサービス構築を進めてきた小口淳さんが解説する。

「ベースにあるのは映像解析の技術。検索するには“投手の投げる直前のシーン”がわかればいいわけです。投手が打者に球を投じる際の映像を解析し、レイアウトや構図などから特徴を算出して場面を認識しています」

富士通株式会社イノベーティブソリューション事業本部情報統合システム事業部 小口 淳さん富士通株式会社イノベーティブソリューション事業本部情報統合システム事業部 小口 淳さん

タグ付けされた1球ごとの映像には、選手の成績など、パ・リーグで保有するデータが紐付けされる。映像シーンとデータ解析が関連づけられ、ライトユーザーもコアユーザーも楽しめるアプリケーションとなった。昨年夏にはβ版のテスト運用を開始。約1週間で1,000人を超えるユーザーからポジティブなフィードバックがあったという。

世界初!? プロ野球のハッカソンを開催

対戦検索サービスは、「パ・リーグ イノベーション API」として、2015年5月16日〜17日に都内で開催されたハッカソン「パパパ パッカソン Hack for Pacific League2015」に提供された。参加したのは、プログラマーやデザイナーなどのIT関係者。「野球好きはあえて参加者の対象から除外し、IT関係者を中心に募集をかけました。新しい野球の楽しみ方を、新しい人に届けることが目的」と小口さん。「新しい野球観戦体験を考える」をテーマに、2日間で10のアプリが開発された。

「パパパ パッカソン Hack for Pacific League2015」好評のうちに幕を閉じた「パパパ パッカソン Hack for Pacific League2015」

今後、対戦検索サービスは「パ・リーグTV」の会員向けにリリースされる予定だが、「ファン向けだけで終わらないのがPLM」と根岸さん。ファンの獲得、日本プロ野球の技術向上、さらには、日本のICTサービスの世界展開と、そこには無限の可能性がある。

PLMのビジョンは「プロ野球界、スポーツ界の発展を通して、日本の社会全体を明るく元気にしていくこと」。根岸さんは「プレーにしても観戦するにしても、スポーツは多くの人の感情を揺さぶる。感情の導線になるものは人それぞれ異なり、たとえば大リーグなら、球場全体の雰囲気を感じながら友人とゆっくりとビールを飲み交わすなんて見方をしている人もいる。観戦スタイルの多様化で、そんなビジョンを実現できれば」と話す。

新たな観戦スタイルづくりに取り組むパシフィック・リーグの試み。ICT技術の導入によっては従来のテレビ観戦だけでは飽き足らなかった人を、「パッカソン」やその後の展開においては、そもそも野球観戦に関心がなかった人たちをも巻き込み、文字どおりプロ野球の新しいファンの裾野を拡げている。今後はどんな価値をファンとつくり出していくのか、興味は尽きない。

【関連リンク】
パパパ・パッカソン Hack for Pacific League2015
パシフィックリーグマーケティング株式会社


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