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“民泊解禁”で拡がる、軽やかなライフスタイルとは

2018年03月14日



“民泊解禁”で拡がる、軽やかなライフスタイルとは | あしたのコミュニティーラボ
今年6月の「民泊解禁」が迫っている。国家戦略特別区域法、そして民泊新法施行により、訪日外国人のみならず私たち生活者も「宿泊のシェアリングエコノミー」の恩恵を受けられるようになるだろう。今回は都内で民泊スタイルの生活を楽しむ、ある「勢力」を取材した。「ホテル・旅館に泊まらない」「現地観光やグルメにも興味がない」という彼らの「旅」の目的は何なのか。そこから見えたのは「旅」が本質的に持っている「出会い」──彼らが求める人生観そのものだった。

解禁迫る! 誰のための「民泊」か?

なぜ今“民泊”に注目するのか? それは今年6月15日、いよいよ「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が施行されるからだ。

以下でいったん民泊解禁の流れを整理してみたい。なお、民泊関連の制度や近年の経緯に詳しい人は、次の小見出しまで読み飛ばしてほしい。

日本では、一般の人が「旅行者」を宿泊させ、宿泊料を徴収することを禁じられている。それらの行為が「旅行業法」という法律下で「ホテル営業」「旅館営業」「簡易宿舎営業」「下宿営業」に該当するためだ。

「民泊」は旅館業法の種別のなかでは「簡易宿舎営業」(宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を設けてする営業)に近く、この法律があるため、民泊営業をしにくかった。しかしここ数年間のインバウンド(外国人旅行者の訪日旅行)や2020年五輪の流れを汲み、緩和策ともいえる国家戦略がとられてきた。

その第1弾といえるのが「国家戦略特別区域法」。認定を受ければ上記の旅館業法の適用を免れ「特区民泊」としての営業ができるようになった。しかし特区民泊は一部のエリアに限定されていたため、その第2弾として、受け皿のようなかたちで運用をはじめるのが民泊新法施行だ。民泊新法により、都道府県知事への届出(2018年3月15日受付開始)があれば年間180日(泊)を上限に、自宅等を民泊施設として提供可能になる(自治体ごとの上乗せ規制あり)。

ここであらためて考えたいのは「誰のための民泊解禁なのか?」ということだ。

民泊新法には「外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保」の条文があり、法令上ではホストに訪日外国人に対する一定の配慮(例えば外国語を用いた案内等)が課せられる。しかし「訪日外国人でなければ宿泊できない」わけではなく、誰でも利用は可能。本来的に、民泊解禁は私たちの生活スタイルを変えるツールにもなり得るのだ。

民泊解禁に先駆けて、多様な生活スタイルを実践している「勢力」もいる。あしたラボ編集部はその拠点に向かった。

たまに泊まりに行ける「ゲストハウス」の魅力

東京の「モテアマス三軒茶屋」(以下、モテアマス)は「民泊施設」でも「ホテル・旅館」でもなく「シェアハウス」。管理人の高野一樹さん(富士通デザイン株式会社に勤務)が社員寮だった建屋を借り受けてリノベーション。現在は15名ほどが家賃を分割して支払いながら共同生活を送る。


モテアマス三軒茶屋の外観

ときには、地方から東京に遊びに来る際に立ち寄る人もいる。「もぬさん」の愛称で呼ばれている大学3年・今吉萌子さんも「たまに泊まりに来る」というユーザーの1人だ。

北海道出身の今吉さんは3年前、大学入学とともに上京。以来ずっと大学のある茨城県つくば市に住んでいる。「1年半くらい前、月に数回程度、茨城県のあるゲストハウスで泊まり込みのヘルパーをしていました。そのときにふらっと遊びに来てモテアマスに誘ってくれたのが高野さんでした」。


「今、大学でデザインを学んでいて、将来は“人と人をつなぐ”ものをつくれたら」と笑顔で語る今吉さん

今吉さんの発言のなかに出てきた「ゲストハウス」という言葉に明確な定義はない。広義には「割安な簡易宿舎」。ほとんどのゲストハウスは旅館業法のもとで営業するが、ホテルや旅館と違うのは、「オープンスペースが広く、知らない人(ホストや他のゲスト)との交流を楽しめる」「プライバシー配慮は旅館・ホテルに比べて期待できない」「宿泊料は比較的安い(数千円程度)」「法的には違うものの“民泊”に近い手軽さがある“民泊のようなもの”」といったことだろうか。

今吉さんも最初はそんな知識をまったく持たなかった。田んぼに囲まれた片田舎にあり、稲刈りやバーベキュー、ときにイノシシ狩りなんかのイベントもあるという茨城のゲストハウスに一般客としても紛れ込むようになり、都心部からふらりと遊びに来た旅人と仲良くなるなどしているうち、ゲストハウス体験の魅力に気づきはじめた。

住民とゲストの関係性を築きやすくするしかけとは

高野さんに誘われたのはそんなときだった。以来、東京のインターンシッププログラムに参加するときなど、たびたびモテアマスを利用している。

「モテアマスに行けば住人の人たちが『おかえり!』って出迎えてくれるんです。実家に帰るのとも違うし、友達の家に遊びに行っている感覚が近いかも。ただ友達の家と違うのは、いつも誰かがいてくれるから、相手の予定なんかを配慮しなくても気軽に立ち寄れること。ここで知り合った方はどなたとも距離間がほどよいから心地よいんです」(今吉さん)

住人同士、あるいは住人とゲスト(長期滞在しない方)の関係性を築きやすくするしかけもある。

「ここはシェアハウスということもあり、住人が部屋に閉じこもってすれちがい生活を送ればまったくコミュニケーションは起こりません。特にゲストは滞在日数が短いので、住人と接する機会が多くありません。だから、モテアマスではゲストが共用スペース(リビング)で“簡易スナック”を営業するなど、住人とゲストがコミュニケーションできるイベントを意識的に企画しています。そうすることで、住人同士や住人とゲストの間の距離が近くなり、全体の空気感がよくなっていきます」(高野さん)


「モテアマスは、自分のままで居られる場所にしたい」と語る高野さん

部屋が埋まって泊まれないときにも今吉さんのような「住人以外」がイベントに誘われる。この日も共用スペースではおでんを囲むイベントが開かれていた。「一番酔えるノンアルコールビールを決める会」となんとも不思議な企画だったが、言ってしまえばテーマは何でもいいのだろう。宅飲み(友達の家での飲み会)にも近いが、必ずといっていいほど「見知らぬ誰か」が紛れ込んでいる点が、大きな違いだ。

長野の山間にある「古民家」が人生を変えた

宿主・高野さんは今吉さんと出会った茨城のみならず、ふだんから土日を使って全国各地のゲストハウスを渡り歩いてきた。高野さんの最初のゲストハウス体験は2011年の年末に友人と「富士山を観に行こう」と行ったときのこと。「富士山の近くだと思ったのにまったく眺望できないし、ネットもろくに届かないような場所で……」。

その宿が、長野県の山間にある築150年の古民家ゲストハウス「梢乃雪」(こずえのゆき)だった。


長野県小谷村の古民家を改修したゲストハウス「梢乃雪」

梢乃雪でネット予約時に確認する「ルールとお願い」にはこんなことが記されている。

梢乃雪はサービスを一切行いません。
ゲストさんのできることはすべてゲストさん自身で行っていただきます。
なぜならこの家を訪れる方でお客様は存在しないからです。
この家はあなたの第2の家であり、私たちスタッフはあなたの親戚のようなものだからです。

ほかにも「お酒はカンパ制」「ごはんも囲炉裏を囲んでみんなで食べる」「使ったものは自分でもとに戻す」「掃除も各自が行う」「スタッフは馴れ馴れしく接してくる」「チェックアウト時間はとてもゆるい」──。サービス拡充を競い合うようなホテル・旅館にはまずあり得ない光景だ。


梢乃雪にて、いろりを囲みながら食事を楽しむひととき

しかし高野さんはそんな「もてなしてくれない」ゲストハウスをたいそう気に入った。当時、梢乃雪を運営していたたつみかずきさん(現・LODEC Japan合同会社CEO)とも意気投合し、一緒に梢乃雪で音楽イベントを企画する仲に。そうして何度も梢乃雪に通っていくうち常連客とも仲良くなり、梢乃雪のスタイルに近い、他のゲストハウスにも訪れるようになった。

そんな折、たつみさんが長野県内にシェアハウスを立ち上げ、高野さんも迷わずそのシェアハウスに住みはじめることに。当時、すでに東京で「友達同士の、ごくごく一般的なシェアハウス生活」を送っていたため「平日は東京、土日は長野」という二拠点居住だったのだが……。

「長野のシェアハウスもまた梢乃雪のように“新鮮な出会い”のある場所でした。だから土日に長野ではじめて知り合う人と仲良くなる生活を送っているほうが、ずっと自分らしい生活だと感じるようになったんです」

そんな生活を続けるうちに、ふつうのシェアハウス生活では物足りなくなった。それが、高野さんがモテアマスをはじめた理由だった。

「自分が会いたい人を東京にも集めるため。定期的なイベントを開いているのもそのためです。これまでのゲストハウス体験からやっと気づいたことですが『一緒にいて楽しいから、いっそ一緒に住んじゃえ』と思える場所こそ魅力的だし、そんな場所をつくりたいんです」


モテアマス三軒茶屋でのおでんを囲むイベントの様子

観光? グルメ? 旅が本質的にもっているものは何?

高野さんのような「旅人」が一般的な旅人と異なるのは、

・旅行をするにしても一般的なホテル・旅館には泊まらない
・そもそも現地観光やグルメにあまり興味がない
・プランをもたない。ふらっと旅に出かける
・都内在住なのに、都内の宿泊施設に泊まる

という点だ。人は、宿泊を伴うような「旅」に「非日常」を求めがちになる。だから滅多に行けないような観光名所に行きたいし、ご当地のグルメに舌鼓を打ちたい。泊まる宿は豪華でオシャレなところがいい──。

対して高野さんたちは日常のなかに「旅」が本質的に持つ“出会い”を求めている。たった1泊のお泊まりでも、都内在住から都内近郊へのお泊まりでも……。そこでは観光旅行・グルメ旅行にはない稀少な出会いが必要で、それこそが彼らにとっての「非日常」なのではないだろうか。

昨今は、民間のシェアリングエコノミーサービスも活況だ。国内の民泊仲介サイトに行けば、ゲストハウスや特区民泊をすぐにでも予約できる。民泊解禁になればもっとホスト先は増えるし、これから自分の好みに合った民泊施設を“全国”から選べるようになるだろう。

「民泊解禁」は、インバウンドだけのためではない。私たち生活者の「人生観を変える選択肢」になり得るもの。そこでの体験は、きっと私たちの日常にたしかな彩りを加えてくれることだろう。

週末に予定していたプチ旅行──。その宿泊先に「民泊スタイル」の宿という選択肢を加えてみてもおもしろいかもしれない。

今回ご登場いただいた高野さんも参加する“旅をもっと身近に”というコンセプトの「旅猫プロジェクト」のメディアサイトが公開されました。

民泊を利用した旅の魅力が発信されていたり、民泊を利用するにあたっての不明点・疑問点などがわかりやすく解説されていたりと、新しい旅の方法を見つけるにはぴったりのサイトです。

その他にも旅レポート、あなたの旅タイプがわかる診断など、さまざまなコンテンツがサイト内で公開されています。新しい旅へのヒントとしてぜひ活用してみてはいかがでしょうか。サイトはこちら


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