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モンテッソーリ教育は社会人にも応用可能か?──原宿子供の家&すみれが丘子供の家(後編)

2018年06月27日



モンテッソーリ教育は社会人にも応用可能か?──原宿子供の家&すみれが丘子供の家(後編) | あしたのコミュニティーラボ
5領域(日常生活・感覚・数・言語・文化)ごとに存在する教具、自由時間、異年齢保育──。前編では、モンテッソーリ教育に不可欠な「環境的因子」の側面から、その効能を探ってみた。ここにもう1つ欠かせない因子があるとすれば、それは「人」──すなわち「教師」(=介助者)の存在だ。

子どもの自主性・協調性・社会性を育むモンテッソーリ教育において、教師はいかなる存在であるべきか。さらに、その考え方を社会人にも応用した場合に、社会人教育の介助者はいかなる存在であるべきなのか。

後編では「モンテッソーリ原宿子供の家」「モンテッソーリすみれが丘子供の家」のモンテッソーリ教員で、書籍『子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド』の著者でもある堀田はるなさんの話をもとに、その可能性をつまびらかにしていきたい。

モンテッソーリ教育に学ぶ、挑戦する心の育み方──原宿子供の家&すみれが丘子供の家(前編)

マーケティングの経験から、モンテッソーリ教育の宣伝部長に

2018年に書籍『子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド』(あさ出版、監修・堀田和子)を上梓した堀田はるなさんは、アパレル関連の会社に在籍した後、インターネット通販会社と証券会社でマーケティングの仕事に従事してきた。しかしトータル17年間の会社員生活に終止符を打ち、モンテッソーリ教育の道へと転身することとなる。


モンテッソーリ教員の堀田はるなさん

当時について「会社勤めをしているなかで、常に働き方・生き方について関心を持つようになった」と話すはるなさん。長寿社会を迎えた今、65歳で定年を迎えたとしても、その後の20数年間以上のライフスタイルを考えなければならない。自分に課せられたミッションは何であるのか、そして何をライフワークにしていくべきなのか──。そんなことを考えていた最中、堀田海也さんとの結婚を機に「モンテッソーリ教育」のことを知った。

「モンテッソーリ教育の考え方は“子どもたちが自分で考えること”や“自分の人生を、自分でデザインすること”をベースにしています。自分の社会人生活を背景に、それに感化された部分もありましたし、“子供の家”の子どもたちの明確な成長を見るにつれ、毎日何かしらの気づきがあった。率直にこの教育に携わりたいと思いました」(はるなさん)

現在は、園長である和子さん、夫である海也さんとともに「モンテッソーリ原宿子供の家」(以下、原宿子供の家)、「モンテッソーリすみれが丘子供の家」(以下、すみれが丘子供の家)でモンテッソーリ教員を務めるかたわら、かつてのマーケティング経験を生かし、執筆・講演活動を通じてモンテッソーリ教育のことを社会に知らせる「宣伝部長的な活動」にも寄与しているという。

4つの時期ごとに存在するモンテッソーリプログラム

各種メディアで「モンテッソーリ教育」が取り沙汰されるようになり、子どもの将来を考えて「子供の家」に預けようと考える保護者も増えてきた。しかし当然のことながら、モンテッソーリ教育は即時的に子どもを成長させる「魔法の杖」ではない。改めて、モンテッソーリ教育とはどういったものなのか、はるなさんに聞いてみた。

「入園を希望される親御さんには“ここは、子どもが自律し、自分ゴトでものごとを考え、問題を解決する──そのためのトレーニングができる場所“だと伝えています。これから大学などでもアクティブラーニングがいっそう広まっていきますが、ある程度成長してからそれを”急にやれ!“といわれてもできないもの。モンテッソーリ教育で”敏感期“と呼ばれる期間があります。”敏感期”は6歳になるまでに多く現れ、この期間の成長段階に応じた教育を施すことで、将来的な学生生活や社会人生活のための準備が行えるのです 」(はるなさん)

「原宿子供の家」「すみれが丘子供の家」は、2〜6歳を中心とした教育プログラムを展開しているが(卒園者を対象にした小学生クラスも開設)、モンテッソーリ教育は決して就学前教育に閉ざしたものではなく「6歳以降にも有効なもの」。マリア・モンテッソーリの教えでは「人間の自己の確立に至る24歳までを4つの時期」に分けてとらえられているという。


4期に分けてとらえたモンテッソーリ教育。欧米には各期に応じた教育プログラムが確立されている国もある

それぞれの時期に則った各種プログラムが存在し、欧米では就学前教育“以降”の初等教育機関(第2期)、中等・高等教育機関(第3期)、大学や民間企業(第4期)に導入されているケースもある。

モンテッソーリ教員は、いかにして介助するべきか

子どもたちの「挑戦する心」を育むことができ、なおかつ社会人に対しても応用可能なはずのモンテッソーリ教育。そのモンテッソーリ教育を、日本の社会人に適用するには、どうしたらよいのか。

はるなさんはその点について「もちろんその企業のルールは守らなければいけないけれど、そのなかで折り合いをつけながら、自分で決められることがあったほうが絶対に仕事は楽しい」と述べたうえでこう続ける。

「日本の民間企業でモンテッソーリ教育を応用することを考えた場合、まずは“仕事は楽しい”と感じてもらうことが第一だと思います。企業での自分の責任の範疇が狭いと、仕事は楽しくなりようがありませんから。その社員が自分で好きなようにできるプロジェクトを1つでも任せたほうがよくて、その人の身辺だけでチームをつくらせるのではなく、部署を越えた横断的なチームを許容してあげるべきだと考えます」(はるなさん)

「子供の家」における「異年齢保育」や「自由時間」は、まさしくこの考えたと合致した施策だといえる。

「その人がどう生きたいのか──。そのことに気づけるのが、モンテッソーリのメソッドの大きな意義です。ものすごく大きなミッションかもしれませんが、この教育メソッドにより、社会がもっと変わればいいなと私自身思っていますし、民間企業の研修などでも1つのプログラムとして使われればうれしく感じます」(はるなさん)


はるなさんはモンテッソーリ教員になる前に外資系企業に勤めていた経験から、外資系企業と日本的企業にギャップを感じる点もあったという

最後にはるなさんはこう付け加える。

「仕事の内容も自分で決められない、毎日同じ人としか話さない……のでは、きっと楽しくないでしょう。でも楽しいものをつくっていけた経験が1つでもあれば、その先、それがその人のモデルケースになり、次にまた新しいことにチャレンジするイメージがふくらんでいくはず。ただ言葉だけで“新しいことをやろうよ”といっても、人は動いてはくれない。その行動をうながすにはやはり“環境”が大事なんだと思います」(はるなさん)

世界中のモンテッソーリ教員が共有する「12の心得」

はるなさんの夫で、モンテッソーリ教員である堀田海也(かいや)さんは「子供の家」で子どもと接するとき、次のような存在であることを心がけると話してくれた。


モンテッソーリ教員の堀田海也さん

「子どもは、山や海のような“自然”にも似た存在だと思っています。海や山はとても綺麗だし、癒やされる。ですがその反面、吹雪や津波は人にとって脅威です。子どももかわいいし、愛おしい存在だけれど、泣きだしたりぐずったりすれば手がつけられないことがありますよね。そのときに大人がどうするか、です。

大人は、自分の思うようにいかない子どもに対して、注意したり叱ったりと、何かしらの措置を講じようとしますが、それは得てしてうまくいかない。自然の恩恵を受けていると自覚しなければいけないのと同様、大人が前面に出るようなことはせず、子どもに対しても敬意を払わなければいけないと考えています」(海也さん)

「子ども」の部分を「社員」に、「大人」の部分を「上司」「マネージャー」等に置き換えても通じる、示唆に富んだ言葉だ。

モンテッソーリ教員の間には、マリア・モンテッソーリが遺した「実践上の12の心得」が存在する。企業でいえば「行動指針」にあたるものであり、以下がそれである。「作業」は「仕事」に置き換えてもよいだろう。


モンテッソーリ教員の「12の心得」

無限の可能性を持った子どもと同じく、企業における若手・中堅社員もまた、これからの新しい社会を担う可能性を秘めた存在である。彼らを「挑戦」へと誘うとき、企業のルールや職場環境を整備する立場にある「介助者」がどうあるべきなのか──。モンテッソーリ教育から学ぶべき点は多いはずだ。

モンテッソーリ教育に学ぶ、挑戦する心の育み方──原宿子供の家&すみれが丘子供の家(前編)


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