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多様なバックグラウンドにしか、イノベーションの火種はない──exiii Inc. CEO 近藤玄大さんに聞く(後編)

2016年10月06日



多様なバックグラウンドにしか、イノベーションの火種はない──exiii Inc. CEO 近藤玄大さんに聞く(後編) | あしたのコミュニティーラボ
SF映画のサイボーグのようにメカニカルなデザインの電動義手。従来の義手のイメージを一新した「Handiii」はデジタルファブリケーションの活用によって劇的なコストダウンも成し遂げた。個人のニーズに応じたカスタマイズが可能で、マイナスをプラスに転化できる身体拡張ツールとして電動義手を普及させたい──。この思いをどのように広げていったのか、大企業とベンチャー双方の経験をもつexiii Inc. CEOの近藤玄大さんにソーシャルイノベーションを生み出し、持続させる方策について聞いた。

誰もが振り向く電動義手のはじまりは、「ユーザー視点」への気づきから──exiii Inc. CEO 近藤玄大さんに聞く(前編)はこちら

個性的な電動義手の普及のためデータをオープンソース化

──最新版の「HACKberry」モデルの全設計データをオープンソースにして、Web上で公開したのはなぜですか。

近藤 最終的にぼくらがつくりたい義手は、1人ひとりの個性を投影させた「手」なんです。協力してくれているユーザーの1人は女性の歌手で、日常生活は片手で何でもできるのですが、唯一、ライブでジェスチャーができないというのが彼女の悩みでした。

マイクを持って歌うことはできても、手を振ったり客席を指したりできないと一体感が生まれない。それを聞いたときに、義手は画一的にデザインできないなと思いました。
exiii Inc. CEO 近藤玄大さん
exiii Inc. CEO 近藤玄大さん

医療・福祉の範囲で日常生活を送るためと考えたら、ある程度画一的につくれるのですが、ぼくらがつくりたいのはその先、それぞれの人たちが社会とつながるときに役立つ義手なので、求められる機能もデザインも千差万別です。ならば、こちらですべて決めてしまうよりも、土台だけ用意して、3Dプリンターさえあれば世界中どこでも自分なりにカスタマイズしてつくれるようにしたほうがいいだろうと考えました。

それが最大の理由ですが、商品化したところでビジネスにしにくいことと、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(著作権を保持したまま一定条件を付けて作品を自由に流通できるWeb上のルール)を使ったオープンソースハードウェアのトレンドが後押ししたことも事実です。

──無料で公開するとなると、収入面が不安になりますね。会社としてはどのようにビジネスモデルを組み立てているのですか。

近藤 結果論からいうと、今のところスポンサードや助成金が大きいです。コンテストで2位に入賞した「ジェームズ・ダイソン・アワード」のプロモーションをその後もお手伝いすることでスポンサーになっていただいたのが1点。
シャープなデザインが特徴の「Handiii」
シャープなデザインが特徴の「Handiii」

さらに、2015年にコンテスト「グーグル・インパクト・チャレンジ」で2500万円の助成金を受けました。それはexiiiとしてではなく、ぼくが関わるNPO法人「Mission ARM Japan」として。これは、上肢にさまざまなハンデをもつ当事者の方々を中心に、研究者や開発者、医療関係者、義肢装具士などがごちゃ混ぜで交流するコミュニティーです。出会いの場、想いや情報の共有の場を提供して橋渡し役を務めたいと考えており、最近はこちらの活動にかなり力を入れています。

──オープンソース化した「HACKberry」はどんな展開ですか。

近藤 ぼくらが公開したのは右手の大人用の義手データですが、ポーランドで左手の子ども用のHACKberryをつくってくれた人がいます。気がついたら映像がYouTubeに上がっていました。オープンソースのコミュニティーを通じてコラボレーションが起こっているようで、アメリカでもティーンエイジの女の子に届けたとか、ここに来て毎月のようにいろんな事例の知らせが届いています。

HACKberryを利用したvBionic

子ども用の義手は僕らもつくりたいのですが、子どもって壊すんですよ。こないだ、6歳くらいの子たち5人ぐらいにHACKberryを使ってもらったら、どうやったら折れるかと壊しにかかる(笑)。仮面ライダーとか見てるので、敵だと思う、というのは、新鮮な反応でした。

ならば、最初からレゴみたいに分解できて元に戻せる設計にすればいいわけです。義手は付け替えられるんで、スポーツや楽器演奏などシーンに特化したものがあってもいい。マイナスをプラスに変えられる義手の可能性は広いです。Mission ARM Japanの人たちとコラボしながら進めていきたいですね。

火種と可燃材をつなぎ、不燃材も可燃材に変える

──近藤さんは結果的にベンチャーを立ち上げましたが、ソニーという大企業で働いた経験もあります。その経験をもとに伺いますが、組織のなかで絶えずイノベーションを起こし続けるには、どうすればよいと思いますか。

近藤 ソニーの尊敬する先輩の言葉が印象に残っています。企業には4種類のクラスターの社員がいる、と。

「火種」、「可燃材」、「不燃材」、「消火剤」。大半の人たちはきっと可燃材なんです。自分から火種にはなれないけれど、楽しいことがあれば乗っかる。

火種になる人はそう簡単には増やせませんが、しっかり可燃材の人たちとつないだり、不燃材を可燃材に変えたり、消火剤を排除することはできると思うのです。上層部に消火剤がいても、時が経てば退場します。

──火種になる人には、どんな資質が要求されるのでしょう。

近藤 ベンチャーの社長同士でパネルディスカッションすると、それまでの人生でいろんな経験をしている人が多いんだなと気づきます。ユニークなアイデアも元をたどれば過去の経験の掛け合わせだったりする。
「新しいことを仕掛けていくつもりです」と近藤氏は話す
「新しいことを仕掛けていくつもりです」と近藤さんは話す

医療用に臓器の3D画像などを制作している高校の1つ上の先輩(株式会社サイアメント 瀬尾拡史さん)がいるのですが、彼などは10代の頃はゲームをつくったりしていて、その頃のグラフィックやプログラミングの経験と、20代になってからの医師としての経験の掛け合わせで新しい市場を開拓しています。

──やはり旺盛な好奇心が、多様な経験のベースにあるのでしょうね。

近藤 一朝一夕で生まれるわけではありませんが、一歩引いて冷静に考えたら、経験の掛け合わせで誰でも火種になれるのかな、と。ただ、それが本当に燃えていいタイミングや時代背景もあります。

ぼくもたまたま3Dプリンターが登場してデジタルファブリケーションが盛り上がった2013年のタイミングだったから挑戦できました。いま同じことをやろうとしても、古いです。

──潜在的に火種をもっている人は多いが、タイミングが大事だと。

近藤 個人単位で見ると、日本の大手メーカーで働いている方々は超優秀です。実際ぼくらの義手も、陰でソニーのエンジニアが手伝ってくれたりしたし、他のベンチャーもプロボノ的に知恵を借りているところが多い。

いったん会社の枠を外してコラボレーションの可能性を探ってみるのもいいんじゃないでしょうか。火種だけでは何も起きないので、しっかりした技術をもつ企業のなかの可燃材の人たちとつながることで着火する可能性はあると思いますし、自分自身もそれに負けないよう成長していきたいですね。

誰もが振り向く電動義手のはじまりは、「ユーザー視点」への気づきから──exiii Inc. CEO 近藤玄大さんに聞く(前編)

近藤玄大さん

近藤玄大(こんどう・げんた)

1986年大阪生まれ。2011年東京大学工学系研究科修士課程修了。在学中は筋電義手をはじめとするブレイン・マシン・インターフェイスを研究。ソニー株式会社に入社し、ロボティクス技術研究と新規事業創出に携わる。ソニー在職中より趣味活動として義手の試作に取り組み、2014年6月に山浦博志氏と小西哲哉氏とともにイクシー株式会社(exiii Inc.)を設立。筋電義手「handiii」「HACKberry」やオープンソースプロジェクトを展開している。


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