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コミュニティー経済をベースに横浜の地域課題を解決する──横浜市・リビングラボ計画(1)

2016年05月02日



コミュニティー経済をベースに横浜の地域課題を解決する──横浜市・リビングラボ計画(1) | あしたのコミュニティーラボ
地域が抱える課題を解決する──。近年では、行政だけでは解決できない問題を、民間企業や地域住民と一緒に取り組む事例が増えている。今回お伝えするのは、地域課題解決のためのICTプラットフォーム「LOCAL GOOD YOKOHAMA」と、地域での多様な主体の対話と共創によって新たな事業やビジネスを創発するプラットフォーム「リビングラボ」を舞台に地域課題に向き合おうとしている横浜市の取り組みだ。横浜市の社会課題への取り組みを3回連続でお届けする。(TOP画像はリビングラボ構想キックオフに際して行われたフューチャーセッションでの集合写真)

官・民の隙間に落ちてしまう人を支える地域プラットフォームとは──横浜市・リビングラボ計画(2)
“試行錯誤の場”としての地域をどうまとめるか──横浜市・リビングラボ計画(3)

新興市街地で耕されていた“市民自治”の土壌

1960~70年代に東京のベッドタウンとして発展した神奈川県横浜市は、東京23区に次ぐ人口密集地区であり、372万人強が暮らす巨大な都市。そこには、市民の自主的な社会活動を興してきた歴史がある。

横浜市政策局・関口昌幸さんによると、1960年代から70年代の経済成長の時代には、横浜でもかつて農村だった郊外部が急速に宅地開発された結果、学校や生活道路、下水道、保育所など社会資本のインフラ整備が追いつかず、それらを行政に要望・要求する住民運動が各地で勃発した。同時に自らのまちを自らの手で創ろうとする地域住民による自治活動も活発だったという。

90年代以降の低成長の時代になると、市民と行政が手を携え社会課題に取り組むパートナーシップ型の地域活動も芽生えてくる。2000年代後半には企業・大学・NPOの社会貢献活動の窓口「共創フロント」が、公民連携のハブ機能として設立された。

市では2012年から、データとICTの活用によって公民連携をさらに推し進め社会課題の解決と経済の活性化を目指すオープンデータやオープンイノベーションの取組を進めている。それが可能になるのも、地域レベルでの自治会活動から地元企業の社会貢献活動まで、数十年におよぶ地道な“市民自治と協働”の土壌が横浜にあればこそだという。
横浜市 政策局政策部政策課 担当係長 関口昌幸さん
横浜市 政策局政策部政策課 担当係長 関口昌幸さん

では、横浜市が抱える課題とは何か。「横浜市は高度経済成長期期以降、人口が膨張し372万人の大都市となりましたが、人口は今がピーク」と関口さんは語る。

「2019年頃には人口減少局面に入る予測です。また、2025年に高齢者が100万人に達すると推計され、そのうち団塊の世代を含む59万人が75歳以上の後期高齢者となります」(関口さん)。つまり、急速に超高齢化が進行しているのだ。
横浜市の人口構造
横浜市の人口構造をまとめたグラフ(提供:横浜市政策局)

また、少子化によって生産年齢人口はすでに90年代末から減少しており、30〜40歳代の子育て働き盛り世代は2010年の116万人から、2025年には91万人に減る見通しだ。都心部の再開発が進んで新築マンションが建ち、2000年代はじめから、かつてとは逆に東京への人口流出傾向が目立ってきた。共働きの夫婦が増え、“職住接近”のニーズが高いことがその背景にある。

「しかも晩婚化で出産年齢の高い母親の割合が高くなっています。すると子育てと親の介護が同時進行する“ダブルケア”の課題が切実です。待機児童や介護離職はすでに大きな社会問題となっています。働き続けることとケアをどう両立させていけばよいのか。こうした困難な課題を解決するには、企業、NPO、大学・研究機関、市民、行政など多様な主体がオープンな場で情報を共有して知恵を出し合い、イノベーションを起こす必要があるのです」(関口さん)

民間の資源と知恵がコミュニティー経済を回す源泉

横浜の地域課題を解決するオープンイノベーションのためのICTプラットフォームとして、2014年6月からウェブサイト「LOCAL GOOD YOKOHAMA」が稼動している。運営はNPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボとアクセンチュア株式会社。アクセンチュアが資金と、プロボノの形でノウハウを提供している。Webサイト「ヨコハマ経済新聞」などを運営するメディア系のNPOと大手コンサルティングファームが連携して設計、構築、運用する民間主導のプラットフォームだ。横浜市はオープンデータの提供などでサポートする。
NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ 代表理事 杉浦裕樹さん
NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ 代表理事 杉浦裕樹さん

「税金に頼らず民間の地域資源をいかに効果的に活用し、“ニーズとシーズ”をマッチングさせるか。横浜市政策局が掲げた“コミュニティー経済”というキーワードを元にアクセンチュアさんを招いて2012年に勉強会を開いたのがはじまりでした」と横浜コミュニティデザイン・ラボ代表理事の杉浦裕樹さんは振り返る。

「マッチングのしくみとして立ち上げたのがクラウドファンディング。ただし、単に資金調達機能を提供するだけでなく、横浜市民1人ひとりが自分のもつスキルやノウハウを活かし、さまざまな活動を応援する基盤として使えたり、自ら行動を起こしたりするきっかけになるICTプラットフォームにしました」

Webサイトでは、スマートフォンアプリなどを通じて市民からの「課題投稿」を受け付け、それを地域ごとにマッピングして見える化したり、地域課題のアーカイブと先駆的な取り組み紹介のほか、スキルの種類ごとに「所有者」と「必要としている団体」が登録してマッチングを図れるようになっている。

クラウドファンディングについては、進行中のプロジェクトを含め13件すべて目標金額を上回る資金調達に成功した。たとえば、「知的障害者が就労する地産地消のレストランに地域住民が集える庭を整備するプロジェクト」や「ダブルケア当事者に寄り添うサポーター研修プログラムと当事者の声をもとにしたハンドブックづくりで支え合いネットワークを築くプロジェクト」。さらに「海に触れる機会が失われている福島の子どもたちを横浜に招き、環境学習やスポーツを楽しんでもらう2泊3日のキャンプを開催するプロジェクト」など、多様なプロジェクトが並ぶ。

こうしてみるとわかるように、今の複雑な社会課題に取り組もうとすると、異なる領域を横断せざるを得ないため、これまでの行政の枠組みには収まらず、従来型の公的支援策の隙間に落ちてしまうケースが多い。だからこそ民間の資源と知恵が求められる。

効果的な資金調達プレゼンからプロジェクト実現に至るまでLOCAL GOOD YOKOHAMAが情報発信ノウハウを中心に支援し強力に伴走する。それが実績を上げている理由の1つだ。また「地域型クラウドファンディングの利点はリアルの場で会いやすいところ」と杉浦さんは指摘する。「“ローカルグッドカフェ”というイベントを企画し、案件ごとに応援してくれそうな人や連携したら良さそうな人をキャスティングし、支援の輪を広げる工夫をしています」。

地域の課題に対して、応援や直接触れやすい環境づくりを行っているLOCAL GOOD YOKOHAMA。その課題当事者はどのような思いを持ち、課題に取り組んでいるのだろうか。次回はその当事者とプラットフォーム側、それぞれの思いを聞く。

官・民の隙間に落ちてしまう人を支える地域プラットフォームとは──横浜市・リビングラボ計画(2)
“試行錯誤の場”としての地域をどうまとめるか──横浜市・リビングラボ計画(3)

<関連リンク>
横浜市
LOCAL GOOD YOKOHAMA
NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ


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