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専門性を社会に還元させる “ベンチャー・フィランソロピー”の可能性──SVP東京パートナーによる投資・協働(前編)

2016年04月15日



専門性を社会に還元させる “ベンチャー・フィランソロピー”の可能性──SVP東京パートナーによる投資・協働(前編) | あしたのコミュニティーラボ
ふだんの仕事で培ったスキルを別の場に役立てる。日本でもボランティアやプロボノという形で広がりはじめて久しいが、それらを一過性の盛り上がりで終わらせず、ソーシャルイノベーションの活動の種にするにはどうしたらよいのだろうか。今回は、ソーシャルベンチャーを支援する特定非営利活動法人ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(SVP東京)を舞台にその可能性を探ってみる。

SVP東京は協働するソーシャルベンチャーを選定し、パートナーと呼ばれる個人とソーシャルベンチャーが協働するのを支援する。その大きな支えとなるのがパートナーからの投資だ。パートナーが投資とスキルを提供するSVPモデルは、パートナーとなる個人とソーシャルベンチャーに何をもたらすのか、まずはSVP東京のしくみから見ていこう。前後編でお伝えする。(TOP画像提供:SVP東京)

“本気のコミュニティー”が前のめりな支援を生む──SVP東京パートナーによる投資・協働(後編)

非営利組織の力を上げ、活動を継続させるための「フィランソロピー」

今回の舞台、ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(以下、SVP東京)の活動モデルは、非常にシンプルだ。投資先であるソーシャルベンチャーとSVP東京、そしてパートナーである個人の3者で成立する。そのしくみはこうだ。

1. 個人がSVP東京の活動に参加するにはSVP東京のパートナーとなり、SVP東京の一員として活動することになる
2. SVP東京のパートナーは、SVP東京に出資金(年会費)を払う
3. SVP東京は、パートナーの出資金をもとに、革新的なビジネスを行うソーシャルベンチャーに、年間100万円を限度とした資金を提供する(最長2年間)
4. パートナーはSVP東京の一員として、投資・協働先の事業創出の活動に参加でき、そこから学習と成長の機会を得る

さらに図で説明するとこのようになる。
SVP Webサイトより
提供:SVP東京

その活動の根底に流れる概念が、「社会貢献」という意味を持つ「フィランソロピー」という言葉だ。具体的には“個人や企業の助成事業や慈善事業”を指すこの言葉は、助成事業のより大きな意味として「投資」や「協働」などの意味も包含している。SVP東京のWebサイトには以下のような記載がある。

SVPの特徴は、資金、リソース、経営における専門性を、長期的に地域の非営利組織に提供することで、非営利組織の組織能力と活動の継続性の向上をはかることです。このモデルは、1997年から「ベンチャー・フィランソロピー」として知られるようになりました。(出典:SVP東京ホームページ)

90年代の後半、この“SVPモデル”が北米を中心に広がり、2001年、各地でのフィランソロピー・コミュニティーの構築を目指すネットワーク機能として、アメリカ・シアトルでSocial Venture Partners International(SVPI)が創設された。SVPIの加盟団体は、世界10カ国・40地域におよび、このうち2006年10月に“アジア初の加盟団体”として参加することとなったのがSVP東京だ。

2016年3~4月にかけて、第12回投資・協働先となるソーシャルベンチャーが募集された。9月には具体的な投資・協働が開始される予定だ。近年は1回の募集につき約50件の応募があり、例年3~5団体が投資協働先として選考されるという。

社会起業家に求めるのはTheory of Changeの精神

「私たちは、どのような組織・立場にあっても当事者として挑戦していく人を増やしたい。その最たる存在が社会起業家やソーシャルベンチャーです。彼らが“自分自身の時間・お金・スキルを投じても伴走したい”というパートナーからの共感を得ることで、このモデルは成り立っています」

そう話すのは、SVP東京・代表理事の岡本拓也さん。これまで過去11回の募集で35の投資・協働を実現させてきた。

投資・協働の選考基準には「1. 起業家精神」「2. 事業モデル」「3. 共感性」「4. 社会的インパクト」「5. SVPとのマッチング」という5つの項目を設定しているが、その根底にある基本理念が「Theory of Change(セオリー・オブ・チェンジ)」の精神だ。
特定非営利活動法人ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京 代表理事 岡本拓也さん
特定非営利活動法人ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京 代表理事 岡本拓也さん

「それがどんな社会課題なのか、問題の核心はどこにあるのか、そして社会がどう変わるのか……。ともすれば、事業としてスケールすることのみにフォーカスされがちなベンチャーキャピタルの活動において、とりわけソーシャルベンチャーでは、世のなかの課題に対する団体のアプローチそのものが重要なんです。私たちはその先にこそ社会的なインパクトが生まれると考えており、そうした社会的インパクトの結果が5つの選考基準に表れてきます」

企業勤務の傍ら参画する100名超のパートナー

SVP東京のパートナーの数は、2016年3月現在で125名。多くは20代~60代の社会人で構成され、民間企業や官公庁に勤めながらパートナーとしての活動を続けている人が多い。

パートナーはどのようにSVP東京の活動に関わっているのだろうか。

パートナーは投資・協働先の選考を行う5~8月から活動に加わる。書類選考の段階から、投資・協働先にSVP東京が足を運び、ヒアリングをしている。2次選考(7月頃)では投資・協働先によるプレゼンテーションがはじまるが、そのときにはすでに「投資・協働先 × パートナー」のチームが構築されている。

「パートナーのおよそ6割が投資・協働先のチームに加わって直接サポートを行っています」

そう話すのはSVP東京・理事の臼井清さん。自身も過去大手メーカーに勤めながら、SVP東京に参画したパートナーで、パートナーとして2011年8月に投資・協働先に決定した特定非営利活動法人クロスフィールズをサポートし、現在は同社の相談役を務める。

「だからといって単純にパートナーを『アクティブ(直接サポートを実施する)』か、『ノンアクティブ(何らかの理由があり直接的なサポートをしていない)』で分けられるものではありません。ノンアクティブの4割はSVP東京のビジョンに共感していて、常日頃から伴走していなくても、事業のなかで必要となれば、その道の専門家として都度サポートしています。SVP東京には常に課題を相談できる人がいる状態が保たれているというわけです」(岡本さん)

双方に気づきを与え、共成長を促す

投資・協働が決定してからも、SVP東京のサポート領域は多岐にわたる。

「投資・協働決定後は、キャパシティ・ビルディング(組織基盤強化)を重視しています。組織基盤をつくっておけば、結果として2年間で飛躍的な成長がなかったとしても、その先に成長が見込めるからです。その点からも、短期的にイシュー(論点)が変わっていきがちなソーシャルベンチャーの事業構築において、本気で伴走してくれるパートナーの豊富な経験がとても重要です」(岡本さん)
「そもそも企業とどうリレーションをつくるのか」など、企業運営では初歩的なことも投資先の団体では、新たな知見となることも多いという
「そもそも企業とどうリレーションをつくるのか」など、企業運営では初歩的なことも投資先の団体では、新たな知見となることも多いという

1年が終わった段階で再投資か否かが判断されるが、多くは2年目も投資・協働の関係が続く。また、2年間の投資・協働を終えても、関係が途切れることは少なく、最近はSVP東京が投資・協働先の株主になるというレアケースも生まれたという。

「上場を目指さないソーシャルベンチャーに、ベンチャーキャピタルはお金を出したがりません。我々が有志からお金を集め投資していくというモデルは、“お金の流れ”を変えていくという点でも世のなかに一石を投じていると思っています」(岡本さん)

しかし、最たる変化は“パートナー自身の行動変容”だ。あるパートナーは、SVP東京の活動を通し、今度は自らが勤める企業内に社内稟議を通し、“社内版SVP”のモデルを実現し、浸透させているという。

「SVPは大いなるインキュベーター。ソーシャルベンチャー、パートナーの双方がいろいろなことに気づいて“共成長”することがSVPモデル最大の特徴なのだと思います」(岡本さん)

支援先団体と、そのパートナー双方が共成長する「SVPモデル」。出資だけで完結しない、その支援方法のどういった部分に個人であるパートナーは惹かれるのだろうか。そしてパートナーの働き方にどう作用するのだろうか。後編では、パートナーが感じる“SVPモデル”での成長ポイントについて、2名のパートナーから伺う。

<関連リンク>
特定非営利活動法人ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京

“本気のコミュニティー”が前のめりな支援を生む──SVP東京パートナーによる投資・協働(後編)へ続く


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