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ソーシャルインパクトを生む組織とは ──ファンドレイザー山元圭太さんの社会課題解決(前編)

2016年03月25日



ソーシャルインパクトを生む組織とは ──ファンドレイザー山元圭太さんの社会課題解決(前編) | あしたのコミュニティーラボ
社会課題の解決をミッションに掲げるNPOやNGO。彼らにも、企業と同じく、一定の社会的成果を生み、持続可能な活動を維持していくための経営戦略が必要だ。それは企業の経営戦略とどう違うのだろうか。また、営利組織たる企業が社会課題の解決に挑むとき、非営利組織であるNPOやNGOの方法論はどう参考になるか。企業とNPO、双方へのコンサルティング経験を持つPubliCo(パブリコ)COOの山元圭太さんに話を聞いた。

組織のミッション達成に必要な「フレンドレイジング」──ファンドレイザー山元圭太さんの社会課題解決(後編)

NPOに現場のプロは多いが、経営のプロが不足している

──山元さんは株式会社Publico(パブリコ)を2015年10月に立ち上げられました。どんな活動をされているのですか。

山元 ひとことで言うと、NPO法人や財団法人などの非営利組織(僕らの言い方では「公益組織」といいますが)に対する経営支援をしています。社名の「パブリコ」は「パブリック(Public)」の語源になっているラテン語で「公共」「公益」の意味です。

──非営利組織への経営支援という事業を立ち上げた経緯には、どんなことがあったのですか。
株式会社Publico COO 山元圭太さん株式会社Publico COO 山元圭太さん
山元 大学時代に、街頭募金を集めスリランカやバングラデシュなどへ行って貧困や飢餓の問題に取り組むボランティア活動をしていました。とても充実していたし、現地で喜んでいる子どもたちを見ると充足感もあったのですが、一方でモヤモヤが積み重なってもいる自分もあった。本当にこの活動を何十年と続ければ飢餓や貧困のない世界をつくれると信じて、そこから逆算して目先の活動をしているのかと自分に問うたとき、とてもイエスとは答えられませんでした。じゃあ何のためにやっているのか。しょせん自己満足ではないか、と。

──そうなるとボランティア活動は続けられませんよね。

山元 ガクッと来て、やめようと思った時期もありました。でも、やっぱりやりたいと思っている自分がいるのも事実でした。ならば、地域や世界が変わるような意味のあることをしたい。では、大人の団体を見てみようと、いろんなNPOやNGOにインターンとして参加してみたんです。

そこでわかったことがありました。熱い想いと高い専門性を持つ尊敬する現場のプロはたくさんいらっしゃいました。一方で、その人たちの力を結集して社会課題の構造に切り込む「経営のプロが」少ない。ならばそっちのプロを目指そうと思いました。もともと僕は滋賀県の商業高校出身で、近江商人発祥の地の“ど真ん中”で育ったこともそう考えた1つの理由かもしれません。

──「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の「三方よし」を行動原理とする近江商人ですね。

山元 「三方よし」をはじめ、近江商人の商売十訓などにも親しみがありました。そんな背景もあって、まずは企業経営を学ぼうと、コンサルティングファームに就職したんです。そこでまず5年間働いて、そろそろかなと思っていたときにご縁があり、児童買春・人身売買問題の解決を目指す「NPO法人かものはしプロジェクト」に入りました。

そこで5年半取り組んだのは、ファンドレイジング(民間非営利団体の活動に必要な資金調達活動)や組織づくり、幹部と一緒に経営戦略を立案する仕事です。東日本大震災をきっかけに、さまざまなNPOとのおつきあいが増え、自分のしてきた数多くの失敗体験や、たまにあった成功体験を話したり、お手伝いをしていました。喜んでもらえたり、成果を出せたりしたので、あらためてこういう仕事は求められているんだなと思ったのです。そこで、2014年にNPOマネジメントラボという屋号で1年間フリーランスで活動し、手応えをつかめてきたので、本格的に事業として立ち上げたのが株式会社Publico(パブリコ)です。

公益組織が社会的成果を生み出すための10の要素

株式会社Publico COO 山元圭太さん
──企業とNPO双方での経験から照らして、そもそも営利組織と公益組織のマネジメントはどこがどのように違うのでしょうか。

山元 感覚的には「8割は同じ。2割が違う」と思っています。最大の違いは最終的な目的です。営利組織は利潤の最大化。公益組織は社会課題の解決あるいはビジョンの実現。だから戦略立案の順番も、営利組織の場合は「(1)利益(2)売上(3)費用」ですが、公益組織は「(1)ソーシャルインパクト(社会的成果)(2)支出計画(3)資金調達」ということになります。

ただし、これは最終的な目的であって、公益組織もミッション実現のためには、利潤を上げ活動を維持する必要があるかもしれないし、営利組織も持続可能に利潤を上げようとしたら、社会課題の解決を図る必要があるかもしれません。

同業者との関係性も違います。営利組織の同業者が「競合」なのに対し、公益組織は「協業」。公益組織の人たちは、社会課題さえ解決できればOKなので、自分たちよりもうまくやれる団体がいたら、その人たちのサポートに回るほうがいいわけです。ミッション/ビジョンを実現するのは誰でもいい。だからノウハウも流出させるし、今の言葉でいえば“オープンイノベーション”が起こりやすいのが公益組織です。

営利組織の顧客が商品・サービスの対象者1人なのに対し、公益組織の顧客は2人いることが多い。公益組織にお金を出してくれる人と、そのサービスの受益者です。お金の出し手と受益者が別々なんです。だから常に2人の顧客のバランスを考えてマネジメントしなければなりません。

あと、僕が個人的に感じた営利組織と公益組織の違いは人材マネジメントについてです。公益組織の場合はボランティアスタッフをマネジメントするので、金銭的報酬以外のことでみんなの力を結集する必要があります。こうした発想は企業にいたときにはまったくなかったので、NPOに移った際にはとまどいがありました。

──公益組織でボランティア活動をする人たちは、どのようなモチベーションで動いているのでしょう。

山元 きわめて多様です。なおかつ、しばしばご本人も正確には認識できていないことが多くあります。例えば、ボランティア活動に取り組んでいる方には「マズローの五段階欲求説」(生理的欲求、安全の欲求、所属の欲求、承認の欲求、自己実現の欲求)のどの段階の欲求も少しずつあるんですね。だから会話を通じて把握し、その人のモチベーション源の割合に合った形でコミュニケーションをしていくとその方の想いと力をより活かすことができます。

──公益組織の経営戦略ではどんなことがポイントになりますか。

山元 社会課題を解決しソーシャルインパクトを出している公益組織は共通して、次の10個の要素が一気通貫しているように思います。
  (1)解決を目指す社会課題を明確にした「存在理由」   (2)それを実現するための社会課題の「問題構造」   (3)どうしたら解決できるか「問題解決仮説」   (4)そのために必要な役割を誰に演じてもらうか「役割定義」   (5)どんな価値をどれくらい生み出せばよいか「成果目標」   (6)達成に必要な資金、人材、ネットワークなど「必要資源」   (7)それをどのようにして手に入れるか「資源調達」   (8)その資源でどのようなチームをデザインするか「組織基盤」   (9)組織がきちんと機能するように工夫した「実践実行」   (10)常に見直しPDCAサイクルを回す「カイゼン」提供:株式会社Publico
(1)〜(4)は「社会を変える計画」、(5)〜(7)は「事業計画」、(8)〜(10)は「実行計画」です。(7)の資源調達に問題を抱えている、とおっしゃるNPOさんが多いのですが、なぜ資源が足りていないのかを見ると、実は(1)〜(4)の「社会を変える計画」がきちんと設計されていない場合が多いのです。その筋が通っていれば説得力が増してメッセージが確実に伝わり、資金も人材も集まりだします。

“ソーシャルシフト”を起点にイノベーションを

株式会社Publico COO 山元圭太さん
山元 前述の10の要素は、企業でイノベーションを起こすためのフレームとしても使えるかもしれません。要は、“プロダクトアウト”や“マーケットイン”の考え方だけではなく“ソーシャルシフト”を起点にする。おもしろいのは、企業研修でこの観点から考えると議論が盛り上がること。考えてみれば“イノベーションを起こそう”と思う人はあまりいませんが、“こんなのはおかしい、もっと社会を良くしたい”とは漠然と、日々誰もが思っているはずです。

──毎日ぎゅうぎゅう詰めの満員電車で通勤するのはおかしい、とか。

山元 そうですね。ただ、企業研修でこのフレームを一度ご説明すると、だいたい最初は、自社の事業領域から出発してこの社会課題なら貢献できそう、という発想になるんです。でもそれはソーシャルシフトではなくプロダクトアウト。そうではなく、自分や家族の生活のなかで困りごとが何か必ずあるはずで、ならばそれを解決するために自社の商品やサービスが使えないだろうか、と発想する。それで「あ! つながった」という感覚が持てれば、しめたものです。

NPOで経営のプロになることで、その活動をドライブさせようと考えた山元さん。5年半の活動のなかで、ファンドレイジングや組織づくりを行ううちに「公益組織が社会的成果を生み出すための10の要素」が必要だと語っていただいた。後編ではその話を踏まえ、企業が社会課題に取り組む意義、また日本のあらゆる組織に必要な「成果」の再定義について話を伺った。

組織のミッション達成に必要な「フレンドレイジング」──ファンドレイザー山元圭太さんの社会課題解決(後編)
株式会社Publico COO 山元圭太さん

山元圭太

1982年滋賀県生まれ 同志社大学商学部卒。株式会社PubliCo(パブリコ)COO


卒業後、経営コンサルティングファームで経営コンサルタントとして、5年間勤務の後、2009年4月にNPO法人かものはしプロジェクトに入社。日本部門の事業全般(ファンドレイジング・広報・経営管理)の統括を担当していた。2011年よりNPOを中心に非営利組織に対する運営支援を行っている。


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