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社会課題解決のアクションも1つの“デザイン”の結果──電通・岸勇希さんの「コミュニケーションデザイン」(2)

2016年01月22日



社会課題解決のアクションも1つの“デザイン”の結果──電通・岸勇希さんの「コミュニケーションデザイン」(2) | あしたのコミュニティーラボ
商品・サービスを販売するための「広告・プロモーション活動」も、今の時代に即した形でもう一度考え直すと「社会課題解決のためのアクション」になる。「コミュニケーションデザイン」という考えを提唱する株式会社電通のクリエーティブ・ディレクター岸勇希さんは、広告だけが答えではないと話す。人々の気持ちを動かすためにどんな仕掛けが必要なのか、その背景にある時代の変化とはどのようなものなのか、3回連続で伺う、第2回。

(1)企業とユーザーの気持ちをつなげる「デザインの原則」とは──電通・岸勇希さんの「コミュニケーションデザイン」
(3)モチベーションは、人類がコントロールすべき最大にして最強のエネルギー ──電通・岸勇希さんの「コミュニケーションデザイン」

広告だけが、企業プロモーションの解決策ではない

──電通に入社後、コミュニケーションデザインという考え方に至ったのは、なぜですか?

入社して早々、自社のやり方に対して疑問が生じてきたからです。わかりやすく言うと、「なぜその課題を、広告で解決しなくちゃいけないんだろう?」という素直な疑問でした。そりゃ広告の会社ですから、広告で解決するのは当たり前なんですけどね。でも、正直広告で解決しない方が、というか広告以前に解決すべき課題があるような場合も少なからずあるわけです。
株式会社電通 エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター 岸勇希さん株式会社電通 エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター 岸勇希さん

広告屋だから広告でしか考えないということに強く違和感を覚えたわけです。常に一番本質的かつ効果の見込める解決策をニュートラルに考えたい。そんな気持ちがコミュニケーションデザインのコアにはあります。

自分の考えに自信はありましたが、さすがに何の実績もなく、理想だけ語っていても誰も相手にしてくれません。だからこそ事例づくりに命をかけました。成功事例をもって、自分の考え方を証明したかったんです。結果的にいくつかの事例と、その論理をまとめたものが、2008年に発表した『コミュニケーションをデザインするための本』というわけです。

──『コミュニケーションをデザインするための本』は、2015年9月の時点で第2版に改訂され、クリエイティブに携わる人を中心に、今も愛読され続けていますね。発表当時の周りの反応は?

クライアントをはじめ応援してくれる人もたくさんいました。でも正直、社内からは叩かれることの方が多かったと記憶しています(笑)。コミュニケーションデザインは、そもそも広告では解決できない課題の存在を前提にした考え方ですからね。自分たちの過去のビジネスに刃物を向けている、といわれても仕方がなかったと思います。色々言われましたが、抵抗感はほぼゼロでした。課題解決に対しては絶対的に誠実だったので。

今も支持され続けている岸さんの著書 『コミュニケーションをデザインするための本』
今も支持され続けている岸さんの著書 『コミュニケーションをデザインするための本』

僕にとってビジネスとは、お客さまからいただいた額よりも1円でもいいからプラスにして返すこと。もちろん1円とは言わず、多ければ多いほど理想ですが、うまくいかないことも残念ながらあります。だからこそ、1円のプラスは死守する。絶対に得してもらう。このためにできる限りを尽くすべきだと思っています。そして、これさえできていれば仕事は続くと信じています。

電通の事業領域にも表れたコミュニケーションデザイン

──業界の変化は感じていますか?

当社ホームページの「事業領域」には、数年前より「Integrated Communication Design」とのキャッチフレーズが掲げられています。世のなかの変化に対し、自らの事業領域をも変えていくことを覚悟の表れだと思っています。

──2008年に発表された「コミュニケーションデザイン」。それから約8年経って、その考え方自体にも、変化している部分はあるのでしょうか?

積極的に発信するかどうかは別として、コミュニケーションデザインは、これからも更新していくつもりです。本当は「○○3.0」などというと、言葉だけが1人歩きしてしまいそうで嫌なのですが(笑)、僕には“コミュニケーションデザイン3.0”が明確に見えてきました。

メディア・ニュートラル(=1.0)、ソリューション・ニュートラル(=2.0)へと発展したコミュニケーションデザインは、「モチベーションデザイン」へとその可能性を広げていくと。

「なぜその課題を広告で解決しなければならないのか」。シンプルながら広告会社の本業をあらためて問い直す疑問から「コミュニケーションデザイン」という考え方が生まれたという岸さん。この先それは、どのような進化を見せるのか。最終回ではコミュニケーションデザインの未来地図を聞いた。

(1)企業とユーザーの気持ちをつなげる「デザインの原則」とは──電通・岸勇希さんの「コミュニケーションデザイン」
(3)モチベーションは、人類がコントロールすべき最大にして最強のエネルギー ──電通・岸勇希さんの「コミュニケーションデザイン」

【関連リンク】
AQUA SOCIAL FES!!
電通 コミュニケーションデザイン事業紹介
コミュニケーションをデザインするための本

岸勇希(きし・ゆうき)

株式会社電通 CDC エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター


1977年名古屋生まれ。早稲田大学大学院国際情報通信研究科修了。2004年電通に入社し、中部支社雑誌部などを経て、06年10月から東京本社インタラクティブ・コミュニケーション局クリエーティブ室。08年から現職。圧倒的な「思考量」をベースに、トヨタ自動車「AQUA」や水素自動車「MIRAI」のキャンペーンをはじめ、商品開発や事業デザイン、人材育成プログラムなどに数多く携わる。カンヌ国際広告祭金賞、グッドデザイン賞など国内外で受賞多数。著書に『コミュニケーションをデザインするための本』(電通選書)。


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