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潜在的な課題を掴み、未来を描き出すプロセスから見えてくるもの──HAB-YU、未来を共創する場づくりに向けて(前編)

2015年12月14日



潜在的な課題を掴み、未来を描き出すプロセスから見えてくるもの──HAB-YU、未来を共創する場づくりに向けて(前編) | あしたのコミュニティーラボ
企業におけるオープンイノベーションの動きが活況を呈している。一方、つくった場やプログラムが思うように機能せず、当初の目的が風化してしまう場合が存在することも確かだ。では、企業がオープンイノベーション活動をはじめ、継続するためにはどんな要素が必要になるのだろうか。富士通デザイン株式会社が森ビル株式会社と連携し運営するオープンイノベーションプラットフォーム「HAB-YU」は、2014年9月の開設から1年、当初想定していた以上の成果を見せているという。今回は、HAB-YUの取り組みを例に「企業がオープンイノベーションを推進するために必要な要素としくみ」を前後編で探ってみたい。(TOP画像提供:富士通デザイン株式会社)

オープンイノベーションを活性化する“5つ”の条件とは──HAB-YU、未来を共創する場づくりに向けて(後編)

2022年、“服を買う”体験はどう変わる?

「2022年の実店舗のあるべき姿とは?」

こんなテーマを掲げたワークショップがHAB-YU platformで4回にわたり開催された。株式会社ユナイテッドアローズ(以下 ユナイテッドアローズ)と富士通デザイン株式会社(以下 富士通デザイン)の共創による「FutureShopProject」だ。
株式会社ユナイテッドアローズ 執行役員 高田賢二さん株式会社ユナイテッドアローズ 執行役員 高田賢二さん
今回の共創プロジェクトに至った経緯を「以前に富士通デザイン様と自社内のワークスタイル改善プロジェクトでご協力いただいたことがきっかけ。そのメソッドをベースに、長期ビジョン達成に向けて、新たなアプローチで、“あるべき未来のショップ”を描くために、デザイン思考を取り入れてスタートすることになりました」と振り返るのはユナイテッドアローズ・執行役員の高田賢二さん。

セレクトショップを全国展開するユナイテッドアローズのビジネスモデルは、実店舗、そこで働くスタッフの接客が重要な要素となる。しかし昨今、ファッションのニーズが多様化してきたとともに、EC(エレクトリック・コマース)の台頭が著しく、顧客の購買動向はネット通販に比重が傾いている。
マネジメント層が参加したワークショップの様子、アイデアを見比べる(提供:富士通デザイン株式会社)マネジメント層が参加したワークショップの様子、アイデアを見比べる(提供:富士通デザイン株式会社)
消費者の購買スタイルの変化とニーズの多様化・高質化の背景が発端となり、FutureShopProjectがスタートすることとなった。プロジェクトの前段階として、マーケティングやブランド戦略などさまざまな分野の有識者へのヒアリングや提言、さらに、ユーザーの代表として都内の大学生から、彼らの考える「未来の店舗」についてプレゼンを受け、インプットを行った。

学生からのインプットでは、まず「ファッション」「おもてなし」「差別化」のキーワードに基づいて、学生がワークショップを実施。そこで高田さんが衝撃を受けたのは、未来の店舗の姿。学生4グループが考えた「未来の、こうあってほしい店舗」像のなかにスタッフの存在はなかったのだ。

「薄々は感じていたのですが、若者の求めているものの前提が、無人店舗だとあらためて突きつけられた」(高田さん)と振り返る。あらゆる情報はスマートフォンから。実店舗では商品を手に取って肌触りや色を確認し、あとは決済するだけ。実物を確認するだけになってしまった店舗に、人はいらない。

自分のなかからアイデアが引き出される創発体験

そうした危機感から出発したFutureShopProjectでは、マネジメント層が4回のワークショップに参加。コンセプト創発から具体的なアイデアづくり、それを実現できる店舗像を形にしていった。
FutureShopProjectプロジェクトのプロセスFutureShopProjectプロジェクトのプロセス
実店舗の本質的機能とは、「顧客接点の強化」にほかならない。ならば「お客さまに届けたい価値」とはどんなことなのか。それを4つのキーワードにまとめ、それぞれを実現することが可能なICTの要素技術をマッピングし、一覧化した。

「経営層に腹落ちしたのは、“EC=クイックサービス、実店舗=スローサービス”という棲み分けでした。ネットですぐに入手したい場合もあれば、お店でじっくり選びたいこともある。実店舗の最大の強みは、個別のお客さまに合わせたスタイリングのコーディネイト提案ができることなのですから」と高田さん。

現在は、FutureShopProjectのアウトプットを受けて、それを具体的な体験やサービスを描き、未来のあるべき実店舗像を実現していくためにどのような戦略を立てればよいのか、長期ビジョン達成の戦略を練り直しているところだ。
ワークショップでは、アイデアを書き出しながら、まとめていった (画像提供:富士通デザイン株式会社)ワークショップでは、アイデアを書き出しながら、まとめていった
(画像提供:富士通デザイン株式会社)

高田さんは、今回のHAB-YUにおけるユナイテッドアローズと富士通デザインによる共創プロジェクトの意義をこう語る。

「これまではどちらかというと課題が明確で、それを解決するソリューションを提供してもらうためのパートナー選定でした。しかし今回のプロジェクトは、どこに課題があるのか見出せない状態だったので、スタートから一緒に考え、私たち自身のなかからビジョンとアイデアを引き出せるようにファシリテートしてくださった。そこが今までにない、まったく新しい取り組みでした」

アイデアを引き出す環境の整った場に、ふだんは頻繁に接することのない多様なスキルの人々が集結し、長時間にわたるデザイン思考的なメソッドで共創のワークショップに取り組みアウトプットする。その過程で自分のなかから思いもよらなかった着想や気づきが生まれる。ワークショップに参加したユナイテッドアローズの経営幹部層は、こうした創発を体験したに違いない。

「顧客接点の強化」に対する外部の知見や現在のユーザーの声をまとめ、さらに社内の方向性を交えまとめていく。ユナイテッドアローズとの共創プロジェクトでは、その創発プロセスを経ることで、「まだ見ぬ不安」が「はっきりとした課題」「新たなビジョン」に変わっていった。このプロセスを行うために、HAB-YUではどのような仕掛けを行ったのだろうか。

(後編)オープンイノベーションを活性化する“5つ”の条件とは──HAB-YU、未来を共創する場づくりに向けて へ続く

【関連リンク】
ユナイテッドアローズ株式会社
HAB-YU


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