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共助による助け合い・頼り合いが社会にもたらすもの──UR都市機構×AsMama連携プロジェクト(後編)

2017年12月20日



共助による助け合い・頼り合いが社会にもたらすもの──UR都市機構×AsMama連携プロジェクト(後編) | あしたのコミュニティーラボ
「創業当時から、子育てという問題だけに特化してきたわけではなく、共助、助け合い、頼り合いという文化・慣習そのものを広めたかった」──。共助がもたらす社会変革とは?前編では、事業の核ともなる「地域交流イベント」と、イベントを企画・運営するママサポーターたちの活動を紹介した。後編ではAsMamaの代表取締役CEO 甲田恵子さんにお話を伺った。

子育てからはじめる、困りごとの”シェアリング”──UR都市機構×AsMama連携プロジェクト(前編)

送迎・託児等を助け合う「子育てシェア」サービス

2016年生まれの子どもの数(出生数)は統計を開始した1899年から初めて100万人を下回った。合計特殊出生率は「1.44」と過去最低を記録した2005年(1.26)よりは微増傾向にあるものの日本の少子高齢化の実態に変わりはなく、このまま減少傾向が続くとされている。

背景にあるのは、乳児(0〜満1歳)、幼児(満1歳〜小学校就学時)に関する子育て支援や保活(保育園活動)の課題。特に女性が子育てと仕事を両立させることが難しく、たとえばベビーシッターに子どもの面倒をみてもらうにしても時間当たり2,000〜3,000円前後もかかることから経済的・心理的な負担を招いている。

これらの課題に対し、ご近所同士で頼り合いをする「共助社会の実現」で解決を提案するのが株式会社AsMama(アズママ)だ。AsMamaは、独立行政法人 都市再生機構(以下、UR都市機構)との連携事業を2016年から開始。ママサポーター(通称・ママサポ)という認定制度を設け、ママサポによる地域交流イベントを催していることは前編で紹介した通り。

じつはもう1つ、この連携事業で目玉になっているサービスがある。それが「子育てシェア」というインターネットサービスだ。

サービス内で登録者は友だち・知り合いと「シェア友」になり、互いに送迎・託児等を頼り合うことができる。対象年齢1歳以上13歳未満。本名登録が原則で「知らない人とはつながれない」認証システムであるため、子育て世代の女性たちも気軽にはじめられる。

サービスの利用料・手数料は0円。支払いは、対応してくれるシェア友に対して、時間あたりの料金(500円前後)を払うときに発生するのみ。加えて、万が一の有事の際には、最高5,000万円までの損害賠償責任保険が適用される。

現在、登録者数は5万人超。80%以上の困りごとが解決されているという。

サービス画面
「子育てシェア」のサービス画面

前編に紹介したような地域交流イベントにおいて「子育てシェア」のサービスがガイドされる。ユーザー獲得の場もさることながら、同時に対象ユーザーを集めたマーケティングの場としても機能しているのが特徴的だ。

「各地で開催される地域交流イベントで何度も『子育てシェア』の紹介や、ユーザーからのフィードバックを行っていると、共通した声が見えてきます。たとえば、助け合い・頼り合いのニーズがあるのに、もう一歩先に踏み込めていないと感じた場合、どうすれば次のステップに踏み出してもらえるか……。地域交流イベントはそうしたPDCA的なサイクルが回せる場だと思っています」(AsMama事業推進部の可知友さん)

AsMama事業推進部
AsMama事業推進部の工藤智恵さん(左)、可知友さん(右)。ともに「子育て交流会~アロマ保湿クリーム作り~」(前編参照)を担当した

ベビーシッターよりも「自分を知っている人に預けたい」

「子育てシェア」のβ版がリリースされたのは、2013年4月のこと。最初の1年間はリーンスタートアップ方式で開発し、ユーザーニーズを拾い上げることに注力した。会員数は同年12月に5,000人を突破。以降、翌14年6月に1万人、10月に2万人、15年9月に3万人……と急増している。

急増を後押しした一因として、ちょうどこの時期、社会的にも話題になったニュースがあった。ネットを介して委託したベビーシッターに子どもを虐待されるという痛ましい事件。託児所や保育所のような公共サービスは、預けたくても定員いっぱいで預けられない。とはいえ多くの民間サービスは高額なものが多く、同時に抵抗感もある……。そんななかで「ご近所同士で預け合う」という、世のなかにないと思われていたサービスをAsMamaが先行して開発していた。

AsMama代表取締役CEO 甲田恵子さんは、サービスの狙いを次のように話す。

「ベビーシッターはプロだから安心という価値観がなくなりつつある今、日常的に自分のことを知っている人に預けられれば安心ですよね。預かってもらうというより、お子さん的には“○○ちゃんのおばちゃんち行ってくるー”など、遊びに行く、親からすると近くの知り合いのうちにちょっとだけ行かせている感覚です。さらにご近所同士のつながりがあると、お子さんの社会性や多様性を自然に育むこともできる。お子さんの成長にとってもうれしいサービスなんです」(甲田さん)

甲田恵子さん
AsMama代表取締役CEO 甲田恵子さん

サービスの継続率も高く、「送迎・託児を頼り合うサービスではあるのですが、子どもの年齢があがっていくなかでも、“つながっている”ことへの安心感を得られるはず」と甲田さん。

「子どもがある程度大きくなってからも、乳幼児の頃からつながりのあるお母さんとつながっていれば、「急な仕事で面倒が見られない」というような万が一の事態のときにも頼ることができます。だからずっと継続して登録されるユーザーが多いのだと思います」(甲田さん)

UR賃貸住宅が地域の福祉拠点としても存在できるように

子育てシェアは利用料・手数料の類いはいっさい発生しない。その理由を甲田さんは「日本には子どもを預かり合うという文化がないから」と話し、こう付け加える。

「たとえば手数料30%とかにしたところで利益は期待できないうえに、時間あたりの利用料を数千円とかに設定したら、ベビーシッターと変わらなくなってしまう。AsMamaの立ち上げは“頼り合うことで人々の生活を豊かにしたい”というところからスタートしているので、社会性という観点からも手数料・利用料をとるという選択肢は絶対にありませんでした」(甲田さん)

ならばAsMamaはどこから収益を得ているのか。それを支えるのは2つの事業だ。

1つは「地域交流事業」。こちらは大小さまざまな地域交流イベントを年間1,500回ほど開催し、地域のママサポ600人以上による子育てシェアの普及と、企業のPR・マーケティング・集客・顧客化支援等を両立させている。もう1つが「共助コミュニティー創生事業」。こちらは、分譲地・マンション・集合住宅・企業コミュニティー内で子育てシェアのサービスを使ってもらうことで、共助による自己実現支援と、コミュニティーの課題解決&価値向上支援を実現させようとしている。

UR都市機構との連携事業は「この2つの事業が掛け合わされたようなプロジェクト」と甲田さん。

「通常、共助コミュニティー創生のような事業は、賃貸住宅の“住民同士”がつながり合えるように、とご依頼いただくことが多い。対してUR都市機構との連携事業は公共性も高く、地域の人との共生を重要視されました。UR賃貸住宅が地域の福祉拠点としても存在しうるよう、集会所に人が集まり、居住者が地域とも交流できる、そんな環境づくりと価値向上を目指しています」(甲田さん)

メゾンふじきの台
UR都市機構とAsMamaによる「メゾンふじきの台」での連携事業は、2017年1月からの3カ年計画

多様な社会ニーズをありのままとらえるという観点

UR都市機構との連携事業は3カ年の計画だが、1年目を終えた今、残り2年間で甲田さんたちが目指すものは?

「立ち上げのところだけを、私たちがお手伝いをしているという感覚ですね。現在はママサポーター(通称・ママサポ)によるオフィシャルな交流会を開催させていただいていますが、それを開催しなくても、アンオフィシャルな交流会や家の行き来が十分にされるようになればと思っています。私たちがいなくても誰もそんなことに気づかないくらい、すでにコミュニティーが成り立っている状態にしてから、このプロジェクトを終えたいです」(甲田さん)

AsMamaはUR都市機構のほかにも、自治体との協業も進めており、奈良県生駒市、秋田県湯沢市、滋賀県大津市とは共助コミュニティーづくりの協定を締結している。

“日本一小さな村”と言われる富山県舟橋村とは「子育て支援賃貸住宅等整備事業」として「ママサポの役割をやりたい」という造園、保育等の地元事業者を地域ぐるみでサポートしているという。

「たとえば造園事業者の方が地域貢献活動的に“毎日公園でラジオ体操をします”といっても、事業者はメリットを得られない。しかし地域の事業者さんの活動に、ママサポと同じしくみを構築すれば事業者1社1社が社会課題の解決と、事業を両立できるようになると考えています」(甲田さん)

甲田さん
最近は地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターとタッグを組み、中高齢者の人たちの生活支援サービスにも取り組んでいるのだとか。「介護ではなくて、ゴミ出しや引っ越しのお手伝いとか……。ご近所同士がちょっとお願いできるような地域共助を支援したい」(甲田さん)

甲田さんは「創業当時から、子育てだけにこだわっているわけではない」と言い切る。

「私の本当にやりたいことは、身近な困りごとを、身近な人同士が、気兼ねなく安心して助け合える──社会のなかで“水道をひねれば水が出る”のと同じように、そんなやりとりを当たり前のようにできるようにすることです」(甲田さん)

保活や待機児童問題のみならず、働き方改革、介護問題など、日本はさまざまな課題を抱えている。それらの課題が顕在化される前に、甲田さんは「共助」という文化・慣習を日本に根付かせようとしている。

「社会的な課題も単にネガティブにとらえるのではなく、「事実、そういう事象が起こっていて、それに対してどういうソリューションが提供できるだろう」とポジティブにとらえ、ビジネスチャンスを探る。多様な社会ニーズをありのままとらえるという観点が、今後すごく必要になるのではないでしょうか」(甲田さん)

同プロジェクトにおいて「子育てシェア」というソリューションは、共助による助け合い・頼り合いの文化・慣習を“育む”ためのツールに過ぎない。その助け合い・頼り合いの文化・慣習は「子育てのやりにくさ」という問題を解決するだけでなく、もっと大きな社会変革をもたらす可能性を秘めているに違いない。

子育てからはじめる、困りごとの”シェアリング”──UR都市機構×AsMama連携プロジェクト(前編)


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