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社会課題を解決する先進的なアプローチをご紹介します。

社会課題をもっと身近なものにするために──リディラバ「R-SIC2015」潜入(後編)

2016年03月02日



社会課題をもっと身近なものにするために──リディラバ「R-SIC2015」潜入(後編) | あしたのコミュニティーラボ
社会課題は多くの人にとっては遠い存在。2009年、「社会の無関心を打破する」を理念に立ち上げられたのが一般社団法人リディラバだ。代表の安部敏樹さんは、これまで参加した起業家コンテストでは輝かしい実績を残し、大学1年から5年間、毎年2カ月間マグロ漁も経験するなど、若くしてさまざまなステージに立った経験豊富な人物。安部さんがR-SIC、ひいてはリディラバで実現したい未来とはどんな景色なのか。全2回の後編。

ソーシャルビジネスは現場体験からはじまる──リディラバ「R-SIC2015」潜入(前編)

社会課題解決に至るための「4つの壁」

社会の無関心を打破する──。それが、リディラバ代表理事・安部敏樹さんが一貫して持ち続ける事業の理念だ。
安部敏樹一般社団法人リディラバ 代表理事 安部敏樹さん
安部さんは「社会課題と当事者でない人の間には『関心の壁』『情報の壁』『現場の壁』の3つがある」と考える。リディラバが展開する、社会課題の現場に訪れる「スタディツアー」、社会課題を発信するニュースメディア兼データベース「TRAPRO(トラプロ)」、団体で現場に赴く「教育&修学旅行事業、企業研修」はそれぞれの3つの壁に対応している。
リディラバ (取材を元に編集部作成)
「スタディツアーは“社会課題の現場までの道路をつくっている”ようなもの。行きたいと思ったら行ける状態にしているわけです。無関心な人がわざわざツアーに来ないだろうという人もいますが、道路を敷いた後にそこを人が歩くかどうかは別問題。道路はあるのだから、あとはそこにいかにして人を持ってくるかであり、それを担うのが、教育&修学旅行などの事業です」

さらに安部さんは「社会問題に届いた後にも壁があります」と続ける。

「それは『解決の壁』です。3つの壁を乗り越えて『じゃあどうやって解決しようか』と悩む人のために、ノウハウを提供できるコミュニティなりメソドロジー(手法論)が必要。そのためのR-SICなんです」

R-SIC参加者は、リディラバのネットワークのなかからの招待者、そして一般公募、協賛企業からの招待者で構成される。「熱量が高く、受け身にならない人たちを意識的に集めてマッチングしている」といい、そうした人を集めることで事業に対する本気度を高めている。

既存ビジネスばかりでは、社会のひずみに気づきにくい

およそ200名にもおよぶ一般参加者たちは、どのような思いで参加したのか。R-SIC2015「社会福祉(保育)」スタディツアーの参加者に聞いてみた。

メーカーで広報の仕事をしている20代男性参加者は、リディラバでのボランティア活動をきっかけに、今年初めてR-SICに参加した。

「保育の理想は、供給側が十分な数と多様性を持ったサービスを提供し、利用する側がきちんと対価を払って自由にサービスを選べるようになることだと思いました。企業でも、社員をどのようにサポートして、それぞれがどのように子育てしていくか、これから重要となるでしょう。1人の人間として、こうした議論を重ねることが重要な時代になっていると感じます」

メディア企業で人材に関するプロジェクトに関わる女性参加者は、育児と仕事の両立を図りたい女性に関するオープンイノベーション・プロジェクトを推進していることから、保育をテーマにしたスタディツアーへ参加したと言う。
R-SIC参加者自らの課題や問題意識と目の前の社会課題を重ね、真剣な表情になっていく参加者
「それぞれの企業は既存のビジネスに関する能力を持っているけど、世のなかの変化から生まれた社会のひずみに気づきにくいものです。ひずみに気づいたとき、すぐに課題を設定できるかどうか。これがビジネスに必要となっているように感じます。今回はそのためのネットワークもできたし、この枠組みを社内に持ち帰り、従業員の意識を変えることにも利活用できるかもしれません」

R-SICに込めた安部さんの思いは、ツアー参加者にも届いているようだ。

再び、リディラバ代表理事・安部さんの話。

東京大学教養学部で大学生を相手にソーシャルビジネスの講義も行っていた安部さんは「若い人たちもソーシャルビジネスへの関心は高く、社会をなんとかしたいと思う人は決して少なくない」と話す。しかし思いの大きさには違いがあり、“大きなリスクがあっても実現しようとする人”と“社会にいいことをしたいけど生活の安定もほしいという人”に分かれ、「後者のほうが多い」と感じている。そこで安部さんは、R-SICにこんな可能性も感じている。

「R-SICでは前者のようなイノベーターを輩出していきたい。その人たちが事業を興して雇用できる状態にまで成功させられれば、後者の人たちの受け皿にもなるでしょう」

社会課題に触れることでインセンティブが得られる?

社会の無関心の打破のために「やるべきことはまだまだある」と安部さん。「情報が確実に届くメディアのしくみづくり」「グローバルに社会課題を可視化して共通化していくしくみづくり」などを挙げるなか、もう1つ、「社会課題解決の現場にインセンティブ設定を取り入れることができるのではないか」と考えを示す。
R-SIC2日目のカンファレンスの様子
「人間には“性善説”的なところもある一方で、メリットがないと動かない“性悪説”的な部分もあるものです。そこで、社会の現場に行くことが、自分に対するリターンにつながるしくみがあればいい。たとえば、社会課題を解決したら『モテる』とか『控除が受けられる』とか……。

そのためには社会性を可視化してスコアリングできるかが肝で、『TRAPROソーシャルスコアは何点!』みたいに点数がはじかれ、受験に有利になってもおもしろい。うちのプラットフォーム上にはそれまでの活動の履歴を残せるので、スコアリングの精度を深めていくのもおもしろいですよね」

社会の成熟とともにビジネスは一般化していく

安部さんが思い描く“社会課題と人の関わり方”は「蛇口をひねれば水が出るのと同じような状態」になることだという。すなわち、特別にありがたみを感じることもなく「それって普通だよね」と思える状態だ。

そんな安部さんにとって「ソーシャルビジネス」とはどんなものなのか。最後に伺った。

「社会課題が多様化するなかで、経済合理性が機能しない分野があって、その分野に対して、ビジネス・イノベーションやテクノロジー・イノベーションを通して課題解決をしていく事業、だと思っています。」

安部敏樹

「社会が多様化する前は、農業だって『お米を食べられない人に届ける』ことを目的としたソーシャルなビジネスだったわけです。社会性のあった多くのビジネスが社会の成熟とともに一般化した。社会が未成熟な状態なら社会課題もシンプルだったのですが、今は『誰かにとっては課題で、誰かにとっては課題じゃない』みたいな、外部不経済みたいな状態が頻出し、そこから無関心が生まれています。これからはそれに対し企業やイノベーターが参入し、経済的に合理性を保てるような動きが必要になっていくでしょう」

無関心を打破するためには、個人の意識改革、団体の発信力など、さまざまなレイヤーでの変化が必要だ。それを一気通貫で変えようとするリディラバの取り組みは、これからの世のなかにうねりを生み出していくだろう。

ソーシャルビジネスは現場体験からはじまる──リディラバ「R-SIC2015」潜入(前編)


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