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“本気のコミュニティー”が前のめりな支援を生む──SVP東京パートナーによる投資・協働(後編)

2016年04月15日



“本気のコミュニティー”が前のめりな支援を生む──SVP東京パートナーによる投資・協働(後編) | あしたのコミュニティーラボ
投資・協働の“伴走者”として、社会起業家に自らの専門性を提供するSVP東京のパートナー。一般的な投資と違い、彼らはわかりやすい見返りを得られるわけではない。では、どのような思いでSVP東京の活動に参画しているのか。ともにパートナーでもあるSVP東京代表理事・岡本拓也さん、同理事・臼井清さんに引き続き話を伺った。前後編の後編。

専門性を社会に還元させる “ベンチャー・フィランソロピー”の可能性 ──SVP東京パートナーによる投資・協働(前編)

バックパッカー、会計士、企業再生を経てSVPへ

「人のマインドセットが変わっていけば、社会に大きなインパクトが生まれます。最近はみんながそうしたマインドを持つにはどうしたらよいか常々考えていて、SVP東京を大きくしていくことより、SVP的なモデルの数を全国に増やし、熱を持ったコミュニティーをたくさん生み出していくことが先決だと考えています」

SVPモデルが全国に、そして世界に広がっていくことに大いなる期待を寄せているSVP東京・代表理事の岡本拓也さんは、自身もSVP東京のパートナーとして活動している。

「1年で10万円。旅行にだっていけるし、月1~2回の飲み代にもなる金額ですよね」(岡本さん)

“10万円”とはパートナーの出資金(年会費)のこと。身銭を切ってでもSVP東京に参加したい、そんなパートナーが100人以上も存在しているのはなぜか。

1977年生まれの岡本さんは大学時代、バックパッカーとして世界中を旅し、その過程でマイクロファイナンス(編集部注:小規模金融。貧しい人々に小口の融資などを行う金融サービス)と出会った。大学卒業後は公認会計士試験に合格。監査法人で働いた後、コンサルティング会社に転職し、企業再生業務も経験した。

岡本さん

「企業再生は意義のある仕事でしたが、どこかで『あれ? なんのために働いているんだっけ』 と思う瞬間がありました。自分の起きている時間のうちのいちばんいい時間を、仕事に使っている。自分の人生このままでいいのか──」

そんなことを考えていた30歳のとき、岡本さんはSVP東京に出会った。友だちに誘われて出向いたSVP東京のカンファレンス。会場は多くの来場者で埋まっていたため、たまたま最前列で聴講したことがその後の人生に大きなきっかけをもたらした。

「当時は悩んでいたこともあって、講演のすべてが『これ、自分に言っているのかな』と思いました。最前列に座っていたのでなおのこと。マイクロファイナンスに出会ったことから会計士を目指した当時の気持ちも思い出して、SVPモデルなら仕事の時間外でコミットできると思い、すぐに応募しました」

偶然が重なってパートナーへ

一方、SVP東京・理事の臼井清さんは、SVP東京に参画した経緯について「僕の場合はちょっと裏があったんです(笑)」。

その当時、大手メーカーで新規事業開拓の仕事に従事していた臼井さんは、社内で新規事業の企画立案を求められたものの“ネタ枯れ”の状態だった。そこでエッジの立ったトピックを探すため、ソーシャルビジネス関連のイベントへ。そこで出会った人に話を聞いていると、その人はたまたまSVP東京のパートナーだった。

「数日後、別のセミナーで隣り合わせになった方もSVP東京のパートナーでした(笑)。みなさんとてもおもしろい発想をされる方だったので、これは一度行っておかないとマズイな、とSVP東京のパートナー募集説明会に行ったのをきっかけに、参画するようになりました」

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かねてよりBOPビジネス(途上国の低所得層(=Base of the Economic Pyramid)に有益な製品・サービスを提供するビジネス)に関心を持っていたこともあり、特定非営利活動法人クロスフィールズの支援チームのリーダーになった。同社は、新興国のNPOなどに日本企業の社員を赴任させ、本業のスキルを活かして社会課題の解決に取り組ませる「留職プログラム」を展開している。同法人の支援チームリーダーになってからは、日中は会社に行き、週末と平日夕方・夜をSVPの活動に充てる日が続いた。

現在、臼井さんはその当時勤めていた大手メーカーを退職し、自ら起業した合同会社志事創業社の代表を勤めている。

「企業のなかでやる仕事と違い、社会的事業はリソースを探してきて、組み合わせることから考えます。SVP東京のパートナーの経験から、たとえリソースを自分で持っていなくても巻き込むことさえできれば、やりたいことができちゃうとわかった。これも社会起業家、特にクロスフィールズ代表理事の小沼大地さんたちの影響でしょう」

ここには“本気のコミュニティー”があるから

大手メーカーに勤めていた臼井さんだからこそ、聞いてみたいことがあった。本業に専念しながらも、企業のなかでSVPモデル的なことに携わることはできないものなのか。

臼井さんは「個人的に思うことは……」と前置きしたうえで、企業活動の今と昔を比較する。
岡本さん(写真左)と臼井さん(写真右)は、一般企業では上司と部下ほどの年齢差。取材中も非常にフランクに意見を交換していた
岡本さん(写真左)と臼井さん(写真右)は、一般企業では上司と部下ほどの年齢差。取材中も非常にフランクに意見を交換していた

かつての企業活動において、社会的価値と経済的価値は一緒にまわっていて、「社会的価値があるから経済的価値がある」というのが本来の姿だった。しかし現在は、特に大企業で効率性が追及され続け、経済的価値だけを追求せざるを得なくなっている。儲かることをするときは経済的価値を突き詰めて、尊いことをするときは社会的価値を突きつめる──。そんな線引きがあるのが今の企業なのではないか、と。
パートナーが集まるミーティングの様子(写真提供:SVP東京)
パートナーが集まるミーティングの様子(写真提供:SVP東京)

「そうなると企業は経済的価値が生まれないものに手が出しにくいものです。社会的価値をそのまま企業の新しい働き方に入れようとしても、ふつうの企業なら入れられない。だからまだまだ難しい面があるのでしょう。しかし現実的に、少しずつでも企業がソーシャルベンチャーに関心を寄せる事例は生まれてきているから、まったく不可能なことではないと思っています」(臼井さん)

では、臼井さんがSVP東京に参画する理由は何か?

「本気で向き合うコミュニティーがおもしろいから、それに尽きます。本当は企業のなかにそれがあればいいのだけれど、なかなかそうもいかないでしょう。今期の目標はこのくらいといわれても、それを達成すれば給料上がるのか、出世するのか……。そんなことを考えていては本気にはなれません。SVP東京は投資協働先の選考会議1つとっても、投資・協働候補先はもちろん、パートナー間でも投資・協働が決定するまで遠慮することなく言い合っている。こういうコミュニティーはなかなかあるものではありません」

その答えは「本業をしながら企業のなかで第2の道を選択する」ことに対するヒントのようにも思えた。

帰属する企業に軸足を置くのではなく、自らが真摯に取り組めることに軸足を置く。そうすればおのずと共感する人物が現れ、やがて企業のなかにも“本気のコミュニティー”が見つかるのかもしれない。

<関連リンク>
特定非営利活動法人ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京

専門性を社会に還元させる “ベンチャー・フィランソロピー”の可能性 ──SVP東京パートナーによる投資・協働(前編)


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