Discussions
あしたラボのイベントとその様子をご紹介します。

「人間性」の解放が、企業内イノベーションを引き起こす──若新雄純さんと考えた「新しい働き方」の可能性

2016年04月22日



「人間性」の解放が、企業内イノベーションを引き起こす──若新雄純さんと考えた「新しい働き方」の可能性 | あしたのコミュニティーラボ
社内外との共創・協働で課題を解決する「オープンイノベーション」が注目を集めています。果たして、企業がオープンイノベーションを起こすには何が必要で、どんなことに取り組んでいけばよいのでしょうか。あしたのコミュニティーラボでは、そのヒントは企業人の「働き方」にあると考え、「ゆるめることが企業内イノベーションにつながる?──オープンイノベーションと新しい働き方のヒントを見つけよう」と題したイベントを開催。企業のなかで、各々が仕事を楽しみながら自らイノベーションを起こすには。そのヒントを紹介します。

イベントのモデレーターは、福井県鯖江市の「JK課」「ゆるい移住」などで知られる若新雄純さん。イベントではこのほか3名のパネラー(後述)を招き、実践者同士の対話を重ねていきました。

JK課・ゆるい移住プロデューサー 若新雄純さん
JK課・ゆるい移住プロデューサー 若新雄純さん

優等生だけではない“いろんな女子高生”を市役所に招き、まちでやりたいことを考えてもらう。行政側も大人の価値観で細かい計画を立てず、何をするかは基本的にJKたちに任せる──。間口を広め、やることも定めない“ゆるめる”という切り口で「JK課」をプロデュースしている若新雄純さんは、まさにオープンイノベーションの実践者です。

理屈で考えてしまうと、具体的な実践につながらない

「イノベーションという概念を難しく理屈だけで考えてしまうと、具体的な実践につながらないと思います。今日のパネラーは実践者。みなさんの実践のなかから、乗り越えられない壁を柔軟な発想でどう乗り越えたか、お聞きしていきたいと思います」

左から若新雄純さん、各務亮さん、三浦英雄さん、小口淳さん
左から若新雄純さん、各務亮さん、三浦英雄さん、小口淳さん

株式会社電通・各務(かがみ)亮さん、ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社・三浦英雄さん、富士通株式会社・小口淳さんの3名が今回のパネラー。それぞれが社内で自由な働き方をすることによってイノベーションの芽を育ててきた人物です。

株式会社電通・各務(かがみ)亮さん、ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社・三浦英雄さん、富士通株式会社・小口淳さん

オープンイノベーションの入口は“下心”でいい

電通・関西支社京都営業局プロデューサー 各務亮さん
株式会社電通 関西支社 京都営業局 プロデューサー 各務亮さん

電通・関西支社京都営業局プロデューサーの各務さんは、今から4年前、海外転勤からの帰国後、京都に拠点を移し、京都の伝統工芸を海外に発信するプロジェクト「GO ON(ゴオン)」を始動させました。「最初は京都の“若旦那”たちと仲良くなりたいという下心からはじまったプロジェクト」という各務さんに、若新さんが質問をぶつけます。

若新 実はその下心って、スタート地点としては結構大事だと思うんです。ただの下心や好奇心が、続けて行くなかで違うものに切り替わる瞬間があったと思うのですが、その感情が昇華されることを感じましたか?

各務 最初は京都の老舗に飛び込んで若旦那衆から話を聞いてまわり、京都の伝統産業の市場規模が下がっていることを知りました。これをどうにかしたいと思いましたが、それほど会社の売上にならないし、会社にも褒められない。でも自分のスキルを活かせることがうれしかったんです。プロジェクトがきっかけで、若い職人さんたちが工房に入ってくるようになり、『これは下心だけじゃあかんかな』と次第に熱を帯びていきましたね。

若新 近づく意義を見出してからじゃないと近づけない人が多いんです。各務さんのように実際の関わりがはじまれば後から意義が見いだせるもので、オープンイノベーションの入口では素直な感情が大事なのだと思います。

“自由研究”も外発的動機じゃつまらない

ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社イノベーションセンター 三浦英雄さん
ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社イノベーションセンター 三浦英雄さん

ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社イノベーションセンターの三浦英雄さんは、想いを持った企業内個人が、既存の枠組みや組織の境界を越え、社会の課題を解決する事業を共創する、そんな「越境リーダーシッププロジェクト」に取り組んでいます。

若新 “組織”のなかに“自分”があると捉えている人は多いですよね。越境リーダーシッププロジェクトの活動のなかで、三浦さんは組織と個人の距離をうまく保つコツをどんなふうに感じますか?

三浦 会社の仕事はたいてい外発的動機からはじまりますよね。仕事の型に自分を合わせることも大事だけど、私は、自分がどこに向かったら燃えられるか、というのも大事にしています。しかしそれを自分自身に問いかけたときに、おそらく矛盾が起こる。小学校のときの“自由研究”みたいなもので、無理矢理にでも研究対象を探せば、自分がやりたくないものをやってしまいがちです。

若新 なるほど。たしかに自由研究は、2学期の国語や算数の成績に関係ない。あれがいいんですよね(笑)。会社でもイノベーションというと、人は外の評価に目を向けたがります。だから自分の踏み出す一歩と結びつかない。自分の具体的なアクションにつなげるには、そうした矛盾や違和感がヒントになるのかもしれません。

いいものをつくりたいチームは自走する

富士通株式会社・イノベーティブソリューション事業本部情報統合システム事業部 小口淳さん
富士通株式会社・イノベーティブソリューション事業本部情報統合システム事業部 小口淳さん

富士通株式会社・イノベーティブソリューション事業本部情報統合システム事業部の小口淳さんは、プロ野球の試合映像から、1球単位で“対戦シーン”を検索できるアプリケーションを開発しました。現在は富士通の提供するサービスとして、国内外の球団に向けて売り込んでいます。

開発チームをつくるにあたり小口さんは、社外のスモールオフィスに拠点を設置。富士通グループメンバーだけでなく社外のメンバーも集め、このプロジェクトに挑んでいます。

小口 とにかくいいプロダクトをつくって、そのよさで勝負するチームで仕事をしたいという想いでチームを組み立てました。

若新 いいものをつくりたいという想いが合っていれば、上流から流れる役割分担をしなくても自然と分担ができますよね。しかしそれが組織のなかでは出しづらい……。

小口 はい。我々の開発チームはつくるべきものを理解していて、メンバー自らタスクを挙げます。その活性化のために、チーム内でのコミュニケーションもこれまでのメールなどではなく、チャットベースのツールですべて行っているんです。

若新 鯖江市も、職場でのFacebookやLINEの使用に関してゆるいんです。他の自治体ではこうはいかないようです。JK課のJKからも、お役所にありがちなフォーマットに則ったコミュニケーションではなく、日常的な言葉や素直な感情による会話から、アイデアがぽんとでてくる。しょうもないことのように思えて、実は重要ですよね。

まずは「自分が何にワクワクするのか」から

参画する動機、組織との関係性、チームづくりのルール。それぞれが“ゆるめる”ことを実践する3名のパネラーたちでした。ここからは、来場者が“ゆるめる”を実践する番です。会場では、若新さんによる簡単なワークショップが行われました。

若新さんによるワークショップ

ここでは、来場者のそれぞれが「仕事で実現したいこと」を言葉にして、紙に表していきます。ただし、「小学生6年生にもわかる言葉で書く」のが若新さんからのお題です。

「小学生がわからない言葉なんて、実はインチキ。オープンイノベーションにしても、よくよく考えれば『オープンって何?』『イノベーションって何?』となるはずです。言葉に遊ばれた議論からは何も生まれません」(若新さん)

参加者はグループで話し合いながら、それぞれが紙に書いた言葉を共有しました。そこには、悩んだ末に「楽しい」「笑える」「ワクワクする」などの語彙が多く見受けられました。

「議論のなかでも、感情に紐づく言葉が多いですよね。今までの企業の取り組みは、人間の感情というよりも、社会の仕組みや客観的な成果に寄りそっていることが多かった。人間性というのは、非常にあいまいでややこしいものですから。でも『楽しいことがやりたい』という想いは決して恥ずかしいことでなく、感情的な言葉でどんどんしゃべっていけばいいと思います。まずは『自分が何にワクワクするのか』から。シンプルだけど人間としては当たり前のことで、そういうところから他者の共感を生んでいけば、イノベーションの種が生まれていくかもしれません」(若新さん)

若新さん

企業や社会がシステム化していけば、個人のありようや人間性は見失われがちになるものです。今回のイベントは、あらためて、個人に根ざした「感情」や「想い」といった、一人ひとりの人間性を解放することの重要さに気づくことができるものだったのではないでしょうか。すべての人が自分の感覚に素直になり、それをぶつけ合ったり共有することができれば、きっと、オープンイノベーションはすでにそこにあるものだ、といえるのかもしれません。

集合写真


いいね!を押して
Facebookページをフォロー

あしたラボの最新情報をお届けします。

Twitterであしたラボ(@ashita_lab)をフォローしよう!

皆さんの感想をお聞かせください!





  • facebook
  •  twitter
  • RSS

Copyright 2018 あしたのコミュニティーラボ