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【イベントレポート】ソーシャルイノベーションの出発点はどこにある?

2016年10月18日



【イベントレポート】ソーシャルイノベーションの出発点はどこにある? | あしたのコミュニティーラボ
ソーシャルイノベーション実現のための第1歩は、「自分を知ること」から。自分のなかに他者を引きつけるだけの強い想いを見つけることができれば、シンボリックなテーマやメッセージのもとに共感者が集まり、大きな活動の原動力になっていくのではないか。

9月13日、大手町の「TIP*S」で開催されたイベントは、そんな仮説のもと企画されました。4名の登壇者の刺激的なトークと、会場全員参加のワークショップによって、地域づくりに携わりたいと集まった参加者たちは、どんな気づきを持ち帰ったのでしょうか。

個人と組織、それぞれの胸の内にビジョン&ミッションがある

モデレーターは、日本全国を飛び回り、自治体からNPO、一般企業まで公益組織に対するコンサルティング事業を展開する株式会社PubliCo(パブリコ)CEOの長浜洋二さん。長浜さんはこの日のイントロダクションとして、社会課題解決の活動に関わる多くの団体・組織を見てきた豊富な経験から「組織・個人のそれぞれが、ビジョン&ミッションに魂を込めていないと、いざというとき歯を食いしばってがんばれない」と説きます。
株式会社PubliCo(パブリコ) CEO 長浜洋二さん
株式会社PubliCo(パブリコ) CEO 長浜洋二さん

さらに、個人と組織のビジョン&ミッションを明確に区別し、特に個人の側では「“自分のあり方に素直になれているのか”、その自問自答がソーシャルイノベーションの第1歩になる」と話しました。
個人・組織におけるビジョン&ミッションのあり方(長浜さんスライドより抜粋)
個人・組織におけるビジョン&ミッションのあり方(長浜さんスライドより抜粋)

コミュニティーデザインは「もう古い」?

「今、コミュニティーデザインという言葉を使っていろいろな地域で活動が行われていますが、私は25年前にそれを実践していました」──。そう切り出したのは、横浜市(政策局政策部政策課)の関口昌幸さんです。

関口さんが、横浜市金沢区役所に勤務し、金沢八景の地で住民協働のまちづくりを推進したのは25年前。それらの活動は、今でいうところの「コミュニティーデザイン」です。まちの魅力・課題を確認するまちあるきイベント、あるいは、地域のプロモーションイベントなども積極的に企画・運営していたと話します。
関口さんが企画・運営した住民協働の「ガリバーマップ」作成。床一面に貼り合わされた地図に住民が上がり、地域情報を描き込んでもらった
関口さんが企画・運営した住民協働の「ガリバーマップ」作成。床一面に貼り合わされた地図に住民が上がり、地域情報を描き込んでもらった

その経験をもとに、関口さんは「今の時代、これと同じようなことをやっていてはダメ」と警鐘を鳴らします。

「25年前は専業主婦がたくさんいて、高齢者も元気だった。今は共働き世代の増加、そして超高齢化により、本来ボランティアの主体になってほしい住民層が希薄化している」(関口さん)

貧困や社会的孤立も広がっていくなか、地域イベントに親と一緒に参加する子どももおのずと減っています。事実、関口さんも金沢八景の催しには地域の子どもたちを積極的に参加させ、主体的にまちづくりに参加する子どもを育てることも忘れませんでした。
横浜市 政策局政策部政策課 関口昌幸さん
横浜市 政策局政策部政策課 関口昌幸さん

地域のなかに実際にお金が巡り、雇用創出や地域経済活性化が「目に見えるかたち」になっている──。「今はそれができていないと誰も参加してくれない」と言う関口さんが「だからこそ今」と取り組むのが、共創により新たな事業・ビジネスを創発するプラットフォーム「リビングラボ」。さらに、地域課題解決のためのICTプラットフォーム「LOCAL GOOD YOKOHAMA」です。

関口さんは最後に、新たな行政の役割を総括しました。

「高齢者が参画できる商品開発プロジェクトもありますが、自分のつくった商品が売れると何よりその人の生き甲斐になる。こうした活動を上手に発信することで、協力者も集まってくるでしょう」(関口さん)

失敗、大歓迎!「私」自身がオープンソースになる

続く登壇者は、一般社団法人リベルタ学舎の代表理事・湯川カナさん。Yahoo!JAPAN第1号社員、スペイン移住、『ほぼ日刊イトイ新聞』でのライター活動、そして神戸におけるリベルタ学舎始動──という異色の経歴に、参加者たちは熱心に耳を傾けます。

「すべてのこどもが未来に希望をもてる社会」を目指し活動する湯川さんが大事にしているのは、お金を得るだけでなく、家庭生活や地域活動などの社会とのかかわりのなかで価値をつくりだしていくライフワーク、「なりわいづくり」です。

「これから『個人の暮らし』と『個人のなりわい』が直結していくと思うんです。商いとして10万くらい稼げるけど、社会貢献活動もやっちゃうし、食べるために農業もしちゃう──たとえば、そんな専業主婦の姿を思い描いています」(湯川さん)
一般社団法人リベルタ学舎 代表理事 湯川カナさん
一般社団法人リベルタ学舎 代表理事 湯川カナさん

この実現のためには「これまでの成功のモデルは通用しない」と湯川さん。個人とプロジェクトをハブとして機能させ、企業や行政、あるいは他の個人とつながっていく、そんな柔軟なチームづくりが必要だと説きます。
リベルタ学舎が目指す「個人—プロジェクト」をつなぐアライアンスのイメージ図(湯川さんスライドより抜粋)
リベルタ学舎が目指す「個人—プロジェクト」をつなぐアライアンスのイメージ図(湯川さんスライドより抜粋)

そうした活動のなかで、湯川さんが大切にしているルール(あり方)があります。

「まず、誰を満足させたいのか顧客を明確にすること。周りのためと言いながら、結局『自分が満足する』ための活動だったら、社会の迷惑にもなりかねません。もう1つ、多様性を担保したチームであることも大事です。集まった人で何ができるか常に考え、お互いの失敗も許容し合う。私もいつからかみんなの前で失敗するから誰かが助けてくれることに気づいた。自分自身がオープンソースになれば、きっとうまくいくはずです」(湯川さん)

対象となるものを俯瞰してとらえよう

最後のスピーカーは「UX THINKING PROJECT」に参画する、富士通デザイン株式会社 デザインディレクターの横田洋輔さんです。「体験から考える○○」をテーマに、「UX」「デザイン」という武器を活用しながら、地域・コミュニティーをつなげる活動に携わっています。

推進してきたプロジェクトの1つは「UXで考える伝統工芸」。ここからは「コーヒーカップスリーブ」「卓上の屏風」「のぼり旗型の鯉のぼり」3つのプロダクトを生み出しました。
「のぼり旗型の鯉のぼり」(左、右下)、「卓上の屏風」(右上)、「コーヒーカップスリーブ」(中下)3つのプロダクト(横田さんスライドより抜粋)
「のぼり旗型の鯉のぼり」(左、右下)、「卓上の屏風」(右上)、「コーヒーカップスリーブ」(中下)3つのプロダクト(横田さんスライドより抜粋)

「鯉のぼりとか屏風とか、全然ICTと関係ない(笑)。人からは『なんで富士通がこんなことやってるの?』と言われますが、何にしたって『ユーザー体験』を考えることは不可欠なんです。今日はそれを多くの人に知ってもらいたい」

日本酒ラベルコレクションアプリ「クラカラ」の開発も、横田さんがユーザーの体験をとらえながら開発にあたったプロジェクトでした。当初は、お酒をメインにしたイベント企画づくりを中心に据えながらも「さまざまなユーザー体験を通じ、東北地方に興味を持つ、そのきっかけづくりへと発想の方向性を切り替えていきました」(横田さん)。
富士通デザイン株式会社 デザインディレクター 横田洋輔さん
富士通デザイン株式会社 デザインディレクター 横田洋輔さん

ユーザー体験から考えるときに、気を付けるべきことを横田さんはこう話します。

「私は“俯瞰してとらえること”を大切にしています。俯瞰することでそこにいる人たちの関係性が見えてくるし、本質的にできることがわかっていきます。実際の活動だけではなく、ユーザーの思いや価値観をとらえ、関係者との共感を持って、システムやサービス、さらには地域資源の役割・機能・しくみを考えるとよいのではないでしょうか」(横田さん)

自分の「やくわり」「しくみ」「どうぐ」を見つける

参加者は、企業に勤務するビジネスマンが大半でした。企業に勤めながらプロボノ的に活動する、あるいは、今いる企業を辞めて新たな道を模索する──。着地点は千差万別ながら、自分がやりたいことをこれからどのようにして実現していくか、多くの人がそんな悩みを抱えていることに変わりありません。

後半のワークショップが始まりました。「まずは自分自身の棚卸しとして、『わたし』のなかにある3つの要素を考えてみましょう」と、モデレーター・長浜さんに誘われるかたちで、参加者は白紙のワークシートをもとに、自分の「やくわり」「しくみ」「どうぐ」を自己分析していきます。

やくわり=わたしが担っている役割、担いたい役割
しくみ=わたしが大事にしているコト、モットー、ポリシー、在り方
どうぐ=わたしができるコト、得意なコト、使える道具

自分の今を知るワークシート
自分の今を知るワークシート(※文末でダウンロード可能です)

次に、参加者は隣の人と、ペアインタビューを実施。相手がどんな人か、どんな強みを持っている人物かを分析し合い、「外から見た魅力」を探ります。
ペアインタビューを初体験した参加者もたくさんいました
ペアインタビューを初体験した参加者もたくさんいました

最後に、自分のことを「内」「外」のそれぞれから見つめ直し、自分がこれからチャレンジしたいことを宣言しました。

ワークショップ後のアンケートでは「客観的にインタビューを受けることで、ふだん気づかない自分の魅力や強みを知れた」「なりたい自分と今の自分にまだまだ差があることを痛感した」と、それぞれに大きな気づきをもたらしたようです。

しかし、このイベントで得た気づきも「ソーシャルイノベーションの実現」という計り知れず長い道のりの第一歩。ここで気づいた「わたし」自身に共感者が集まることで、活動はこれから加速度的に駆動していくことでしょう。
登壇者4名に「今の枠を超えよう」をジャンプで体現いただきました
登壇者4名に「今の枠を超えよう」をジャンプで体現いただきました

数年後、ここからイノベーターが生まれていくことを期待したくなる、そんなイベントとなりました。

(運営協力:独立行政法人中小企業基盤整備機構 TIP*S

ワークシート ダウンロードはこちらから
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