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地域のなかの開かれた人間関係が新たな価値を生むエコシステムとなる?──茂木崇史さんインタビュー(前編)

2018年08月29日



地域のなかの開かれた人間関係が新たな価値を生むエコシステムとなる?──茂木崇史さんインタビュー(前編) | あしたのコミュニティーラボ
大手コンサルティング会社で経験を積んだ茂木崇史さんは東日本大震災をきっかけに独立。人と人との交流から新しい価値を生み出す仕事に挑んでいる。地域課題に向き合って活動している人たちと、大都市で働くビジネスパーソンのような異なる属性の人々の出会いはどのようにデザインできるのか。そこから見えてくる新しい組織のあり方、個人のキャリア形成のしかたとは? 株式会社BOLBOP(ボルボップ) CED(Chief Ecosystem Designer)の茂木さんに聞いた。

地域で実現するキャリアアップとは──茂木崇史さんインタビュー(後編)

地域や世代を超えて“互いに学び合える場”から新しい可能性が生まれる

──茂木さんが創業されたBOLBOPはどんな仕事をしている会社ですか。

茂木 もともと東京でコンサルティング会社に10年ほど勤めていましたが、東日本大震災をきっかけに2012年1月に辞め、主に宮城県気仙沼市で復興支援、事業支援に携わりはじめました。

当初は地元の企業やNPOと、東京の支援企業とをつなぐ仕事を個人事業主に近いかたちで行っていました。当時は、家族のいる東京と行き来しながらの活動だったのですが、やはり1人では限界があります。そこで、チームとしてきちんと取り組むため2013年3月につくったのがBOLBOPです。

茂木崇史さん
株式会社BOLBOP代表取締役社長CEDの茂木崇史さん

現在は東京をメインとした都心部でのコンサルティングなどの仕事を続けつつ、気仙沼と弘前に拠点を持っています。気仙沼はUターンしたメンバーが活動を継続している関連会社で、弘前は直営の「コ・ラーニングスペース」。1つの組織体として大きくなるより、それぞれが自律しながら有機的につながっていく組織づくりをイメージしています。

──「HLS(Heart Lighting Station)弘前」はコ・ラーニングスペースということですが、何を意図してどんな活動をしているのですか。

茂木 気仙沼で活動していたとき、僕らが関わるなかでいちばん価値を出せるのは、地域や世代を超えて互いに学び合える場をつくることだと感じていました。

地元で活動している人たちと、他の地域で活動をしている人たちが混じり合い、学び合えれば、そこから化学反応が起きて面白いことが起きるのではないか。

いろんな人たちが交流しながら“あの人がやってるなら自分も”と気持ちが奮い立つ。そんな願いを込めて「心に火が灯る駅」というネーミングにしました。

HLS弘前の外観
HLS弘前の外観(提供:株式会社BOLBOP)

弘前はたまたま縁のあった地域ですが、2017年4月のオープン以来、80回を越すイベントを実施し、延べ3,000人が集まる場になっています。

──ビジネスとしては貸しスペースの利用料で回しているのですか。

茂木 そうですね。ただし単体ではお金になりにくい。ここを起点に派生したプロジェクトによって結果的にビジネスになれば、と考えています。ふだんはなかなか出会えない人たちが交わることで新しい可能性が生まれる。

創業してから5年間、紆余曲折もありましたが、本当にやりたいと思えることはそれだな、と辿り着いたところです。

これまでは都心部のコンサル事業でベースを維持してきましたが、HLSのような場所から生まれた地域プロジェクトのなかでも仕事が回り、それがいろんな地域にあることで横につながっていく。そんなことを模索しながら取り組んでいます。

人生のオーナーシップを元の場所に戻すために

──6年前、なぜ会社を辞めてまで東北の復興に関わろうと思ったのですか。

茂木 震災のとき、子どもが1歳になったばかりでした。それもあって、原発事故から大変な衝撃を受けたんです。大きなものに依存するシステムは結局どこかにリスクが集中し皺寄せがいく。そういう社会構造が見えてきたときに、この延長線上の未来に果たして子どもの幸福はあるのか、ともやもや考えはじめたんです。

子どもがいなかったら、そんなこと思いもしなかったでしょう。大きなものに依存する中央集権的な構造から自由になって、各自が小さく自律的に分散しつつも互いにつながって生きていけないだろうか。

そんな世界観やイメージを被災地に身を置きながら考えてみたい、というのが独立するときの心の動きだったかもしれません。

──被災地でどんな手応えを感じましたか。

茂木 どうしても東京にいると地方のことは見えないし知らないし、どこかで東京のほうが先進的だと思っちゃったりするじゃないですか。

でも地方では相対的に所得が低いといっても東京よりもおいしい食べものが安く手に入るし、ちゃんと豊かに生活している姿が見えてきて、何が本当の幸せなんだろう、と思ったんです。


「震災のような過酷な状況でも、誇りを持って立ち上がろうとする人たちの人間としての強さに接して、自分のほうが逆に勇気づけられました」と茂木さん

──“Bring Ownership of Life Back to its Original Place”(人生のオーナーシップを元の場所に戻す)の頭文字を取った社名に、先ほどおっしゃったような世界観やイメージが表れているのですね。

茂木 そうですね。初期の頃から手がけている事業が、東京の企業を対象にした被災地での1泊2日の合宿研修。東京の企業人は被災地のリーダーの力強いエネルギーや、組織に縛られないオープンマインドから刺激を受け、地域の人たちは東京の企業人のビジネス・スキルやセンスに触れる、といった学び合いです。自律分散型の仕事の取り組み方や組織づくりへの第一歩でした。

信頼に支えられた、人間関係を外に開くエコシステム

──茂木さんの名刺には、代表取締役CED(Chief Ecosystem Designer)とあります。エコシステムデザイナーとは?

茂木 2017年くらいから使いはじめた造語です(笑)。お金を起点に物事が交換され、自由でドライな都市に対して、地方は何事もすべて人間関係で成立しているところがあります。

それは濃密な信頼に支えられた強さである一方、狭い人間関係のなかで閉じていると、特に若い人たちは息苦しさや閉塞感を抱き、いったん都市へ出たら帰りたくない要因になる。

もっと開かれた人間関係のネットワークをつくれると、地方のよさと都市のよさがうまくつながるのではないか。閉じたコミュニティのなかに僕らが入ることで何かしら影響を与え、輪が広がり、おもしろい出来事が生まれる。そんなエコシステムをデザインする人、という意味ですね。


株式会社BOLBOP5周年合宿の様子(提供:株式会社BOLBOP)

──「都市と地方」という枠組みにとどまらず、自律的な意思を持った各個人の分散的な集合体として日本のあらゆる組織が生まれ変わると、もっと風通しのよい社会になるだろう、というのが茂木さんの考えていることですか。

茂木 まさにそうで、東京での組織コンサルの仕事も、地方での地域活性の仕事も、本質的にはあまり変わらないと思っています。人の集団にどんな刺激を与えれば新しい物事が生まれるか、同じ概念で考えたい。東京での組織コンサルのノウハウや感覚を大事にしながら地方でも仕事をしているし、その逆もあります。

ただ地方は圧倒的に人材不足で、特に若い人が足りません。リーダーは限られていて、その右腕になるメンバーの絶対数も少ない。限られた人たちにプロジェクトが集中してバーンアウトしてしまう事例も多いです。

そういう意味でも、東京の人材とどうつなげるか、というのが重要なテーマになります。いきなり退職して移住はハードルが高いので、2枚目の名刺だったりプロジェクト単位で関わったり、コミットする人をどう増やしていけるか。それが課題ですね。

後編では個人のキャリア形成の観点から、東京の企業人、地域で活動する人双方にとって、地域課題と関わることの意義について茂木さんに聞いてみたい。

地域で実現するキャリアアップとは──茂木崇史さんインタビュー(後編)

茂木崇史(もてぎ・たかひと)

株式会社BOLBOP代表取締役社長CED(Chief Ecosystem Designer)
東京大学経済学部卒業。2002年よりマッキンゼーアンドカンパニーにて大企業向けの経営戦略立案業務に携わったあと、2004年より株式会社リンクアンドモチベーションにて、組織人事コンサルティングに従事。2010年からは同社ブランドマネジメント事業部執行役を務める。その後、東日本大震災をきっかけに独立し、人を起点にした地域活性事業を継続的に行うべく、2013年に株式会社BOLBOPを設立。代表取締役CEDを務めている。


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