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持続可能な地域経済をかなえる、自治会・町内会のあり方とは? ──島根県雲南市の地域自主組織(前編)

2016年11月21日



持続可能な地域経済をかなえる、自治会・町内会のあり方とは? ──島根県雲南市の地域自主組織(前編) | あしたのコミュニティーラボ
人口減少&少子高齢化が進むなか、戦後の地域コミュニティーを支えてきた自治会・町内会のあり方が問われている。都市部を中心に地縁が希薄化し、若者の加入率も低下しつつあるからだ。そこで注目を集めているのが、「地域自主組織」という自治会・町内会を活用した新しいまちづくりの手法だ。人口減少時代の切り札として、最近ではNHKにも取り上げられたこの取り組みによって、住民の課題はどのように解決されるのか。また、行政の役割はどのように変化しているのか。2004年の町村合併当初からいち早く導入、運用を進めてきた島根県雲南市を訪ねた。

地域への権限委譲と、市民起点のまちづくりが拡げる可能性──島根県雲南市の地域自主組織(後編)

3つの組織が共同運営する交流サロン

島根県雲南市の地域自主組織「三刀屋地区まちづくり協議会」では、5つの部会(生涯学習部、体育部、福祉部、安全部、地域づくり部)および9つの支部が組織され、37の自治会を管轄している。組織化された協議会のもと、管轄する区域の住民2,500人のほとんどが、地域の活動に参加していることとなる。

会長を務める上代(じょうだい)眞さんは、雲南市の隣にある飯南町のご出身。もともと銀行勤めで地域づくりとはまったく無縁だったというが、当地で地域自主組織会長を務めることとなり、その頃から地域づくりについて真剣に考えはじめた。
三刀屋地区まちづくり協議会・会長 上代眞さん
三刀屋地区まちづくり協議会・会長 上代眞さん

「この近辺は市街地と旧市街地に分かれていて、特に旧市街地側は商店街が廃れてきています。産業・観光に関する施策を考えようにも、農産物や加工品を作って販売したり、おもてなしをしたりする文化が元来なく、三刀屋をどうしていくべきかと考えたときに、私は『人づくり』、すなわち『教育』が必要だと思ったんです」

三刀屋地区まちづくり協議会では、2015年11月、まちで空き店舗となっていた書店をリニューアルし、世代交流施設「ほほ笑み」をオープンさせた。協議会による住民アンケートの結果から、人口減少、担い手不足、商店減少という地域課題を肌で感じ、その解決方法として「地域再生を目指す小さな拠点づくり」が必要であると考えたためだ。施設は、地域医療を担う「コミケア」(訪問看護ステーション)、ネット古書店を営む「エコカレッジ」(就労継続支援A型事業所)と共同運営し、次の3つの主要事業が行われている。

〈三刀屋地区まちづくり協議会〉=交流の場、いきがいの場の創出
〈コミケア〉=看護サービスや健康情報等の提供
〈エコカレッジ〉=就労支援・書店再生および生活支援

地方消滅論にも「消えてたまるか!」

上代さんは、ここを地元高校生と地元住民との交流の場にも活用しようと考えた。

地元高校生との交流にあたり、まずは施設近郊にある県立三刀屋高等学校に出向き、学習支援・キャリア教育の拠点として活用してもらうことを掛け合った。高校への出張授業で共同運営する3者それぞれが「起業」「訪問看護」「地域づくり」などに関する講演を行い、そこから高校生との交流が生まれた。以降、活動に興味を持った高校生は「ほほ笑み」を定期的に訪問するようになり、地域の高齢者と高校生との対話もはじまったという。

この日、「ほほ笑み」ではインターンシップ活動として実施された「空き家を活用したまちづくりに関する共同研究」のワークショップを開催していた。今後は、地元中学校も巻き込み、さらなる活動の輪を広げていきたいと考えている。
インターンシップで行われた地元高校生によるワークショップの様子。取材時は、高齢者との対話、商店街の視察&インタビューを行い、それを人生ゲームにしてみようという試みの最中だった
インターンシップで行われた地元高校生によるワークショップの様子。取材時は、高齢者との対話、商店街の視察&インタビューを行い、それを人生ゲームにしてみようという試みの最中だった

「小さくてもいいから、自分のところで生産・消費をして、結果的に、自分の懐にお金が入っていく。そういう循環型経済の整った地域をつくりたいんです。50年後か100年後かはわかりませんが、時間が解決してくれる問題もある。今、与えられた状況において、将来に向けて何かをしなければと考えたときに、教育の取り組みがもっと発展していってくれればうれしい。地方消滅論だなんてよく聞くけれど、地方の立場からすれば『消えてたまるか!』という思いですよ(笑)」(上代さん)

三刀屋地区まちづくり協議会の取り組みは、雲南市内で30が組織されている地域自主組織の活動の1つに過ぎない。面積規模や人口規模はさまざまで、地縁性が高いという視点で最も適しているという、「概ね小学校区」で組織されているのがポイントだ。
雲南市の地域自主組織一覧。「概ね小学校区」を目安に、全域で自主組織が展開されている(提供:雲南市政策企画部地域振興課)
雲南市の地域自主組織一覧。「概ね小学校区」を目安に、全域で自主組織が展開されている(提供:雲南市政策企画部地域振興課) 地域自主組織エリアマップ拡大

雲南市の地域自主組織一覧表(提供:雲南市政策企画部地域振興課)
雲南市の地域自主組織一覧表(提供:雲南市政策企画部地域振興課)

活動内容も地域によって実にさまざまで、三刀屋地区まちづくり協議会と同じ三刀屋町にある「躍動と安らぎの里づくり鍋山」では、市水道局からの委託を受け、住民が水道検針を実施。毎月の検針時には全世帯への訪問・声かけを実施し、高齢者世帯の見守り事業を行っている。また、三刀屋町の隣にある木次町の「新市いきいき会」では、地域住民の情報を把握するため、住民自らが「住民福祉カード」を作成・管理をしている。すべて住民主体の活動である。

自分たちの課題は、自分たちで解決する

少子高齢化に端を発し、自治会・町内会への加入率が低下するなか、昨今では「自治会・町内会不要論」まで飛び出している。しかし家族に次ぐ最小単位のコミュニティーともいえる自治会・町内会の制度を求める住民の声はいまだ根強い。

他方で、地域財源が限られる今、地域経済の持続可能性を実現する具体的手段として、過度な行政サービスのスリム化が注目されている。自治会・町内会の制度自体を抜本的に見直し、住民が自らの手で本当に必要な施策だけを実現していくことは、持続可能な地域経済にもつながっていくのかもしれない。

では、雲南市は、どのような経緯からこの地域自主組織のしくみをスタートさせたのか。雲南市政策企画部地域振興課地域振興グループ主査の板持周治さんに話を伺った。

そもそも雲南市全体の人口は、およそ4万人。ほかの過疎地域と同様、ここでも人口減少が進んでいた。板持さんによると「だいたい20年間で人口が2割減る」のだとか。高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)も深刻で、今年10月に総務省から発表された2015年国税調査では日本全体の高齢化率は26.6%に達したが、島根県では32.5%(全国3位)、さらに雲南市では「36.5%」と県平均を上回っている。
雲南市政策企画部地域振興課地域振興グループ主査 板持周治さん
雲南市政策企画部地域振興課地域振興グループ主査 板持周治さん

自治会・町内会のあり方が問われるなか、雲南市では2004年の6町村合併前から、住民自治のプロジェクトチームをつくり、新しい市の建設計画のなかにその取り組みを盛り込んでいた。基本的な考え方は「1世帯1票(自治会・町内会)から、1人1票へ」。旧来の自治会・町内会は、世帯主が伝達・協議の役割を担うが、目的型組織(消防団、文化サークルなど)、属性型組織(PTA、婦人会など)などを含めた広域的な地縁組織を再編したこのしくみでは、年代・性別が異なる地域住民の全員が地縁でつながり、連携を深めることで、地域課題を解決しようとしている。

「『行政からやらされる』あるいは『行政にやってもらう』ではなく、自分たちの課題は自分たちで解決していこう、ということ。すなわち『自助→共助→公助』の優先度で保たれています。高度経済成長期の『公助→共助→自助』とは、まったく逆の発想なんです」(板持さん)

地域住民全員が参加する主体的な地域課題解決。それが機能しつつある雲南市の取り組みは、住民や行政にどんな変化をもたらしたのか。後編では、住民と行政担当者(板持さん)双方に話を伺いながら、その可能性を考えていく。

地域への権限委譲と、市民起点のまちづくりが拡げる可能性──島根県雲南市の地域自主組織(後編)へつづく

【関連リンク】
地域自主組織について
小規模多機能自治推進ネットワーク会議(Facebookページ)
雲南市に地域自治を学ぶ会(略称:雲南ゼミ)(Facebookページ)


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