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組織のミッション達成に必要な「フレンドレイジング」──ファンドレイザー山元圭太さんの社会課題解決(後編)

2016年03月25日



組織のミッション達成に必要な「フレンドレイジング」──ファンドレイザー山元圭太さんの社会課題解決(後編) | あしたのコミュニティーラボ
営利・非営利問わず、日本におけるあらゆる組織に必要なことがあると語るPubliCo(パブリコ)COOの山元圭太さん。それは「成果」の再定義。さらに、組織の運営には、ファンドレイジングに留まらない「フレンドレイジング」が必要だ、とも教えてくれた。フレンドレイジングとは何か、その真意を聞く。

ソーシャルインパクトを生む組織とは ──ファンドレイザー山元圭太さんの社会課題解決(前編)

企業が社会課題に参画しないと市場は維持できない

──企業が社会課題に取り組む意義についてはどうお考えですか。

山元 日本においては企業が地域や社会の課題により積極的に取り組んでもらいたいと思っています。なぜなら、企業が参画しないと日本社会が維持できないのは明らかだから。少子高齢化で税収は減る一方なのに、社会保障費は増え続ける。そんななかで、行政が今までと同じ公共サービスや社会福祉を提供し続けていたら、必ず破綻します。これは確定事項です。企業のマーケットを支える人々の暮らしが破綻するのに、ビジネスが持続可能になるはずがありません。

だから、持続可能なマーケットを支える柱の1つとして活動することが、長期的に見れば企業にとっても必要です。企業が直接プレイヤーになるのでもいいし、資金や人材やノウハウや顧客ネットワークを提供するサポーターの役割でもいい。可能ならば一企業の中で両方持つのが理想でしょう。現場を知らずにサポートしても、表面的なものにしかならないし、サポートという客観的機能がないと視野が狭くなるからです。

──CSR活動から一歩進んで、社会課題の解決と同時に収益も上げられるようなビジネスモデルを組み立てることは可能でしょうか。

山元 一部では可能でしょうが、大部分は難しいのではないかと思います。本業と近くて収益の見通しが立つには、ある程度の規模が必要です。そういう部分がどの社会課題にもあるかといえば、たぶん限られた領域に留まります。

それよりもむしろ、営利・非営利問わず、あらゆる組織にとってそもそも「成果とは何か」を再定義することが重要だと思うのです。営利組織は新たな事業開発を行う際に、非営利組織は資金調達などを行う際に、それぞれ大切な視点です。
株式会社Publico COO 山元圭太さん株式会社Publico COO 山元圭太さん
──その組織にとって成果とは何か、をあらためて洗い直すのですか。

山元 そうです。もしかしたら、営利組織の成果は収益向上だけではないかもしれません。それ以外のことも成果として受けいれる“成果の多様性”を肯定しない限り、企業が正面切って社会課題の解決には乗り出せないのではないでしょうか。成果を定義したうえで、成果目標の数値を設定する必要があります。

非営利組織にも同じことが言えます。社会課題の解決に限らず、従業員や顧客の満足度向上も社会的成果の1つです。米国ではリーマンショック以降、各種助成金が激減して、資金の提供先を選ばざるを得なくなりました。その選ぶ基準として、提供候補の団体がどれだけ社会的成果を上げているかが最も公平で本質的な判断基準になっています。だから成果の定義と成果目標の数値設定が求められる。日本でもそうなるはずです。

──社会課題の解決をミッションにすると不確定要素が多く、一般のビジネス以上に、成果が出るか出ないか、読めないところが大きいですよね。

山元 だからこそ、成果の定義が必要です。「直接成果」「間接成果」「最終成果」の3つが論理的につながるよう設定するという手もあります。たとえば、障がい者の自立支援をミッションとする団体が3カ月の職業訓練プログラムを年3回実施しようと考えたときの成果とは何か。

直接成果は回数の達成と参加者数、資格取得率などです。これによる間接成果は、当事者の就労意欲や自己肯定感の向上、就職率の上昇、提携団体数の増加などでしょう。それが積み重なっていくとやがて、たとえば継続就労年数の上昇や、一定の月収以上を稼ぐ人の増加、就労満足度の向上といった最終成果が得られるわけです。
「直接成果」「間接成果」「最終成果」の3つの成果とその例(提供:株式会社PubliCo)
──そうやって成果を細かく再定義していくことが、組織の継続、ひいては社会課題の解決に必要というわけですね。

山元 はい、成果を数字にして出せるようになれば、資金調達の際にスポンサーを説得しやすくもなります。それだけでなく、組織の問題点を洗い出すことも可能です。こうやって整理すると、どの部分がまだ弱いかがわかります。たとえば先の例なら、長く仕事を続けているし、それなりの給料ももらっているけれど、就労満足度が低かったのなら、最終成果には達していません。成果の再定義によってそれがわかったら、次は「どうすれば満足度を高くできるか」を設計しなおせばいいわけです。

結果として、資金も集まり、組織の改善点も見つかるわけで、組織の目的を達成する大きな助けになると考えています。

必要なのは、ファンドレイジングに留まらない「フレンドレイジング」

株式会社Publico COO 山元圭太さん
──山元さんは日本ファンドレイジング協会の認定ファンドレイザー1期生で、協会の理事も務めています。ファンドレイザーとは非営利組織の資金調達をサポートする役割と考えていいんでしょうか。

山元 おっしゃるとおり、日本語に直訳すると「資金調達担当者」なんですが、その翻訳だと本質的な部分を誤解しがちになると思っています。お金さえ集めてくればいいのなら、おもしろくもなんともありません。“ファンドレイジング”ではなく、むしろ“フレンドレイジング(仲間づくり、仲間集め)なんだと思っています。

──共感してくれる仲間が集まれば自然にお金も集まってくる、と。

山元 集めるのはお金ではなく、ミッションの実現に参加したいと思う人たち。参加の仕方はさまざまです。お金を提供できる人は会費や寄付、時間を提供できる人はボランティア、専門性を提供できる人はプロボノ、勢いと若さだけはある学生ならインターン……。お金だけでなく、人材、ノウハウ、ネットワーク、場所、モノなど、ミッションの実現のためにありとあらゆる資源を調達してくるのがファンドレイザーの真の役割です。「どんな社会を目指しているのか」「それはなぜ実現していないのか」「どうすれば実現できると考えているのか」。この3つに答えられることが、僕のイメージするファンドレイザーの正しい姿です。

それを考えることが、最終的に組織のミッションを達成するうえで大きな助けになると思うのです。

そう考えると、「ファンドレイザー」というのはこれからの時代のビジネスパーソン像を考える一つのヒントにもなるのではないかと思います。

目の前にある業務や事業にとらわれるのではなく、理想の社会像を描き、問題構造を分析し、そこから新たなビジネスシーズを発見する。利益以外も成果と捉え、だからこそ様々な社内外からの協力を集めることができる。すると、さらにイノベーションが起こってくる。

そんなことが、営利組織でもどんどん出てくると面白いのではないでしょうか。

ソーシャルインパクトを生む組織とは ──ファンドレイザー山元圭太さんの社会課題解決(前編)

山元圭太

1982年滋賀県生まれ 同志社大学商学部卒。株式会社PubliCo(パブリコ)COO


卒業後、経営コンサルティングファームで経営コンサルタントとして、5年間勤務の後、2009年4月にNPO法人かものはしプロジェクトに入社。日本部門の事業全般(ファンドレイジング・広報・経営管理)の統括を担当していた。2011年よりNPOを中心に非営利組織に対する運営支援を行っている。


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