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【実践事例編】健康経営のリーディングカンパニーと呼ばれる理由 ──健康が生産性を向上させる!?「健康経営」最前線(前編)

2018年10月31日



【実践事例編】健康経営のリーディングカンパニーと呼ばれる理由 ──健康が生産性を向上させる!?「健康経営」最前線(前編) | あしたのコミュニティーラボ
健康が生産性を向上させる!?「健康経営」最前線──。【インタビュー編】では健康経営の取り組みを講じるうえで持つべき、基本的な視座について考えた。今回、前後編でお送りする【実践事例編】では、2013年12月に「フジクラグループ健康経営宣言」を発表し、社内の健康推進体制を構築してきた株式会社フジクラによる取り組みと、健康経営にまつわるサービスの提供者として「オフィスおかん」を展開する株式会社おかんの取り組み、2つの実践事例を追いかけた。

【実践事例編】従業員の「食」に寄与するサービスを提供する──健康が生産性を向上させる!?「健康経営」最前線(後編)

最前線に立つ社員による経営計画策定から始まった

江東区木場(東京)に本社を置く株式会社フジクラは、1885年に創業した老舗・非鉄金属メーカーである。そんなフジクラは「健康経営」のリーディングカンパニーとしても知られ、経済産業省の「健康経営銘柄2018」にも選定されている。

同社が健康経営に取り組むきっかけは、2009〜2010年頃にまでさかのぼる。未来を見据えた中期経営計画を策定するにあたり、社長(当時)から「中堅・若手社員が中心になって、次の事業計画の基礎答申を考えよ」とのお達しが下ったのだ。技術部門・営業部門を含めた各部門から15〜16名のメンバーが選抜。その取り組みは「未来プロジェクト」として進められていくことになる。

プロジェクトのメンバーで、現在は人事部 健康経営推進室で副室長を務める浅野健一郎さんは、当時のことを次のように振り返る。

「未来プロジェクトを立ち上げたとき、当時の社長は『これは第3の創業である』と私たちに説きました。すなわち電力・通信に続く、新しい柱を作っていくのだ、と」

フジクラは2005年に創業120周年を迎えていた。最初の60年間の主力事業は電力ケーブル。次の60年間は光通信ケーブル。「ではこれからの60年間、フジクラは何で生きていくのか」──。浅野さんたちが出した答えは「何をするにしても、我々従業員が、何ごとにもチャレンジできるような“元気さ”を持たなければいけない」というものだった。

後に未来プロジェクトは「フジクラ元気プロジェクト」へと発展。2011年にはコーポレート企画室内に「ヘルスケア・ソリューショングループ」(後に人事・総務部内「健康経営推進室」が新設)が立ち上がり、2014年1月1日には「フジクラグループ健康経営宣言」を発表した。

データ分析から見えてきた健康経営の指針

2014年に発表された健康経営宣言は次のような内容である。

フジクラグループ健康経営宣言
フジクラグループは、社員の健康を重要な経営資源の一つであると捉え個人の自発的な健康活動に対する積極的な支援と、組織的な健康活動の推進で、「お客様からは感謝され、社会から高く評価され、社員は活き活きと仕事をしている」企業グループを目指します。

現在まで進められてきた具体的な取り組みは、次のようなものだ。

まずは、推進体制の整備。フジクラでは「健康経営」に関する施策の開発・推進を専門的に取り扱う「健康経営推進室」が置かれており、同室が活動を主導している。毎月には「健康推進連絡協議会」が開かれ、健康保険組合や産業保険スタッフ等を交えた全体的な議論が交わされる。さらには、職場代表者との意見交換・情報共有のため「健康推進サポーター会議」も定期開催されているという。

健康経営における会社健康推進体制(提供:フジクラ)
健康経営における会社健康推進体制(提供:フジクラ)

従業員が運動機能を向上させる、各種取り組みも展開させている。具体的には、希望する従業員に測定機器が配布され、日常的に体組成を測定できる。自社開発の専用サイトからは、従業員1人ひとりが体重・歩数・体脂肪・筋肉量・骨量等の体組成測定値の変化を日々確認できるよう整備されている。

「これは、1つの新規事業として始まったプロジェクトです。事業を設計するうえで、従業員の間でどんなニーズがあるのか、それを知るためマーケティング調査が必要でした。何しろ『従業員を元気に』というお題目しかなく、具体的に何が解決策になり得るのか、インサイトがまったくなく、暗中模索の状態……。初めの頃は『大声でシャウトしてストレス発散できる部屋をオフィス内に作ろうか』なんて考えていたくらいでしたから(笑)、定期健康診断の結果に加え、日常的な従業員の健康データを採ることで、具体的な問題が何なのか、おのずと見えてきました」

データから何が見えてきたのか。浅野さんは続ける。

浅野さん
株式会社フジクラ健康経営推進室で副室長を務める浅野健一郎さん

「従業員のほとんどは“健康”なのですから、健康・不健康で簡単に線引きできるものではない。しかも健康から不健康への状態移行はグラデーションに変化します。そこで、従業員の健康データから、リスク度ごとに階層分けし、それぞれの階層の緊急度・重篤度ごとにプログラムを展開しました。疾病リスクの高い“一部の人”だけに対策を講じるのではなく、あくまで従業員全員を元気にすることが目的でした」

健康経営のリスク階層とそれに伴う健康支援策
健康経営のリスク階層とそれに伴う健康支援策(提供:フジクラ)

測定可能な健康データを洗い出すことで、フジクラでは「健康増進・疾病予防プログラム」を実施することとなった。それが現在企画・運営しているスポーツ推進プログラム、自転車通勤プログラム、食事改善プログラム、さらにはチーム対抗戦の歩数イベント等々だ。

フジクラ本社にある「FHAB」
フジクラ本社にある「FHAB」では、健康に関する情報を入手できたり、軽い運動ができたりする

職場環境も整備した。オフィスには昇降式デスクが導入され、「座ってばかり」にならないよう工夫が施されている。本社には健康づくりとリラクゼーションが一体となった「FHAB(ファブ)」(Fujikura Health Activity Base)なるスペースも設置された。スペース内には音圧計(騒音計)と人流センサーが設置され、利用者の人数・利用時間も測定されている。「その人がどのくらい仕事に集中できているかは今の科学では簡単に測定できるものではないですが、利用率は1つのKPIとして測定できる」と浅野さん。FHABは「体を動かしながら思考を切り換える場」「アイデア交換できるコミュニケーションスペース」としても従業員に活用されているという。

従業員に「健康」を意識させない

「実のところ、私たちはその人をいかに健康にさせるか、との視点で施策を考えていません。あくまでゴールは、従業員がいかに活き活きと仕事ができるか──そのための環境を会社のなかにつくるというフィルターで考えています」

それが、2011年以来、健康経営に注力してきた経験から浅野さんが導き出した答えだった。ではグループを横断して取り組む大規模な取り組みを、どのように社内に浸透させてきたのか。浅野さんはそのポイントを「従業員に意識させないこと」だと提言した。

浅野さん
健康経営の肝は「健康を意識させないこと」と語る浅野さん

「健康増進や疾病予防って言葉は、あまり楽しいイメージがないじゃないですか。私たちがあまりにも『健康、健康』と言い続けたら、『大きなお世話』だと思われてしまう。だからこそ強制参加には絶対にしない。たとえ絶対的な『健康的で理想的な生活』というものがこの世の中に存在したとしても、従業員の健康嗜好にも多様性があってしかるべきです。従業員に“健康を意識させない”という観点で、すべてのプログラムを設計しています」

多くの企業はすでに、労働者の安全と衛生についての基準を定めた「労働安全衛生法」の枠組みのなかで、健康にまつわるさまざまな施策に取り組んでいる。そこにプラスワンの施策として投じなければならない健康経営に取り組むには「なぜそれをやるのか、という目的を真剣に考える必要がある」と浅野さん。

「重要なのは、ゴールを設計することです。そしてゴールは計測可能であることがベター。それさえ守っていけば、健康経営のPDCAは上手にまわっていくはずです。さらにもう1点、付け加えるとするならば、健康経営を主導する私たちのような立場の人間が真剣でなければならない。『これをやり遂げる』という覚悟を持つことが、実に大きなポイントになると考えています」

後編では、健康経営にまつわるサービスの提供者として「オフィスおかん」を展開する株式会社おかんの取り組みに迫ってみた。

【実践事例編】従業員の「食」に寄与するサービスを提供する──健康が生産性を向上させる!?「健康経営」最前線(後編)へ続く


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