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地域で実現するキャリアアップとは──茂木崇史さんインタビュー(後編)

2018年08月29日



地域で実現するキャリアアップとは──茂木崇史さんインタビュー(後編) | あしたのコミュニティーラボ
大手コンサルティングファームで経験を積んだ茂木崇史さんは東日本大震災をきっかけに独立。人と人との交流から新しい価値を生み出す仕事に挑んでいる。後編では、地方で活動することがどのように個人のキャリアアップにつながるのか、またどうしたら持続的に地域課題に向き合う一歩を踏み出すことができるのか。茂木さん自身の実践内容からヒントをうかがった。(TOP画像提供:株式会社BOLBOP)

地域のなかの開かれた人間関係が新たな価値を生むエコシステムとなる?──茂木崇史さんインタビュー(前編)

課題山積の地方は自己成長の機会の宝庫

──信頼に支えられて濃密だけれど狭く閉じられた地方のコミュニティに都市の人材が入っていくことで、もっと開かれた人間関係のネットワークができあがり、今までになかったおもしろい出来事が生まれる。地方と東京が掛け合わさって価値を生むエコシステムをデザインしたい、というのが前編のお話でした。これは個人の観点からすると、地方の人にとっても、都市の人にとっても、今まであまり想定していなかった働き方であり、キャリアの見直しに結びつきますね。

茂木 自分にはもっといろんな可能性があるのではないか。本当はこんな生き方をしてみたかったのではないか。そんなことに気づくきっかけになればいいなと思っています。

東日本大震災の被災地で活躍しているリーダーの多くも特別な人ではなく、普通に地域で働いていた人たちです。彼らは、たまたま震災という大きな出来事があったなかで、自分の生き方についていろいろなことに気づきました。

茂木崇史さん
株式会社BOLBOP代表取締役社長CEDの茂木崇史さん

都市の人にとってみれば、地方に帰って働くというと以前はキャリアアップではなくキャリアの終着点のようなイメージが強かったかもしれないのですが、今は決してそんなことはありません。

大きな組織であればあるほど、ゼロから何かを立ち上げるチャレンジの機会は昔に比べて少なくなりました。ところが地方へ行けば課題山積ですからチャレンジの機会に事欠かない。

ときには価値観の違いを話し合いで乗り越えていかなければなりません。若いうちに地方で苦労し揉まれることが武者修行になるし、ビジネスマンとしての地力を上げるよい経験にもなると思うのです。

るインターンシップの様子
愛知県瀬戸市で行われたBOLBOPが主催するインターンシップの様子(提供:株式会社BOLBOP)

活躍するために重要なのは地元に外部との接点を持つこと

──地方でも潜在的にチャレンジしたいと思っている人はいるのでしょうが、そういうことを表立って言うと出る杭は打たれるというか……。

茂木 それもあるので、ニュートラルな立場から人と人とをつなぐ役割が必要なんです。ただし1人の人格で地域の人間関係をつなごうとすると無理が出ます。八方美人になって「お前どっち派なんだ?」とか言われて引き裂かれていくみたいな(笑)。

だから2人以上のチームで関わることが大切だったりします。それぞれに人脈を分担できますから。同時に、コ・ラーニングスペースの「HLS (Heart Lighting Station)弘前」を運営して思ったのは、多様な人たちがなんとなく共存できる場所の大切さです。コーディネーターだけいても場所だけあってもダメで、その2つが機能するとニュートラルな立場をとりやすいかもしれません。

──地方の人たちにとっては、どのようにすれば自分のキャリアアップにつなげながら地域課題にコミットできるでしょうか。

茂木 世代によって違うでしょうね。一定の年齢以上で、これからも地域で生きていくと決めている人にとっては、どうしても新しいリソースにアクセスしにくいので、自分から出向いていかなければいけません。

でも「HLS弘前」のような場所が地域にあれば、一緒に活動できる外からの仲間とつながりやすい。学生にとっては、早いうちに地元のことをよく知るきっかけとして、地元のなかに外部との接点があるといいですね。

HLS弘前1周年イベント
HLS弘前1周年イベントの様子(提供:株式会社BOLBOP)

地域ならではのおもしろい取り組みをしている大人はどの地域にも必ずいます。でもそれは、高校生や大学生には見えにくい。気仙沼でも震災をきっかけに地元に戻ってきて、「こんな人がいたんだ」と知り、地元のよさにはじめて気づいた若者がいました。

高校生、大学生のうちに地域で活動している人たちと知り合っておけば、20代で外に出て行っても、人の縁をきっかけに30代、40代で地元へ帰れる。そんな流れができると戻って来やすくなるのではないでしょうか。

茂木崇史さん
茂木さんは「外部とのマッチング機能を地元に備えることがポイント」と話す

自分がやりたいことに向き合うためのカギは「楽しさ」

──東京で働いていて、自分の故郷や、興味を抱いた地域になんらかの方法で関わりたいけれど、仕事は忙しいし、二枚目の名刺といわれても大変……とためらっている人が、はじめの一歩を踏み出すにはどうしたらよいですか。

茂木 カギになるのは「楽しいかどうか」ではないでしょうか。自分の経験でいうと、会社を辞めて個人的に気仙沼で復興支援に携わっていたときは、ちょっと肩に力が入った切迫感で活動していたような気がします。

もちろんそれはそれでエネルギーが出るし、いろんな人から共感されることもあるんですが、なんていうのかな、ちょっと重いエネルギーというか……息が詰まるんですよ。

茂木崇史さん
「やらなければ、という意識が強すぎると、だんだんつらくなるし、苦しくなる」と茂木さん

そうではなく、「楽しいからやっている」活動をどう広げていくか、という視点に切り替えなければ、と特にここ3年ほど、すごく意識しています。

被災地のため、社会のため、というと聞こえはよいです。でも、そこに引っ張られすぎると、世のなかという大きなシステムから「こうすべし」と言われていることをやっているだけで、自分の意思で選んで生きていることにはなりません。結果的に押しつけがましい活動になってしまいます。

本当に自分がやりたいことに向き合うのはそんなに簡単なことではないし、批判もされるでしょうが、それでも続けられるのは本質的には「楽しいから」以外に理由はないと思います。

──茂木さんは今後どうやって、やりたいことを楽しく広げていきますか。

茂木 BOLBOPという組織が人の流れを生み出す触媒の1つになれればいいな、と思っています。起点となる人が会社の枠にこだわらず仲間を増やしていく。

今は東京、気仙沼、弘前ですが、長崎や佐渡をはじめ、全国各地に仲間になりうる人たちはいるので、それぞれの拠点が自律的に活動しながら連携して人の流れができたらいいな、と。

茂木崇史さん
「BOLBOPから人の流れを生み出すために、地域を超えて人をつなげるチームを広げていきたい」と展望を語る

一歩踏み出して人生が広がるきっかけは、やはり人です。信頼できる仲間のネットワークを全国に巡らせ、世界中に広がる起点にしたいですね。

地域のなかの開かれた人間関係が新たな価値を生むエコシステムとなる?──茂木崇史さんインタビュー(前編)

茂木崇史(もてぎ・たかひと)

株式会社BOLBOP代表取締役社長CED(Chief Ecosystem Designer)
東京大学経済学部卒業。2002年よりマッキンゼーアンドカンパニーにて大企業向けの経営戦略立案業務に携わったあと、2004年より株式会社リンクアンドモチベーションにて、組織人事コンサルティングに従事。2010年からは同社ブランドマネジメント事業部執行役を務める。その後、東日本大震災をきっかけに独立し、人を起点にした地域活性事業を継続的に行うべく、2013年に株式会社BOLBOPを設立。代表取締役CEDを務めている。


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