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地域への権限委譲と、市民起点のまちづくりが拡げる可能性 ──島根県雲南市の地域自主組織(後編)

2016年11月21日



地域への権限委譲と、市民起点のまちづくりが拡げる可能性 ──島根県雲南市の地域自主組織(後編) | あしたのコミュニティーラボ
住民が主体的に地域課題解決に取り組む「地域自主組織」。雲南市の発足以降、2005〜07年にかけて、市内全域に次々と立ち上げられ、2008年11月に施行した雲南市まちづくり基本条例のなかでも「協働のまちづくり」という基本姿勢が示された。基本条例の前文には「まちづくりの原点は、主役である市民が、自らの責任により、主体的に関わること」と明記されている。「協働のまちづくり」は住民・行政にどんな効果をもたらしたのか。雲南市の地域自主組織、後編をお届けする。

持続可能な地域経済をかなえる、自治会・町内会のあり方とは? ──島根県雲南市の地域自主組織(前編)

地域の拠点は、公民館から交流センターへ

雲南市の地域自主組織の活動が大きく様変わりしたのは2010年度のことだった。このとき、いっせいに地域の公民館を「交流センター」へと名称変更し、30の自主組織のそれぞれに交流センターが配備された。これにより、公民館での中心的な活動である「生涯学習」のみならず、地域づくりや地域福祉、さらには「持続可能性の確保」「安心安全の確保」「歴史・文化の活用」といった包括的なテーマで、自主的な活動ができるようになったという。

さらに「公民館は行政の直営的な施設でしたが、交流センターは指定管理者制度のもと、住民組織が管理・運営されるようになりました」と板持さん。地域自主組織には市から「地域づくり活動等交付金」が交付され大きな活動資金になっているが、それに加え、指定管理料も交付される。交流センターへの移行後、板持さんが「活動基盤強化の後の、第2ステージ」と位置づける2013年から大幅な制度改正も行われ、地域自主組織が交流センター職員を直接雇用するようになったことなどで、名実ともに交流センターが地域自主組織の活動拠点として使われるようになっていった。
雲南市における地域自主組織の組織イメージ(提供:雲南市政策企画部地域振興課)
雲南市における地域自主組織の組織イメージ(提供:雲南市政策企画部地域振興課)

全国に活動をつなげるネットワーク会議を発起

地域自主組織の取り組みは、雲南市だけではなく、次第に全国へと活動の輪を拡げている。

2015年2月には、地域自主組織の活動に取り組む、朝来市(兵庫県)・伊賀市・名張市(ともに三重県)の4市とともに自治体中心の横断的組織「小規模多機能自治推進ネットワーク会議」を発起。「地域自主組織のような取り組みや地域の課題は、全国の異なる地域でもおおむね共通している」と、ネットワーク会議内でも情報共有を図っており、現在、全国で229の組織(204自治体・16団体・9個人/2016年11月10日現在)がネットワーク会議に参加している。また、地域同士の自主組織取組発表会や、NPO法人なども参加できる「雲南ゼミ」などで普及推進を図っている。

その甲斐もあってか、活動に興味を持った県外からの視察団は後を絶たない。この日、雲南市では、県外の連合町内会を受け入れ、雲南市の地域自主組織に関する視察会を開催していた。
県外の連合町内会による視察会。雲南市からは、雲南市役所の板持さん、地域自主組織の会長2名が参加した
県外の連合町内会による視察会。雲南市からは、雲南市役所の板持さん、地域自主組織の会長2名が参加した

地域自主組織により、どのようにまちは変わっていったのか。視察会で地域自主組織の取り組みを紹介した、2つの地域自主組織の会長に話を伺った。

木次町の下熊谷(しもくまたに)ふれあい会・会長、市場雅延さんは、建設会社を退職後、自治会長の任を引き受けた。一度は自治会の活動を離れることとなったが、縁あって、地域自主組織の会長になったという。

「自治会があるのに、なぜ自主組織が必要なのか。最初は住民からそういう声もたしかに上がりました。私自身も、発足当初はその意味が理解できないまま。しかし実際に地域で生活していくなかで、自治会が独りよがりの活動をしていてもどうにもならんと思った。なかには“きこな人”(頑固な人、の意味)もいたけど、今はだいぶ理解してもらえるようになってきたと思います」

同じく木次町の新市(しんいち)いきいき会・会長の小林和彦さんは、学校の校長先生を務めた後、地域自主組織の生涯学習部長を経て、会長職に就いた。そんな小林さんは地域自主組織の活動に関わるなかで「行政のなかが見えるようになった」という。

「職業柄、これまでにも教育委員会とは関わってきましたが、合併前に比べると、(住民としても)市役所にも行きやすくなりましたよ(笑)。自治会組織でばらばらで出ていた地域要望も、今は交流センターに集まる。どういう話ならば受けつけてもらえるのか、私たちも協議しやすく、結果的に本当に必要な要望だけを市役所に持っていけます」
左から、下熊谷ふれあい会・会長の市場雅延さん、新市いきいき会・会長の小林和彦さん
左から、下熊谷ふれあい会・会長の市場雅延さん、新市いきいき会・会長の小林和彦さん

地域自主組織における行政の役割とは?

一方で、地域自主組織の活動によって、行政の役割はどのように変化したのだろうか。視察会では、地域自主組織における行政の役割について、厳しい質問が飛ぶこともある。すなわち「行政の仕事を住民組織に丸投げしているのではないか」という誤解だ。

「行政との役割分担という面で、いまだ誤解はあります。ただそうした方にわかっていただきたいのは、この活動は境界線が明確にあって『ここから先は住民のみなさんでやってください』というものでは決してないこと。あくまで相互補完であり、お互いが支え合うことが大事だと考えています」(板持さん)

住民主体の活動から、効果的な取り組みが生まれれば、行政の側が学ぶこともある。そうした学びは、雲南市の地域自主組織のみならず、同じ施策に取り組むネットワーク会議で共有を図ることができ、板持さんも「そうして行政と地域が共に進んでいくべきものだと考えています」と話す。

そうした行政側の役割として欠かせないのが、2013年から導入された地域円卓会議。毎回、防災・地域福祉・生涯学習・社会教育など共通のテーマを定め、住民と職員が議論を行っている。

また、もう1つ欠かせないのが、地域づくり担当職員の存在だ。雲南市では、大東町、加茂町、木次町、三刀屋町、吉田町、掛合町の6エリアごことに総合センターを配置しており、センターの自治振興課の担当職員が地域づくり担当職員を務めている。地域自主組織の活動に、行政側から地域づくり担当職員が常に参画しているからこそ、お互いの信頼関係は壊れることがない。
三刀屋地区まちづくり協議会の取り組みを取材させていただいたみなさん。左から、景山眞一さん(福祉部長)、倉内敦子さん、会長の上代眞さん、そして、三刀屋総合センター自治振興課の今岡靖さん
三刀屋地区まちづくり協議会の取り組みを取材させていただいたみなさん。左から、景山眞一さん(福祉部長)、倉内敦子さん、会長の上代眞さん、そして、三刀屋総合センター自治振興課の今岡靖さん

地域自主組織の今後については「市民と行政の協働関係をいっそう深めていきたい」と板持さん。そこで検討が進んでいるのが、地域自主組織の「法人化」だ。

雇用のみならず、会計規模も大きくなるにつれ、より自立的な活動も生じてくる。法人化により税制上の優遇処置が受けられることも期待している。今年1月には、ネットワーク会議の賛同自治体121との連名で、総務大臣・地方創生担当大臣宛に法人制度の創設を求める提言書を提出した。3月には内閣府「まち・ひと・しごと創生本部」に「地域の課題解決のための地域運営組織に関する有識者会議」が設置され、現在検討が進んでいる。
雲南市政策企画部地域振興課地域振興グループ主査・板持周治さん。地域自主組織による行政と住民の関係を熱弁する
雲南市政策企画部地域振興課地域振興グループ主査・板持周治さん。地域自主組織による行政と住民の関係を熱弁する

「地域によって、地域課題には濃淡があります。行政は公平性の観点から、最低限カバーしないといけないところは、やはりカバーしないといけない。しかし誰もが課題に感じる域から“出た部分”の課題は、行政ですべてを補うことは難しいんです。それを地域主体で自ら解決してもらいながら、一緒になって、ともに全体の課題を解決していく。それが私たちの考える“協働のまちづくり”です」(板持さん)

要望・要求型のまちづくりから、市民起点による参画・協働型のまちづくりへ──。「人口減少や高齢化など、雲南市が迎えている状況はだいたい20〜25年後に来る日本全体の姿なんです」と板持さんが言うとおり、地域自主組織のあり方は、必ずや日本の地域課題を解決する、次なる一手となるだろう。

持続可能な地域経済をかなえる、自治会・町内会のあり方とは? ──島根県雲南市の地域自主組織(前編)

【関連リンク】
地域自主組織について
小規模多機能自治推進ネットワーク会議(Facebookページ)
雲南市に地域自治を学ぶ会(略称:雲南ゼミ)(Facebookページ)


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