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【実践事例編】従業員の「食」に寄与するサービスを提供する ──健康が生産性を向上させる!?「健康経営」最前線(後編)

2018年10月31日



【実践事例編】従業員の「食」に寄与するサービスを提供する ──健康が生産性を向上させる!?「健康経営」最前線(後編) | あしたのコミュニティーラボ
前編では、健康経営のリーディングカンパニーである株式会社フジクラの取り組みから、企業が主体的に制度設計をするうえでの勘所に迫った。他方で、この「健康経営」の潮流には、多くのサービス提供者も熱いまなざしを送っている。後編では、従業員の健康促進・増進のための施策に寄与できる「サービスのあり方」について、株式会社おかんの取り組みから考えていきたい

【実践事例編】健康経営のリーディングカンパニーと呼ばれる理由──健康が生産性を向上させる!?「健康経営」最前線(前編)

より多くに影響を与えられる仕組みをつくりたい

「オフィスおかん」は、法人向けの惣菜定期宅配サービスである。食にまつわる新たな福利厚生として、現在では1,200社以上が導入しているという。

管理栄養士の監修のもと作られる惣菜はオフィス内に設置された専用冷蔵庫と専用ボックスのなかで管理され、サービスのユーザーとなる従業員は料金箱のなかにお金を投入し、惣菜を購入する。惣菜の種類は毎月約20種類。1品100円程度で購入でき、組み合わせも自由だ。ワンコインで手軽にランチが楽しめ、毎月新しいラインナップが加わるため、毎日利用していても飽きがこない。

オフィスおかん
惣菜の入った冷蔵庫と容器がセットになって貸し出される「オフィスおかん」のサービス

サービスがローンチして以来、徐々に評判は拡がった。最近は「健康経営」的な視点、あるいは「ホワイト500」(健康経営優良法人認定制度)を取得するうえで「従業員の生産性を向上させるための施策」として導入している企業も増えているという。

同サービスを展開するのは株式会社おかん。代表取締役CEOの沢木恵太さんは中央大学商学部に在籍した当時から「社会貢献性のある会社を起業したい」と考えていた。「より多くの人たちに影響を与えられるような仕組みをつくりたい」──。そんなテーマのもと、沢木さんは大学卒業後、いくつかの企業で下積み経験を積んだ。

「最初は世界的に広がっているビジネスが何かを知りたく、フランチャイズ支援を行う会社に就職しました。さらに、これから何のビジネスを展開していくにしても、ITやWebの知識がなければならない。ゲームアプリを開発する会社でゲームプロデューサー兼事業責任者なども経験したり、その後は教育系ベンチャーにも進んだりもしています。そうした経験を積んでいくなか、改めて自分の原体験を振り返ったとき、生活インフラや社会課題にアプローチでき、かつ、自分ゴトとして困ったことが何であるかを考えていたなかで、今の会社へ行き着いたのです」

サービスのアイデアは自身が体験した健康不安から

沢木さんは2012年12月に株式会社おかんの前身となる「CHISAN」という会社を設立した。そして2014年3月から「オフィスおかん」をリリース。なぜ「食」というテーマに着目したのか。

「新卒で入った会社は上場企業でしたが、長時間労働も当たり前の生活でした。食生活で体調を崩している人が多く、私も置き菓子をたびたび利用し、そうした間食でご飯を済ませることが多くなっていた。すると、当然といえば当然ですが、体調も優れないようになり……」

沢木さん
自身の体験から「仕事と食」の重要性に気付いたという沢木さん

マクロな視点に立てば、これは切実な社会的問題だともいえる。沢木さんも「ただでさえ労働人口が減っていくことが懸念されている昨今、当時の私のような不健康な社会人が増えれば増えるほど、より問題は加速する。ならばその健康を損なう要素が何であるか考えたとき、“食”というテーマが1つの重要なピースになり得ると考えた」と続けた。

人生100年時代と言われるなか、医療費は増大。労働人口は減少する。だからこそ、従業員が1日の大半を過ごす「企業」という1つのコミュニティーのなかで、従業員の健康を促進・増進させる試みが必要であることは、健康経営の基本的な視点だ。

沢木さんは「当初から健康経営を意識していたわけではなかった」というが、同サービスが今、多くの企業で選ばれている理由として、次のような考えを示す。

「極論をすれば、企業は採用定着の問題を解決することが大命題です。では、従業員が『会社を辞める』という意思決定をするうえで何か影響するのか──。その答えを導くヒントになるのが、アメリカの臨床心理学者であるフレデリック・ハーズバーグが唱える『2要因理論』です」

2要因理論は、従業員のモチベーション向上でも語られる。従業員が自分の在籍する会社での職務について“満足”と考えるかどうかの要因は「動機付け要因」であり、“不満足”と考えるかどうかの要因は「衛生要因」であるという理論だ。

「前者の『動機付け要因』は、会社の理念、仕事のやりがい……などです。一方後者の『衛生要因』は、通常であれば『あって当たり前』だと考えられるもの。つまり心理的安全・身体的安全によって構成されます。

これを会社コミュニティーのなかで考えるとすれば、フィジカルヘルスやメンタルヘルスにあたります。もちろん企業が動機付け要因から従業員を満足させる施策も重要なのですが、衛生要因はそれがないと明確に『不満足』だと認知され、インパクトも大きい。今、健康経営がこれだけ注目される背景には、そうした考え方があるのだと分析しています」

介入の余地があり、インパクト絶大なのが「食事」だった

そのうえで同社のサービス「オフィスおかん」が健康経営の文脈のなかで、どこに位置づけられるのか。沢木さんは続ける。

「食事、運動、睡眠。もちろんいずれも重要ですが、企業が介入することで最もインパクトを与えられるのが『食事』です。労働のなかで必ず一定時間あるものですし、我々サービス提供者の側も、そこに対してどのように質を高めるアプローチを提供できるか、共に考えていける余地があります。

沢木さん
社内に設置するサービスであることで、どんなユーザーにも使ってもらいやすいという

私は決して健康経営の専門家ではありませんが、従業員の方に普段の活動とは違う特別なことをしてもらうのは、おそらく制度設計者の方にとっても難しいもの。その前提に立てば、『オフィスおかん』ではヘルシーでかつ利便性が高く、経済性も高いサービスを提供します。たとえユーザーが『健康意識があまりない』としても、気軽に日常生活に取り入れられることで“結果として”従業員に健康をもたらすサービスなっている。そこがとても重要なポイントだと考えています」

健康経営の「研究者」である武蔵大学経済学部経営学科准教授・森永雄太さん(インタビュー編参照)、本編前編にリーディングカンパニーとして登場いただいた株式会社フジクラの人事部 健康経営推進室副室長・浅野健一郎さんも、皆が異口同音に話していたのは「健康経営は単に指標を追いかけるだけでなく、なぜそれに取り組むのかを考えることが重要である」ということだった。

「サービス提供者」とまた立場は異なるが、沢木さんも同様の趣旨のことを話している。

「きっと健康経営もわかりづらいものになればなるほど、継続的に取り組んでもらうのが難しくなるでしょう。だからこそ私たちが導入企業様にお伝えしているのは、これを導入して終わりではなく『なぜ導入したのか』『どういう想いで導入したのか』をメッセージングしてほしいということなんです」

健康経営は決して、一朝一夕に達成できるものではない。長期的な視野を持ち、会社の向かう道標を従業員にいかに示すことができるのか。経営者およびプロジェクト責任者には、そんなことが問われているのかもしれない。

【実践事例編】健康経営のリーディングカンパニーと呼ばれる理由──健康が生産性を向上させる!?「健康経営」最前線(前編)


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