Discussions
あしたラボのイベントとその様子をご紹介します。

【イベントレポート】大きな学びをもたらす「挑戦」をエンパワーする方法とは?

2018年07月26日



【イベントレポート】大きな学びをもたらす「挑戦」をエンパワーする方法とは? | あしたのコミュニティーラボ
2018年6月14日、JR田町駅から徒歩圏内にある「SHIBAURA HOUSE」において、あしたのコミュニティーラボのイベントが開催されました。イベントタイトルは「学びを生み出す“挑戦”をエンパワーする方法とは?」。職場、学校、地域などのコミュニティーにおいて、誰もが新しいことに挑戦しやすくなり、かつ、学びに対する意欲を燃やしてもらうには、なにが必要なのでしょうか。新規事業、サードプレイス、産学連携、就学前教育など複数の観点から、立場の異なる実践者とともに考えていきました。当日の模様をお伝えします。

新規事業は1人のイノベーターが成し遂げるものではない

何か新しいことにチャレンジする。その挑戦のために、新しいことを学び続ける──。それらは決して、人間1人ひとりのなかから自然とその原動力が湧き出るわけではなく、環境づくりや周囲のサポートによって成されるものです。

「学びを生み出す“挑戦”をエンパワーする方法とは?」と題した本イベントは、そうした環境や介助者のあり方について、来場者と一緒に考えていく場となりました。

ファシリテーターは、立教大学経営学部 助教の田中聡さん。田中さんは「このイベント開催にあたっての話題提供」として、「挑戦×学び」から創出される新規事業について述べました。

立教大学経営学部助教の田中聡さん
立教大学経営学部助教の田中聡さん。インテリジェンス(現・パーソルキャリア)、パーソル総合研究所を経て、2018年から現職。「企業における人と組織の学び・成長」を専門とし、新規事業を創る人と組織に関する研究にも注力している

「ある1人のイノベーターによって、ゼロから革新的なアイデアが生み出されること──多くの人が新規事業に対してこのようなイメージを持っているのではないでしょうか。しかし、ここには大きな誤解があるんです。新規事業とは、ある特定の1人が生み出してくれるわけではなく、様々なステークホルダーを巻き込んで行われる“組織的なプロセス”。また、全くのゼロベースからではなく、“既存事業”のノウハウ・資源を起点にして生まれます。さらに、アイデアの革新性・新規性ではなく、“経済成果を生み出す活動”こそが新規事業の本質です」(田中さん)

「だからこそ、企業は“新規事業は君に託した!”といって担当者任せにするのではなく、“担当者を支える人”や“新規事業を育む組織”についても本気で考えなければなりません。誰かに新規事業を担当させるのならば、担当者が陥りがちな失敗経験や、そうした経験を通じて成長するプロセスを周囲が理解し、支援することが肝要です」と、田中さんは話します。

学習プロセス
「この4つの段階において、それぞれ適切な支援をすることが、新規事業を生み出す環境づくりにおいて重要だ」と田中さんは語る

「新規事業創出における“学び”とは、仕事に対するものの見方や視座が変わることです。その起点は必ずしもハッピーな経験ではなく、多くの場合、目を背けたくなるような痛みを伴うような経験からはじまります。いま紹介した4つの学習プロセスは、一般的に長期の期間をかけてシフトしていくものとされていますが、“単年で新規事業を生み出せ”といった事業側のニーズとはどうしても時間的なズレが生じてしまう。新規事業の学びには相応の時間がかかるものだということを理解し、育成の観点から新規事業部門の着任期間を見直すことも必要です。さらに、様々な外的要因の影響を受ける新規事業の業績だけで評価するのではなく、事業を創る過程で経験した学びも評価に含める人材マネジメントなども必要になってくるでしょう」(田中さん)

子どもと接していても、あくまで人対人である

田中さんのお話のあと、ゲスト3名による自己紹介、活動紹介とトークセッションが繰りひろげられました。

1人目は「モンテッソーリ原宿子供の家」「モンテッソーリすみれが丘子供の家」のモンテッソーリ教師、堀田はるなさんです。

モンテッソーリ教師の堀田はるなさん
モンテッソーリ教師の堀田はるなさん。民間企業でマーケティング業務を経験した後、教育の道へ転身。『子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド』の著者でもある

イタリア初の女性医師、マリア・モンテッソーリが子どもの発達心理学や生態学にもとづいて開発した教育メソッドであるモンテッソーリ教育について、堀田さんから解説されるとともに、教具を用いた自由活動の時間、異年齢縦割りクラスなど、「原宿子供の家」と「すみれが丘子供の家」に通う子どもたちの日常的な「学び」の風景が写真とともに紹介されました(堀田さんの活動に関する詳細はこちらをご覧ください)。

「私たちの園では、子どものやりたいことを自分で決めてもらい、大人は子どもたちの目が輝く環境の整備に注力します。教師が手助けするのは必要最低限のみ。呼ばれなければ、子どものもとへは行きません。それはモンテッソーリ・メソッドの基本事項でもあります」(堀田さん)


堀田さんが語る“子どもたちの目が輝く環境のつくり方”のポイント

トークセッションでは、ファシリテーター・田中さんが堀田さんに次のように質問をぶつけます。「堀田さんは会社勤めのご経験もありますが、モンテッソーリ教育を大人の学びに生かすうえで、何かヒントになることはありますか?」。

この質問に、ふだんから「あまり子どもを相手にしているとは思っておらず、基本的には子どもと接していても“人対人”だと考えている」と堀田さん。さらに次のように続けます。

「“この人(園児)はいま何をしているんだろう”、“何を楽しいと感じているんだろう”と興味を持って観察していると、自分に持っていないものを持っていたりしますし、リスペクトできる部分もたくさん発見できます。これは職場での人間関係にも置き換えられます。チームメンバーの特性がどこにあって、何が得意なのかを見つけ──得意じゃないことを伸ばすのは難しいですから──それを横展開していく意識を持つことが大事なのではないでしょうか」(堀田さん)


モンテッソーリ教育は、子どもだけではく、大人においても適応可能だと堀田さんは語る

目指しているのは、“ハンバーグのパン粉”のようなつなぎ役

ゲスト2人目は、株式会社ツクルバ シェアードワークプレイス事業部の吉田めぐみさん。コワーキングスペース「co-ba shibuya」でコミュニティマネージャーを務めています。

株式会社ツクルバの吉田めぐみさん
株式会社ツクルバの吉田めぐみさん。コワーキングスペースco-ba shibuyaのコミュニティマネージャーを務める吉田さんは、海外での放浪生活のなかで「人と人との関係性」に興味をもち、2016年ツクルバに入社した

吉田さんは、自らの「コミュニティマネージャー」の仕事について「私が目指しているのは、ハンバーグのパン粉のような役割」だと述べ、次のように説明します。

「肉の種類や具材、調味料を変えることでハンバーグの味は何種類にも変えられますよね。そんななか“パン粉”は、なくてもなんとか食べられそう……。でもパン粉がないと味気ないし、具材もつながらず、ぱさぱさしてしまいます。co-ba shibuyaのコミュニティマネージャーの仕事は、集めてきた具材をつなぎ合わせ、とことんこねて、できあがったハンバーグのファンづくりをする──そんな仲間集めから、出会いの場の提供やきっかけづくり、チャレンジを後押しするしかけ、ブランディングまでを行います」(吉田さん)

トークセッションでは、先の堀田さんの回答を受け、「職場でも活用できそうなco-baの場づくり・環境づくり・関係づくり」について、吉田さんにも質問が及びました。

「コワーキングという、いろいろな人が集まる場において“ちょっとこの人に声をかけてみたいな”と感じやすくなるような、雑談のしやすい雰囲気・関係性をいかにつくるか。それを常に考えていますね。そのために毎月交流会を開いたり、新規メンバーが自分の活動や成果を自己紹介・発表できる場をco-ba内に設けたり……。仕事以外のことでもつなげる場になること意識しています。もちろん、私たちコミュニティマネージャー自身が、何かしら他者との関係をつくりたいメンバーさんから相談を受けやすいように、話しかけられやすい雰囲気を持つことも大事だと思います」(吉田さん)

落語家さんと考える心をつかむ話し方
落語家のさまざまなスキルをビジネスに生かすことをうながす「落語家さんと考える心をつかむ話し方」など、co-baで催される企画についても紹介された

産学連携の成果は大人の成長、大人の学び

最後のゲストは、香川大学創造工学部創造工学科 准教授の八重樫理人さんです。同学科にある「情報システム・セキュリティコース 八重樫研究室」は2007年7月に設立され、これまで産官学連携による教育研究に取り組み、広告表示プリンタシステムKadaPos(カダポス)や、観光ガイドブック生成・印刷システムKadaPam(カダパン)など、数々の成果を生み出しています。

香川大学創造工学部創造工学科准教授の八重樫理人さん
香川大学創造工学部創造工学科准教授の八重樫理人さん。「情報システムの評価に関する研究」「教育支援システムの開発」「観光支援システムの開発」の3つを柱に研究・開発を行っている

民間企業との共創アイデアソンもたびたび実施しており、2017年9月には「じぶん2.0〜私をアップデートする香大の新サービスを考えよう」をテーマとしたアイデアソンを開催。

そこからあぶり出された「自分を変えたいという思いはあるが、一歩踏み出すことにハードルを感じる」という学生のインサイトを元に、社会や地域と連携した学びの場と学生をつなぐサービス(「Make Me(仮称)」)を、現在検討中です。八重樫さんは「香川大学は大きな学びをもたらす大学、学生の挑戦を後押しする大学を目指す」と力強く宣言しました。

香川大学では、企業や地域を巻き込んだ新しい取り組みを今後も展開していく
八重樫さんが准教授を務める香川大学では、企業や地域を巻き込んだ新しい取り組みを今後も展開していく

田中さんはトークセッションのなかで、八重樫さんが大学で取り組む学生と企業による「産学連携」「アイデアソン」について、「取り組むなかで、企業から参加する大人の側にも何かしらの学びがあるものなのか?」と投げかけます。

「かつては企業人が“どうせ学生でしょ?”というスタンスでこうした取り組みに参加してくるケースはありました。でも確実にそういうケースは少なくなっているし、その一因として、学生と協働するなかで、大人の側に“自分も変わっている”という実感があるのだと思います。その雰囲気になると、場の効果は相乗的に高まります」(八重樫さん)

学び合いの関係性のなかに「学び」の本質はある

イベント後半のワークショップでは、モデレーター田中さんの「この場を共有しているみなさんと対話してみたいお題がある方はぜひ挙手を」という言葉に応え、9名がテーマを発表。

それぞれのテーマについて、対話したい参加者が9つのチームに分かれて、活発なディスカッションを行いました。

〈ディスカッションテーマ〉
1.意欲のない学生に意欲を持たせるには?
2.何のために学ぶのか? 学びの最終目的とは?
3.企業のなかでより良いコミュニティーや学びの場を作るには?
4.口では「やりたい!」、けど実行に移せない人の動機づけ
5.学びに積極的な人をどのように増やすか?
6.みんなで新しいことに挑戦できる場のつくり方
7.働かない中高年を育てたものは何?
8.理想の組織とは何?
9.人の主体性をうながすにはどうしたらいいのか?

テーマ「人の主体性をうながすにはどうしたらいいのか?」のチーム代表者は、その議論の内容について「人はもともと主体性をもっているはずなのに、歳を重ねるにつれ、環境などさまざまな阻害要因によって主体性を出しにくくなっているのではないか?」と話します。

ワークショップ
どのテーマも今回のイベントタイトル「大きな学びをもたらす『挑戦』をエンパワーする方法とは?」にふさわしく、ワークショップが終了しても、参加者は話し足りない様子だった

「失敗が許容されにくい社会になるなか、その環境を言い訳にせず、自分のメッセージをきちんと発信していくことが大事だと話し合いました。もちろん、すべての人がそれをできるわけではない。でもだからこそ、発信しようとする人を周囲が承認し、その人の背中を押すことと、何よりその挑戦を受け容れてあげる土壌が必要なのではないでしょうか」(チーム代表者)

この日、登壇者や参加者から共有されたさまざまなトピックから改めてわかったことは、学びや挑戦は、周囲の人間の理解や介助があってこそ深まるのだということ。田中さんはイベントの最後をこう締めくくりました。

「私の専門領域ではこんな研究があります。部下がどういうシチュエーションでチャレンジするのか、それを調べてみると、何よりも肝心だったのは直属の上司がチャレンジしていて、それに対する部下の認知がその部下自身のチャレンジの原動力になっているというものでした。ともに学び合う、そんな関係性のなかに“学び“の本質があるのではないでしょうか」。

「“学べ!“というあなたは、学んでいるのか。”挑戦しろ!“というあなたは、挑戦しているのか──。これは私の師匠である中原淳先生の言葉ですが、学びとは常に他者に開かれたものであり、人との関わり合いの中で育まれていくものだと私は思います。身近な誰かに学んで欲しい、挑戦して欲しいと本気で願うのであれば、まず自分がその”触媒“となり、学び、挑戦することが大事です。今日いろいろなヒントがあったと思いますが、ぜひ自らのコミュニティーでそのヒントをどう生かしていけるのか、考えてみてください」(田中さん)


いいね!を押して
Facebookページをフォロー

あしたラボの最新情報をお届けします。

Twitterであしたラボ(@ashita_lab)をフォローしよう!

皆さんの感想をお聞かせください!





  • facebook
  •  twitter
  • RSS

Copyright 2018 あしたのコミュニティーラボ