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場でイノベーションを起こすために必要なのは“創造性” ──富士通フォーラム2016イベントレポート

2016年06月23日



場でイノベーションを起こすために必要なのは“創造性” ──富士通フォーラム2016イベントレポート | あしたのコミュニティーラボ
富士通フォーラム2016(2016年5月20日)で開催されたトークセッション「イノベーションが生まれる場(BA)をどうつくるか」。企業や団体などが、場づくり、コミュニティーづくりに情熱をむけているなか、その場を本当に価値のあるものにするために必要な「人」に焦点をあて、4名の実践者たちがディスカッションを行いました。

今回は、グローバルな価値を創造できる人材を育成する東京大学「i.school」のエグゼクティブ・ディレクターの堀井秀之さん、米Techshopと富士通が提携して展開する会員制DIY工房「テックショップジャパン」株式会社 代表取締役社長の有坂庄一さん、あしたのコミュニティーラボ柴崎辰彦代表をパネリストに迎え、イノベーションを起こす場づくりについて考えました。モデレーターは株式会社QUANTUM代表取締役社長兼CEOの高松充さんです。

今まで交わらなかったもの同士が交わる

さまざまな企業で共創やオープンイノベーションに向けた取り組みが行われていますが、今回の登壇者はすべてその「場づくり」の責任者として活動しています。まずは、めいめいの“場”について説明しました。

モデレーターの高松充さんが実践するのは「今まで交わらなかったもの同士が交わる」ことでオープンイノベーションを起こすための場「QUANTUM」。大企業のノウハウとスタートアップのパワーを組み合わせた事業開発支援や、パートナーの技術や顧客基盤を使った新規事業の立ち上げ、自社事業としてIoTプロダクトの開発などを手がけています。

誰もがアイデアを形にできる場を提供

続いてTechshopを紹介したのは有坂庄一さん。Techshopは米国生まれの会員制DIY工房です。現在アメリカに8カ所、パリ、アブダビ、東京にあり、東京は4月に六本木のアーク森ビルにオープンしたばかり。モバイル端末決裁サービスのSquareなど、100件以上の新ビジネスがこの“オープンイノベーションの場”から生まれ7000億ドル企業にまで成長しました。フォードやGEなど有力大企業も活用しています。
QUANTUMの高松充さん(写真左)とテックショップジャパンの有坂庄一さん(写真右)
QUANTUMの高松充さん(写真左)とテックショップジャパンの有坂庄一さん(写真右)

米Techshopの実績では、会員数が500人を超えると互いにコラボして“共創”がはじまるという結果もあると有坂さん。テックショップジャパンでは個人も企業も垣根なく、特定の領域にこだわらず一様に支援します。多くの人がアイデアを形にできるようになれば、世界を変えるような画期的な製品が生まれやすくなる。そうした場を提供していくことがわれわれのチャレンジ、と有坂さんは意気込みます。

モチベーションを育むイノベーション教育

i.schoolエグゼクティブ・ディレクターの堀井秀之さんは、イノベーション人材を育成する場「i.school」を2009年に立ち上げました。

グローバルな価値を創造できる人材を育てるのがねらいで、グループによるワークショップ型の教育を実践しています。単位、学位の認定はありませんが、自分の能力を高めたい、新しいものを生み出す力をつけたいと望む志の高い優秀な学生たちが参加し、卒業後は多様な分野で活躍しています。
i.schoolエグゼクティブ・ディレクターの堀井秀之さん
i.schoolエグゼクティブ・ディレクターの堀井秀之さん

昨年の「東大イノベーションサマープログラム」には米バークレー、英オックスフォード、米ハーバードなど海外の有名大学からも参加者が集まりました。岩手県遠野市の高校生と一緒にワークショップし、一緒に寝泊まりすると、最後は英語でスキット(寸劇)をするくらいまでに成長し、本人は自分の、親御さんは子どもの可能性に目覚めたと話します。大学生も「高校生が短期間でこんなに変わるとは」と驚き、「これなら社会も変えられるかもしれない」と勇気づけられたそうです。

イノベーション教育はモチベーションを育てる場になっている、と堀井さん。高校生や中学生、小学生への教育も支援しながら、地元の商工会、銀行、自治体などと連携して、地域を支える人材を育てる取り組みを継続することで、ゆくゆくは官僚・企業人がメンターとして支援し、大学生がインターンとして参画する社会イノベーションセンターを設立したい、と堀井さんは構想しています。

求められる、新ビジネスの種をまくエンジニア

柴崎辰彦代表が戦略企画統括部の統括部長を務める富士通のグローバルサービスインテグレーション部門は、システムエンジニア(SE)の集団。柴崎さんの思い描く新しいSE像は、コラボレーションを生み出す“synergy engineer”と、新しいビジネスの種をまく“seed engineer”。
あしたのコミュニティーラボ代表 柴崎辰彦
あしたのコミュニティーラボ 柴崎辰彦代表

そんな新時代のSE像“SE4.0”を支えるプラットフォームとして、社内外でWebメディアを運営し、社外のパートナーとのコラボレーションの窓口にしています。最新テクノロジーをリサーチする「Digital Innovation Lab」、ソーシャルイノベーションの最新動向を伝える「あしたのコミュニティーラボ」。これらのメディアに加え、ハッカソンやアイデアソンも実施し、2015年は延べ1,500人の社員が参加しました。業種別の“サイロ”に閉じこもりがちなSEが化学反応を起こし、年齢を問わず目の輝きが増してきた、と柴崎さん。さらに2016年5月、同社のSEの拠点である蒲田ソリューションスクエアに「FUJITSU Knowledge Integration Base PLY」をオープンさせ、リアルな場で顧客との共創を加速します。

名刺交換ではないコンテキストからコラボレーションが生まれる

ひととおりの紹介が終わり、ここからトークはスタートします。テーマは「“場”の成果を上げるために必要なものは何か」。

テックショップジャパンで進む企業間のコラボレーションのきっかけは名刺交換ではありません。ものづくりという同じ目的において互いにシンパシーを感じ、そこから自然に交流が生まれています。これが広がればビジネス成果が出るに違いない、と有坂さんは期待をかけます。

堀井さんによれば、i.schoolの修了生はさまざまな分野で活躍していますが、みんなどこかでつながっているといいます。i.schoolでは、もともとスキルの高い学生が多い“東大生ならでは”の方法として、まずスキルセットから入り、やりながらマインドセットができあがり、そこからモチベーションが育つようです。だからこそ、自分の進んだ分野で新しいことに取り組む意欲が強くなります。

テックショップジャパンやi.schoolといったイノベーティブな場において成果となるのは、新しい価値が生まれること。そこに必要なのは情熱や創造性です。それの芽をどう見つけ、育てることができるのか。トークは続きます。

創造性は後天的に身につけられる

「場に必要不可欠な人、その創造性はどのような形で育む必要があるのか」、会場から質問が上がりました。

1950年代から創造性に関する研究は蓄積があり、創造性は学ぶことが可能で、なおかつトレーニングすれば高まることも学問的に疑問の余地がない、と明言するのは堀井さん。どんなプロセスでワークショップをやればアイデアの出る効率性が高まるかも比較的わかってきた、といいます。もう1つ重要なのは評価能力の習得。これは実績を積み重ねて研究する必要があるとのこと。
イベントでは、富士通デザインのタムラカイさんによってグラフィックレコーディングが行われ、ディスカッション内容がリアルタイムに記録されていった
イベントでは、富士通デザインのタムラカイさんによってグラフィックレコーディングが行われ、ディスカッション内容がリアルタイムに記録されていった

有坂さんによれば、“創造”に必要なのは“想像”。たとえば「この形が丸ではなく、四角だったらどうだろう」などと、何を見ても今とは違うありさまを想像してみる習慣をつければ、それが創造性のトレーニングになります。

「好きこそものの上手なれ」のことわざ通り、アイデアを生み出すことが好きで楽しくなければイノベーションは起こせない、と語るのは柴崎さん。アイデアを生み出すこと自体ではなく、アイデアを形にして何事かを成し遂げることが目的です。だからこそ場が大事、と高松さんは指摘しました。

イノベーションを起こすには、「思い」と「行動」

トークセッションも終盤にさしかかり、誰もが知りたい質問が高松さんからテーマとして挙げられました。それは、「何をすればイノベーションが起きるのか」。最前線で取り組んできた柴崎さん、有坂さん、堀井さんそれぞれから、自身の視点で思い、アイデアが語られます。

「多面的に進める必要性」を柴崎さんは痛感しています。共創型ビジネスは挑戦と失敗を繰り返さなければ成果が出ません。時間がかかります。アイデアソンやハッカソンのノウハウを公開し、第三者の評価を社内にフィードバックするなど、外部を巻き込んで動かす努力をするのが、イノベーションの取り組みを加速させる1つのやり方、と柴崎さんは考えています。

有坂さんは「すべてのアイデアは試してみる価値がある」という米Techshopスタッフの言葉を紹介。自分のため、誰かのためにこんなものがあったらいいのでは? 何とかそれを実現したい、という強い想いをもった人たちが3人集まると場が形成され、そこからすべてがはじまります。

堀井さんはi.schoolをはじめた頃に、日本の課題は大きく2つに整理される、と考えていました。1つ目は経常収支を黒字に維持すること。2つ目は少子高齢化で地域がどう生き残るか。1つ目の課題解決に失敗すると2つ目の課題も解決できない。しかし7年経ち、2つの課題は1つの課題に収斂することに気づきました。日本は課題解決先進国にならなければなりません。社会課題をビジネスで解決する場をつくるのがこれからの日本には必要、と堀井さんは強調しました。
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人づくりも場づくりと同様非常に重要なファクターと高松さんはまとめた

セッションで得られたヒントを高松さんは2つのキーワードに集約しました。それは「想い」と「動く」。課題を解決したい。夢を実現したい。強い想いをもって「場」に飛び込むことが大切です。そして考えるだけでなく、とにかくやってみる。新しい挑戦は9割方失敗するもの。失敗を許される土壌も企業のなかで耕されてきました。目指すべきはイノベーションの常態化。その第一歩が場づくりであり、場への参加なのです。

そして、イノベーションの主役はあくまでも人。場づくりだけでなく人づくりも大切、と高松さんはまとめました。


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